唯一無二のオポジットへ トライデンツの酒井秀輔が開く新境地

SVリーグ男子の信州松本トライデンツで大卒2年目のシーズンを迎えるオポジット(OP)酒井秀輔。出場機会が少なく、ベンチにも入れない日々を過ごした昨シーズンを「地獄だった」と振り返る。今季、トーマス・ラーナー新ヘッドコーチ(HC)の下で課題だったメンタルの安定に努める24歳。そのポテンシャルが開花しようとしている。広島サンダーズとのプレシーズンマッチでは1試合で5本のサービスエースを記録する大活躍を見せた。雌伏の時を経て、大いなる飛躍の幕開けを迎える。
文:大枝 史
KINGDOM パートナー
故郷の広島で“覚醒”
成長の実感を自信に変える
トスを高く上げ、少し待ってから助走に入る。
オポジット(OP)酒井秀輔が今シーズンから変えたサーブの打ち方だ。

「しっくりくるものが見つかって、サーブの感覚がいい」と酒井が話すように、開幕2週前の10月10、11日に行われた広島サンダーズとのプレシーズンマッチでは全セット出場した1試合目にサービスエース5本を記録。5セットのうち3セットに出場した2試合目もサービスエース2本を記録した。
松下泰己アナリストは「あんな(酒井)秀輔は見たことがない」と目を丸くする。
それもそのはず、酒井が2025-26シーズンのSVリーグで放ったサーブは全部で34本。そのうちサービスエースは1本のみで、サーブ効果率は0.7%だった。

アタックでも緩急を使い分けて得点を積み重ねた。今までは速い攻撃を武器にしていたが、相手が対策してきた場合を想定。速い攻撃一辺倒にならず、ゆっくりした攻撃や幅を使った攻撃も織り交ぜて相手を翻弄し、2日間の勝利に大きく貢献した。
「決まるからトスも上がってくる。秀輔がいなかったら多分負けていた」と松下アナリストが称賛すれば、キャプテンのアウトサイドヒッター(OH)工藤有史も「凄かった。ちょっと覚醒した」と感嘆する。

KINGDOM パートナー
ミスの許容でメンタルを安定
唯一無二の存在を目指して邁進
プレーの幅を広げている酒井だが、躍動している要因はメンタルの安定が大きい。
トーマス・ラーナー新ヘッドコーチ(HC)はメンタル面の新しいアプローチがフィットしたと捉える。「ミスを恐れる気持ちが減り、良いミスと許されないミスの区別ができるようになってきた」。それによって酒井が本来持つ力を発揮できるようになった。

広島THとのプレシーズンマッチ、酒井は2日間でサービスエースを7本決めたが、サーブミスも9本あった。その数字はまさしく、ミスを恐れずに攻めることができている証左だ。
工藤も「練習でもいいなと感じていたし、あの日だけたまたま…ということではないと思う。もともと良い選手だし、それがボブ(ラーナーHC)によってよりミスを恐れなくなっていて良いと思う」と期待を込める。

他にも、9月に指揮官からの金言があった。
「今まではOPといえば打ち切ってこそみたいな固定観念があったけれど、それに自分が到達できずにうまくいかなかった。でもボブに『唯一無二の武器で貢献してくれないと、このチームでは活躍できない』と言われた」と酒井は明かす。

身長180cm。SVリーグに登録されているOPの中では長友優磨(フラーゴラッド鹿児島)と並んで、最も身長が低い部類に入る。それを持ち前のジャンプ力とパワー、そしてスピードで補ってきた。
「自分らしく、他にない武器で。とにかく得点につなげられる選手になろうと切り替えることができた」と酒井は話す。敷かれたレールはない。自分だけの武器を信じて、唯一無二の存在を目指す歩みは既に始まっている。
捲土重来を期すシーズン
憧れた広島THとの開幕戦
昨シーズンの酒井は18セットの出場で、アタック打数はわずか93本。主力だったOPマシュー・ニーブス(Alterna Stade Poitevin Volley Ball/フランス)が記録した1059本の1割にも満たない。
途中出場したシーズン最終戦ではアタック打数が2本で得点はゼロ。退団が決まっていた天理大学の1学年先輩であり盟友のセッター(S)中島健斗(東レアローズ静岡)のトスで、はなむけの一撃を放つことすら叶わなかった。試合終了後には目を赤く腫らし、悔しさをあらわにした。

「昨シーズンの悔しさは絶対に忘れないけれど、その経験があるから『試合に出られることが当たり前じゃない』と誰よりも分かっている」と酒井は力を込める。そして「それを分かった上で、バレーボールを純粋に楽しんでやれるようにしたい」と意気込む。

10月24-25日に行われる開幕戦の相手は広島TH。広島出身の酒井は馴染み深いチームとの対戦に気持ちを高ぶらせる。
「小学生の時によく試合を観に行っていたし、バレーボールといえばJT(現広島TH)だった。子どもの頃に憧れたチームと開幕で戦えることは楽しみでしかない」
開幕戦に向けた長い準備期間で積み上げた自信を胸に、酒井は松本で羽ばたく。固定観念を取り払った、新たな姿で。

SVリーグ第1節 広島サンダーズ戦 試合情報
https://sm-tridents.jp/match/2026-27-sv-div1-1
https://sm-tridents.jp/match/2026-27-sv-div1-2
クラブ公式サイト
https://sm-tridents.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/team/matsumototd/


















