武器を求めて台湾へ トライデンツの一条太嘉丸が抱く野望

コートに立たなければ、選手としての価値は生まれない。SVリーグ男子の信州松本トライデンツに所属するアウトサイドヒッター(OH)一条太嘉丸は、台湾男子プロバレーボールリーグ(TPVL)の新竹可利工程師(シンチュウ・コリー・エンジニアズ)へレンタル移籍することを決めた。大卒2年目の24歳が求めたのは、出場機会と海外で得られる経験。臙脂色のユニフォームを一度脱ぎ、2026-27シーズンは新たなキャリアを積む旅に出る。

文:大枝 史

KINGDOM パートナー

出場機会と言葉の壁
2つを乗り越える挑戦

きっかけは、シンプルだった。

「昨シーズンが終わってから試合の出場機会を求めて、オフシーズン中にアジア圏内のどこかで行われているカップ戦に出たいと思ったのが始まり」

5勝39敗で最下位に沈んだ2025-26シーズン。アウトサイドヒッター(OH)一条太嘉丸の出場はわずか9セットで終わった。チームとしても個人としても、納得のいく結果ではなかった。そして新天地を台湾に求めた。

今季はビーチバレーボールにも挑戦し、石坂朋也とのペアで全日本選手権の長野県予選を制して本戦に出場。慣れない砂上で結果を残したように、新しい環境に飛び込むことを厭わない。

「バレーボール選手はバレーボールをしないと仕事ではない感覚がある。バレーボールをしたい、試合に出たい、ということが一番だった」

移籍を決めたもう一つの理由が、言葉だ。

今季のトライデンツにはミドルブロッカー(MB)デイビッド・スミス、オポジット(OP)フィリップ・ジョンら外国籍選手が加わり、新指揮官にはドイツ出身のトーマス・ラーナー監督が就任。コート内では英語が飛び交うようになった。

「松尾(敬介)さんのように日本語も英語もできる人は少ない。直接コミュニケーションを取れることは自分にとってもチームにとっても生きてくると思うし、興味があった」

通訳を介するのか、直接やり取りができるのか。その差は決して小さくない。

そして言葉が通じない日々に身を置くことで得られる経験は、日本に帰ってきた時に役に立つだろう。

自身が外国籍選手としての立場を真に理解すれば、日本に来た外国籍選手への寄り添い方を知ることができる。言葉と文化の壁を飛び越え、出場機会と新たな価値を求める。

仲間からのエールを胸に
持ち帰る武器を探す旅

一条には今季、トライデンツの一員として掲げていた目標があった。「ホームゲームを満員にする」。その場に自分が立てないことへの思いも口にする。

「僕が日本でプレーしない部分では、本当に申し訳ない。それでも新しいキャリアを積みにいくために挑戦するので、トライデンツのことも、時々は僕のことも応援してもらえたら」

同じ大卒2年目として励まし合い、支え合ってきたOP酒井秀輔は「マル(一条)はやりたいことが明確だから行動できるし、チャンスを掴んだのはマルだからこそだと思う。お互い強くなって、帰ってきたら一緒に活躍できればいい」とエールを送る。

一条の入団時から見続けてきた古田博幸コーチは「日本の中だけでやっていると分からないが、日本人は技術とディフェンス力は高いので自信として身につけてほしい」と強調。「台湾で自分の何が通用するのか、どの武器で戦っていけるのかが明確になれば、戻ってきた時に頼もしい戦力になると思う」と成長に期待を寄せる。

2025年に新設された台湾男子プロバレーボールリーグ(TPVL)は最大4人まで外国籍選手がコートに立てるレギュレーションで、高さやフィジカル面で強みを持つ選手は多くいる。その中で一条がどのように戦い、打破していくのか。

外国籍選手として高い水準を求められる立場になるが、一条は気負わない。

「今できる最大限のパフォーマンスをして、まずは向こうの文化に合ったバレーボールにフィットする。まず試合に出て、失敗してもいいから何か武器を持って帰ってこられたらと思う」

一条が求める武器とは、確かな手応えだ。

積極的に声を出してチームを鼓舞するような無形の価値での貢献ではなく、選手としての価値。自分は何ができるのか、自分とは何なのか。そう問いかけ続けた答えを探しに、海を渡る。


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SVリーグ チーム紹介ページ
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