「恩返し」の道を行く奥原蓮 コートで垣間見えた“憂い”の理由

その表情は、どこか冴えなかった。10月19日、Vリーグ男子東地区開幕戦。長野ガロンズのアウトサイドヒッター（OH）奥原蓮は次々とアタックを決めて得点源となったものの、喜ぶ姿にさえかげりの色を帯びていた。「自分たちのプレーを出せずに負けた」。その悔しさを胸に迎える11月9-10日の次節こそ、「らしさ」全開で存在意義を証明する。

取材・文：原田 寛子／編集：大枝 令

エネルギーが影を潜めた開幕戦
自身の好プレーにも表情は曇り

「準備してきた開幕戦で1セットも取れずに終わってしまった。チームとしてももっとできることがあったと思うし、自分の実力不足を強く感じた」

開幕の第1節を振り返り、奥原は悔しさをにじませる。2戦とも、昨季V2覇者の北海道イエロースターズに0-3。ホームで苦杯をなめた。

それだけならまだいい。
手痛かったのは、特にGAME1の負け方だった。

本来のガロンズは、コートからエネルギーがほとばしる。選手たちの明るい声が飛び交う。それが、聞こえてこない。明らかに活力がなく、試合も18-25、15-25、17-25と完敗した。

PROFILE
奥原 蓮（おくはら れん）2001年2月19日生まれ、松本市出身。松本美須々ヶ丘高から山梨学院大へ進学。3年生の時に篠原監督から長野ガロンズにスカウトされ、在学中から入団した。身長178cmながらも最高到達点は335cm。ジャンプ力を生かした鋭角のスパイクを武器とするアウトサイドヒッター。体重72㎏。

「初日という緊張感と一人一人が気負いすぎたことで硬さが抜けず、楽しんだプレーができなかった」

奥原自身は第1日、アタック決定率64.3％（9/14）と奮戦。「肩の力が抜けていいスイングができた。ブロックも見えていて狙ったコースにいいスパイクが打てた」と振り返りはする。それでもやはり、悔しさが大きく上回っていた。

負けたのはもちろん、悔しい。
ただそれ以上に、「楽しんでプレーができなかった」ことが重くのしかかった。

「自分たちが試合でいいパフォーマンスをするためには、まず自分たちが楽しんでいないとできないと思う」

バレーボール人生の中で、常に「楽しむこと」が軸にあった。当然、勝敗にはこだわる。だが、その勝敗に繋がるのは「楽しめたか」どうかが大きく左右するという。

「バレーボールを純粋に楽しめば、そこからガロンズらしい元気のあるプレーは出てくる。その先に『勝つこと』が見えてくる」

須坂の地に根付き、愛されるための営み。そのためにまずは自分たちが楽しんでコートを熱源とし、会場全体にエネルギーを充満させることが根底にある。それは本来、何に代えても譲りたくない要素だった。

だからこそ、悔しさが募った。

地元でのプレーに幸せを感じ
長野県のバレー界にも目を向ける

松本市出身。地元の公立校・松本美須々ケ丘高でバレーに打ち込み、山梨学院大でもプレー。在学中に篠崎寛監督にスカウトされ、ガロンズに加入した。2021年、時期はコロナ禍。Vリーグも想定外の試合中止などが相次いでいた。

コンディションを整えにくい状況で合流し、攻撃力を武器にチームをけん引する一人となった奥原。その後も「ガロンズシステム」と呼ばれる攻守一体型の手法の導入をはじめ、チームが新しくスタートする際の中心メンバーとなっていった。

ただでさえ、好きなバレーを故郷で続けられること自体が無上の喜びでもあった。「地元でプレーできていることがそもそも幸せだし、応援されていることがありがたいと思う。恩返しをしたい」。バレーを楽しみ、その姿を見てもらうことで地域に活力を与えられる。

その恩返しは、長野県のバレーボール界に対しても果たしていきたい考えだ。

「ガロンズが活躍することは、長野県のバレーをもっと良くする一歩になる」

「バレーを楽しむ自分たちの姿を見てもらうことで、楽しさを伝えられる。そしてバレーをやりたい人が増えれば、長野県のバレーを盛り上げることができる」

悔しいままでは終わらせない
次節のホームで狙うは2連勝

それだけに、開幕2試合は悔しさにまみれた。やりたいプレーを全て出し切って負けたわけではない。「自分たちができるプレーを出せずに負けた」という悔しさだ。

楽しくコートで躍動し、活気を届けて勝利に至る。その根底を改めて突きつけられた開幕戦。たとえ格上であろうとも。「受け身になりすぎず、特にサーブではしっかり攻めていくことが今後は大事になる。開幕戦で戦った格上との試合をムダにはしない」と力を込める。

シーズンはまだ開幕したばかり。この先も、レベルの高いチームとの対戦は続いていく。まずは11月9-10日、再びホームゲーム。旧V2のつくばユナイテッドSun GAIAを迎える。

「次こそは2連勝して、見に来てくださった方たちに元気を与えられる試合をしたい」

そう力を込める奥原。今度はおそらく、満開の笑顔がコートに咲き誇るのだろう。

Vリーグ第2節 つくばユナイテッドSun GAIA戦 試合情報
https://garons.jp/topics/%e3%80%90%e3%83%9b%e3%83%bc%e3%83%a0%e3%82%b2%e3%83%bc%e3%83%a0%e6%83%85%e5%a0%b1%e3%80%91/
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