キッズ記者が触れたトライデンツ “子どもたちの夢”を刺激するスポーツの意義

「子どもたちに夢を」――。プロスポーツが持つ存在意義の一つだ。それに対して信州スポーツキングダムは、信州松本トライデンツを舞台とした「キッズ記者体験」企画で補助線を引いた。2026年9月20日のプレシーズンマッチで、子どもたちが「記者」に変身。オポジット岸川蓮樹に質問した成果を記事にしてもらったところ、憧れのアスリートに触れたからこその刺激が綴られていた。10月24-25日の開幕節を前に子どもたちの記事を全文でお届けし、プロスポーツの存在意義を改めて掘り下げる。

文:大枝 令

「夢」の解像度を上げる取り組み
選手を取材して得られたものとは

プロスポーツの存在意義を問われると、得てして「子どもたちに夢を与える」という言葉が挙がる。間違いではなく、その通りだ。ただ、「何を通じてどのように夢を与えるのか」を問われると、その中身を細分化するのは意外と難しい。「夢」は、どこで、どのように生じるのか。

9月20日のプレシーズンマッチは、その問いに一つの解を出すための場でもあった。東京グレートベアーズを迎えた一戦で、信州スポーツキングダムは協賛を務めた。来場者には先着1,000名にコラボステッカーを配り、試合前には小川貴史GMのトークショー、会場ではデジタル版のマッチデープログラムを用意。エスコートキッズは16人。2人がセレモニアルサーブを打ち、4人が試合後の記者会見を見学した。

その中で、ひときわ手触りの違う企画があった。

キッズ記者体験だ。参加したのは4組。選手に直接インタビューし、聞いた話を記事にまとめる。「観る」「触れる」で終わらず、「問う」「選ぶ」「書く」までを自分の手でやり切り、最後は記事として世に出す。夢を受け取る側から、言葉を紡ぐ側へ。立ち位置を一歩だけ入れ替えることにより、「夢」の解像度を高める狙いだった。

取材対象となったのは、大卒2年目のオポジット岸川蓮樹。準備してきた質問をまっすぐぶつけた子がいた。岸川の答えを踏まえ、さらに掘り下げた子もいた。緊張のあまり涙を浮かべながら、それでも考えてきた質問を口にした子もいた。

3人の記事に共通する一手は
「一つだけ選ぶ」という“決断”

質問は多岐にわたった。

今季のチームの目標、練習に行きたくない日の気分の上げ方、仕事からバレーボールへの気持ちの切り替え、食事と睡眠――。スポーツ以外に経験していた習い事を聞かれ、「そろばん」と答える場面もあった。岸川は一つひとつに、言葉を探しながら丁寧に応じた。

記事の書き方として伝えた約束の柱は、一つだった。「一番心を動かされたことを、必ず一つだけ選ぶ」。選んだら文章の最初に置き、なぜそれを選んだのかを書く。後日届いた3本の原稿は、どれもその約束を守っていた。そして、選んだものは3人とも違った。

胡鈴さんが選んだのは、「人の倍やる」という答えだった。ただ、練習量の話として受け取って終わらなかった。体のケアを含めて地道に積み重ね、身長という武器を「自分にしかできないこと」へ磨いていく。そう読み解き、「身長が高いことをただの『特徴』として捉えるのではなく、『自分にしかできないこと』にして長所として伸ばそうとしていることに胸を打たれました」と書いた。ただ答えを書き写すのではなく、その奥にある意味を掘り下げた。

ナオユキさんは自ら見出しを立て、クラブの歩みを調べて補い、2,000字を超える一本に仕上げた。会社員と選手という「二つの顔」を描いた段落は、「僕は気持ちの切り替えがうまくいかないことが多いので、岸川選手の話を聞いて切り替えの重要性を感じた」と結ばれる。選手の言葉を、自分自身の課題に引き寄せた。

うずめさんが目を留めたのは、「中学校の先生に熱心に誘われてバレーボールを始めた」という答えだった。そこから「自分が打ち込める何かを見つけるのに時期が遅くても大丈夫」という一文を導き出した。一つの事実から、自分にも当てはまる教訓を引き出している。取材した結果を自分に置き換え、さらに、普遍的な価値を見い出す――。信州スポーツキングダムが記事に求めている営みそのものだ。

一番を「選ぶ」ことは、それ以外のすべてを「捨てる」ことと同義。同じ答えを聞いた3人が、それぞれ違う一つを選んだ。その小さな決断こそが記事の背骨であり、個性。人生はそうした決断を積み重ねることで深みを増し、その人だけの「らしさ」を醸成していく。

問いを立て、選び、並べる営み
掘り起こした言葉は“気づき”に

書くことから逆算すると、記事の骨格は書き始める前にほぼ決まっている。相手に寄り添って問いを立てる。答えをかみ砕き、さらに問う。集まった答えを振り返って選び、選んだ順に並べる。設計図はそれだけで、あとは語彙と並べ方。そして語彙は、日々のインプットからしか育たない。

これは決して、文章を書く人だけの話ではない。

言語は、混沌とした世界から秩序を切り出す、人間だけが持つツールだ。頭の中を言葉で整理できれば、自分が何を大切にしているのかが見えてくる。進学、就職、結婚、出産――。人生の大きな節目はすなわち、選ぶことの連続。問いを立て、選び、並べる力は、そのすべての場面で生きてくるだろう。

その意味で、選手の言葉には大きな価値がある。コートで見せるプレーの迫力や、勝利がもたらす活力と勇気はもちろん大きい。ただ、丁寧に掘り起こした言葉は、また別の「気づき」を与える。例えば岸川は個人の目標を問われて語った。

「同じポジションに同期やライバルがいるので、それに負けないように――というのが第一目標。でも出られる回数は決まっているので、出た時にどう仕事をするか、どうやってチームに貢献するかを優先している」

限られた出番に、持てるものを注ぎ込む。その姿勢は、家庭でも教室でもグラウンドでも、子どもたちが向き合う日々にそのまま重なる。

信州スポーツキングダムは2024年9月に歩みを始め、3年目に入った。長野県のスポーツシーンから生まれる珠玉の言葉たちを掘り起こし、一つでも多く届けていく。今季も、その営みを一層磨いていく。

そして10月24日、エア・ウォーターアリーナ松本。「信州松本トライデンツ」という新しい名前で臨むシーズン開幕戦が間近に迫ってきた。あの日の小さな記者たちは、どんな問いを胸に、コートを見つめるのだろうか。


キッズ記者が書いた3本の記事
届いた原文のまま全文を掲載

キッズ記者体験に参加した子どもたちの記事を掲載する。記事中の岸川選手の発言は、取材の記録をもとに子どもたちがまとめたもので、実際の言い回しとは異なる部分がある。

うずめ さん

コートでとても輝き、そして強いはずき選手を見てどうしたらそうなれるのか知りたくてインタビューをしました。

はずき選手は中学まで、水泳や剣道など個人競技をしていましたが、身長が高いこともあり中学校の先生に熱心に誘われて、バレーボールを始めました。個人競技とは違い、同じコートの中でボールを追いかけることで、チームプレーや喜びを分かち合えることが楽しいと感じ、バレーボールに打ち込みました。時には嫌になることもありますが、そんな時は自分の好きな選手、目標にしている選手を思い出して、その選手に近づくために気持ちを高めて毎日の練習を頑張っているとのことでした。

自分が打ち込める何かを見つけるのに時期が遅くても大丈夫。それを楽しんで目標を持ってできるかで輝き、そして強く一歩ずつ前進できることを知りました。私もいろいろなことに挑戦して、大好きになれる何かを探していきたいと思います。

怪我に気を付け、活躍してください。応援しています。

胡鈴 さん

9/20 (日)のプレシーズンマッチで、岸川蓮樹選手にインタビューをしました。

岸川選手は、「『他の選手にも負けないように練習する』と言っていましたが、具体的にはどのような練習をしていますか」という質問に対して「人の倍練習する」と答えていました。それは、ただ単に練習量を増やすことだけでなく、トレーニングや体のケアを地道に行いながら、自分にしかない強みである「高さ」を生かして、他の人から見た中で唯一「自分にしかできないこと」を伸ばすことにフォーカスしていることが伝わってきました。

いくつかの質問に答えてくれた中でこれを取り上げた理由は、岸川選手が自分自身を最大限活かすために、身長が高いことをただの「特徴」として捉えるのではなく、「自分にしかできないこと」にして長所として伸ばそうとしていることに胸を打たれました。

また、「日常生活で大事にしていること」という質問には、「食事や睡眠に気をつかって、次の日に疲労などが蓄積しないよう、スケジュール管理を徹底している」と答えていました。掘り下げて聞いてみると、油を摂らないようにして鶏ムネ肉や無糖の食品を選んだり、睡眠は最低でも8時間はとったりと細かな部分から意識していました。加えて、そのような生活を繰り返し続けることで、それが当たり前になり、日々の基準が高くなり、スポーツ選手として自分自身と真正面から向き合っている姿勢に、心を動かされました。

このキッズ記者体験のインタビューを通じて、岸川選手の自分の強みを理解し、それを最大限に活かすために努力を続けている姿勢を知ることができました。私も、自分だけの強みを見つけ、それを伸ばす努力を続けていきたいなと思いました。

ナオユキ

バレーボールとの出会いから今までの軌跡

新たなチーム名で2026-27シーズンへと挑む信州松本トライデンツ。2026年9月20日、信州スポーツキングダムプレゼンツ 信州松本トライデンツVS東京グレートベアーズのプレシーズンマッチが行われる日。新生トライデンツの一員、 OP 岸川蓮樹選手に話を聞いた。その中で、印象に残った回答について書こうと思う。

「チャンピオンシップ進出」を目標へ
『チームの勝利に貢献を』

今年で新卒2年目となる信州松本トライデンツの岸川蓮樹選手。

チームの目標を聞かれた岸川選手は、

「今期のチームの目標は、チャンピオンシップ進出です」

と力強く答えてくれた。

2008年、「VC長野グロース」からスタートして、2010年にチーム名を「VC長野トライデンツ」に変更。その8年後の2018年に、トップリーグV1リーグに参入。リーグ名が「SVリーグ」となってから3年、トライデンツはトップリーグで8年間戦ってきた。しかし、チャンピオンシップの座にはまだ届いていない。2025-26シーズン終了後「リブランディング」を掲げ、チーム名も変更し、新生トライデンツとして挑む今シーズン。信州松本トライデンツは、届いたことのないチャンピオンシップの座を狙い、今シーズンに臨む。

また、自身の目標については、

「同じポジションに同期の選手や力のある外国籍選手がいるので、その人たちに負けず、チームの勝利に貢献することです。」

と述べた。岸川選手のポジション「オポジット」は、岸川選手と同い年の酒井秀輔選手や、今シーズンより入団したドイツ代表のフィリップ・ジョン選手など、錚々たるメンバーが揃っている。その選手たちに負けることなく自分自身の力でチームの勝利に貢献することを岸川選手は大切にしている。

バレーとの出会いは顧問の先生から
『当時はあまり興味がなかった』

今はSVリーグのトッププレイヤーとして躍動している岸川選手だが、幼少期はサッカー・水泳・剣道・そろばんなど、様々な習い事をしていたらしい。その中で、なぜバレーボールを始めたのかという質問には、

「中学の時に顧問の先生から誘われました。最初は断ってたのですが、自分が折れて、そこで始めました」と、少し笑いながら答えた。

始めたきっかけは「熱心に誘われたから」かもしれないけど、そのうちにバレーボールの魅力、やりがい、面白さを感じられた部分もありますか?と聞かれた岸川選手は

「バレーを始める前にやっていた剣道は、団体戦もあるけど基本的には個人戦です。なので『1人でやる』という感じだったんですけど、バレーはチームスポーツなので、喜びを分かちあえことが一番楽しかったです」

と回答。そして、岸川選手は今もきっと変わらずに仲間とその気持ちを共有できているだろうと僕は思った。

日常生活も「バレーのために」
仕事にもバレーにも全力を注ぐ

そして、幼少期の岸川選手は、”よく寝る子”だったらしい。

「小さい頃は、寝ることが多かったです」

身長194cm。チームの日本人選手の中で最も高い身長は、幼少期からの睡眠で培ってきたものなのかもしれない。

また、日常生活で気をつけていることを聞かれると、

「睡眠・食事・トレーニング。この3つは大切にしています。睡眠は、理想は9時間ですが、いろいろとやることがあると足りないので、最低8時間は取るようにしています。食事は、鶏むね肉や無糖のものをよく食べ、揚げ物などは基本摂っていないです。トレーニングはキツい練習の次の日に疲労を残さないようなスケジューリングを徹底しています」

そしてどのようなトレーニングをしているのか?という問いに、

「他の競技にも共通していると思いますが、持久力が大切だと思います。みんながやっているトレーニングにプラス何か別のこと、自分が一番伸ばしたいことを伸ばせるようにトレーニングしていければいいと思う」

と答えた。試合の日のために1日1日怠ることなく、常に安定的な日常生活を心掛けている岸川選手。トップバレーボーラーの日常には、このような秘密があった。

岸川選手の仕事は、バレーボーラーだけではない。岸川選手は、午前中は株式会社ジェルモの社員として勤務し、午後は信州松本トライデンツの選手として練習に打ち込む日々。午前と午後の切り替え尋ねたところ、

「はっきりしたものはないですかね(笑)。でも、仕事が終わって練習に行くまで少し時間があるので、そういう時には応援してくれている人たちの元で働いているので、それを思いながら練習場所に向かっています」

と回答。会社員として、バレーボーラーとして、午前と午後で二つの顔を持つ岸川選手。僕は気持ちの切り替えがうまくいかないことが多いので、岸川選手の話を聞いて切り替えの重要性を感じた。

インタビューを終えて

信州松本トライデンツの一員、岸川蓮樹選手。誘われて始めたバレーボールが、後に自分がトップリーグで戦うスポーツになるとは思いもしなかっただろう。会社員としての自分とバレーボーラーとしての自分。日頃から怠ることなく取り組んでいる睡眠・食事・トレーニング。岸川選手の生活の全てが繋がり、最高のパフォーマンスとなっているのだろう。

GO! 岸川選手! GO TRIDENTS!


SVリーグ第1節 広島サンダーズ戦 試合情報
https://sm-tridents.jp/match/2026-27-sv-div1-1
https://sm-tridents.jp/match/2026-27-sv-div1-2
クラブ公式サイト
https://sm-tridents.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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