リーグ制覇を知る38歳の流儀 信州BWの古川孝敏が大切にする「準備」

Bリーグ初代王者の栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)でファイナルMVPに輝いてから10年。新設のBプレミアに参戦する信州ブレイブウォリアーズに加入した38歳の古川孝敏は、昨季もB1京都ハンナリーズでの3ポイントシュート成功率でキャリアハイを記録するなど衰えを感じさせない。新天地でキャプテンを任されたベテランが何よりも大切にしているのが「準備」だ。仲間も驚くほどストイックな姿勢は、選手の大半が入れ替わったチームに何をもたらすのか。優勝を知る男が語る準備の哲学と、その先に見据えるものに迫った。
文:芋川 史貴
KINGDOM パートナー
大ベテランの鬼気迫る準備
「いるだけで価値ある選手」
「経験豊富な選手で世界レベルのシューター。チームメイトへの影響力がものすごく、チームにいるだけで価値のある選手だと思う」
ジャッド・フラベル・ヘッドコーチ(HC)は、10月に39歳を迎える古川孝敏をそう評価する。

年齢は大ベテランの域に達しているが、昨季は京都ハンナリーズで39.3%の3ポイントシュート成功率を記録。Bリーグのレギュラーシーズンではキャリアハイの数字で、衰えどころか年々洗練されていく印象すら受ける。
Bリーグが発足した2016-17シーズンは、栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)の一員としてリーグ制覇に貢献。チャンピオンシップのファイナルMVPに選出された実績を持つ。その輝きは、今も鈍ることを知らない。

フラベルHCが指摘した「影響力」について、特筆すべきは「準備」に対する影響力だろう。練習前に準備運動に取り組む古川を見ていると、緊張感が伝わってくる。
「僕は何よりも準備が大切だと思っている。まだまだコート上でパフォーマンスが出せると思っているし、若い選手にも負けたくないと思っている。『試合でパフォーマンスを出すためにはどうするべきなのか』というところに対して準備をしていく」

その準備は、試合に向けた練習だけにとどまらない。
「トレーニングすることにも全部意味がある。チーム練習も準備だし、その前段階も準備。準備なくして物事は成り立たない。他の仕事にも共通すると思う」
星野京介は「こんなにストイックな人は見たことがない」と驚きを隠さず、「1個のワークアウトに対しても、それだけの準備が必要だと知った時に、『これぐらいしなければ、こんなにも長く選手としてやれない』ということが分かった」と話す。

9月5日に北佐久郡軽井沢町で開催した千葉ジェッツ(Bプレミア)とのプレシーズンゲームでは、開始早々2本連続で3ポイントシュートを沈めてチームに勢いをもたらした古川。同じBプレミアで戦う強豪の千葉ジェッツ相手にどこまで戦えるのかー。そんなブースターの不安を、期待へと変えた瞬間だった。
「準備」は「土台作り」とも言い換えられる。将来的にBプレミア制覇を目指すクラブにとって、選手やコーチ陣の大半が入れ替わった今季のチームには、優勝経験を持つベテランの姿勢は重要となる。
KINGDOM パートナー
コミュニケーションも重要視
メンターとしての役割も全う
今季のキャプテンに就任した古川は、「プレー面だけでなく、メンターとしてもチームをまとめたい」と意気込みを語る。
その言葉の通り、練習中はもちろん、試合中のベンチでも積極的にコミュニケーションを取っている姿が印象的だ。

千葉ジェッツ戦の試合後に開催されたセレモニー。その時間を使って、古川は東海林奨に対してディフェンスに関するアドバイスを送った。「良いアドバイスをもらえた」と東海林。ストイックな準備から自分自身のパフォーマンスにフォーカスを当てるだけでなく、若い選手に豊富な経験を還元する意識も含めて全方位に矢印を向ける。
そこには、「クラブが一体となって街を盛り上げて、みんなに応援してもらえるようなチームになるべく、選手としてやっていきたい」との思いがにじむ。

「これまでの経験で感じてきたこともある。しんどいタイミングも出てくると思うので、そういった時にチームが下を向かないようにしたいし、自分たちが目指している場所に立ち返れるように引っ張っていきたい」
バスケができる環境に感謝
Bブレミアの大舞台で活躍を
Bリーグ発足前はアイシン(現シーホース三河)で社員選手としてバスケットボールに取り組んでいた古川。Bプレミアへの挑戦を「非常に楽しみ」と笑顔で語る。

そして、バスケットボールができる環境があることにも感謝を口にする。
「周りの人に恵まれてここまで来れたと感じている。そういった人たちに対して感謝の気持ちは忘れたくない。自分の力だけでは何も成し遂げられなかったと思うので、そういった思いは持ってやりたい」

一方で、個人のパフォーマンスにもこだわりたいと強調する。
「年齢の部分は思う人もいると思うが、正直まだまだできると思っている。しっかりとプレーでも表現していきいし、数字も残せるようにしていきたい」
平均プレータイムも平均得点も、リーグが発足した10年前からほとんど変わらず、高いパフォーマンスを続けている古川。その秘訣は、徹底的な準備と自身を信じる気持ち、そして周囲への感謝にある。

「マスコミの方もそうだし、ファンの方々の存在があるからこそ僕らがコートに立てている。責任を持って中途半端なことをしないように全力で戦えたらなと思う」
アルバルク東京ー琉球ゴールデンキングスの一戦で9月22日に幕を開けたBプレミア。信州は9月26日、ホームのホワイトリング(長野市)で富山グラウジーズとの開幕戦を迎える。

古川孝敏はBプレミアの大舞台でどのような輝きを放つのか。
信州ブレイブウォリアーズ 公式サイト
https://www.b-warriors.net/






















