もがく信州BWの小栗瑛哉 「PLAY TO WIN」の精神を胸に前へ

Bプレミアの信州ブレイブウォリアーズで2季目を迎えた小栗瑛哉が壁にぶつかっている。B2で戦った昨季はレギュラーシーズン60試合のうち31試合で先発し、平均出場時間は20分38秒。中心選手の1人だった。しかし、国内最高峰のBプレミアに参戦した今季は3番手のポイントガードに回り、開幕4試合での平均出場時間は6分48秒。富山グラウジーズとの開幕節GAME1では出番すらなかった。ジャッド・フラベル・ヘッドコーチ(HC)が掲げる「テンポの速いバスケット」の中で、輝きを失ったのはなぜか――。もがく司令塔の現在地に迫る。

文:芋川 史貴


富山戦GAME1は出場なし
「プレーの質を高めないと」

信州ブレイブウォリアーズがホームのホワイトリングで富山グラウジーズとの開幕戦に臨んだ2026年9月26。ロスターとしてベンチに入った小栗瑛哉は最後までコートに立つことなく、試合も85-99で落とした。

GAME1後の会見で、ジャッド・フラベル・ヘッドコーチ(HC)は「アキ(小栗)自身のコンディションは全く問題ない。ローテーションの中で出場させるタイミングがなかっただけ」と言及。「コンディションは全く問題ない」という言葉は、純粋にチーム内の序列の問題だという宣告に他ならず、小栗にとっては厳しい現実を突きつける。

「プレシーズンで高いパフォーマンスを残せなかった結果が、富山戦のGAME1につながったと思う。オフからケガ続きで出遅れた部分もあったが、それも実力。自分の準備不足だった」と小栗。悔しさや危機感が込み上げてきたが、GAME2への切り替えは早かった。

「コーチ陣に対して『俺が必要だろう』という気持ちを絶対見せる。シンプルにそれだけを表現しようと思ってGAME2に臨んだ。Bプレミアだからこそ、短時間で結果を出さないといけないし、プレーの質を高めないとダメ」

たとえ30秒の出場でも、コートに立った時に結果を残す心構えで前を向いた。

求められるスタイル体現できず
「びびっている自分がいる」

Bプレミアには、トップカテゴリーでしのぎを削ってきたクラブが並ぶ。強度も高さもスピードも、B2で戦った昨季までとは一線を画す。

そのレベルでプレータイムが得られないことは、「単なる実力不足」(小栗)かもしれない。しかし、シーズン序盤で自分自身を諦めてしまうわけにはいかない。小栗にも、出番を勝ち取れない理由が見えている。

「ゲームメイクはあまり求められていない。僕としては速いペースでやっていく中で、『ここはスローダウンして良いオフェンスを作りたい』と思っているけれど、コーチ陣はペースを求めている」

今季の信州は、ハーフコートでじっくり崩す昨季までのスタイルから「テンポの速いバスケット」に転換した。ディフェンスでもオフェンスでも圧力を与えるスタイルだ。

プロとしての経歴は、特別指定選手の期間を除けばまだ4季目。ポイントガードして胸に秘める哲学があり、ペースを落とすことにも小栗なりの理由はあるが、コーチ陣が求めているスタイルにマッチできていない。

「僕としても分かっているが、改善しきれていないことに苦しんでいる」と本音を吐露する。

味方に良いシュートを打たせるための配球や、試合の流れを読んだゲームコントロールも小栗の持ち味だが、鋭いドライブやアグレッシブなディフェンスも武器。「テンポの速いバスケット」に順応する力もあるはずだが、「びびっている自分がいる」と打ち明ける。

「僕の良さはアグレッシブだったはずなのに、どこかで『安全なプレーをしよう』という考えを大事にしてしまっている。アタックすべきなのに、良いショットを探している自分がいる。ファウルがたまっているからプレッシャーをかけない。危険を回避しようと…」

チームのスタイルにマッチできないから守りの姿勢に入り、それが悪循環につながってしまっている。

「PLAY TO WIN」
勝つためのプレーを

富山戦が終わった後、小栗はフラベルHCと話す機会があった。そこでフラベルHCが持ち出したのが、普段から楽しんでいるテニスの例えだった。

「テニスを試合以外でやる時は、ネットがあるにもかかわらず毎回強く打つだろう。でも試合になると、ネットに当たるかもしれないという恐怖心から100パーセントで振れなくなる」と言われ、「確かにな」と腑に落ちた。

フラベルHCが伝えたかったのは、安全なプレーではなく勝つためのプレーを選ぶ勝者のメンタリティーだ。

「英語で『PLAY TO WIN』とずっと言われている。『そのメンタリティーが一番必要だ』って言われて納得した。フラベルコーチが僕に対してどのように思っていたのか、富山戦後も気になっていたけれど、コミュニケーションを取ってくれたことでマインドがクリアになった」

フラベルHCは「確かにアキはおとなしいし、自信を大きく表現するタイプではない。でも安全策でプレーしているように見える。それはスキルではなくメンタルの問題。だからテニスの話をした」と明かす。

「世界のテニスプレーヤーでも、NBA選手のステフィン・カリーでも、失敗する方が多い。それでも彼らは世界最高。それは許容できているからだと思う」とフラベルHC。失敗しないことよりも、挑戦しないことの方がもったいないと示唆した。

富山戦のGAME2。Bプレミアで初めてコートに立った小栗は、第1クォーターの終了間際に3ポイントラインより遠い位置からシュートを放った。しかし、これを沈めることができず、小栗は悔しさを露わにした。

「あのシュートを決めてコーチ陣に『やっぱり俺が必要だろう!』とアピールしたかった。その気持ちはなくしてはいけない。自分に何ができるか証明し続けないと生きていけない世界。何としても決め切りたかった」

外れはしたものの、打ち切った小栗に対してフラベルHCは拍手を送っていた。テニスの話をしたのはこの試合の後日だが、反骨精神をむき出しにした小栗の姿勢を評価したからだろう。

富山戦のGAME2は10分55秒の出場。10月3、4日の横浜ビー・コルセアーズ戦でもプレータイムは6分未満と少なかったが、シーズンはまだ始まったばかり。「まだまだ旅の途中」と小栗も前を向く。

10月8日はアウェーで昨季B1王者の長崎ヴェルカと対戦する。長崎には秋田ノーザンハピネッツ時代に共にプレーし、理想のポイントガード像として憧れを抱く熊谷航が在籍する。

小栗がプレータイムを勝ち取り、かつて信州でもプレーした熊谷とのマッチアップを通して一皮むけるきっかけとなるか。チームとしても、小栗としても「PLAY TO WIN」の精神でビッグゲームに挑む。


信州ブレイブウォリアーズ 公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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