新天地で新境地を拓く長谷川雄志 両足キックで違いを示す

AC長野パルセイロは2月16日、2025シーズンのJ3リーグ開幕戦を迎える。藤本主税新監督のもと、8人の新戦力を加えて臨むシーズン。中でもJ1経験が豊富なMF藤川虎太朗とMF長谷川雄志は補強の目玉だ。徳島ヴォルティスから加入した長谷川は、左右両足のキックを武器に“新境地”を見出している。

文:田中 紘夢

本来はボランチで利き足は“両足”
センターバック起用で幅を広げる

「あれだけ両足で自在にボールを蹴れる選手は、J1も含めてあまりいない」

そう長谷川を評するのは、新任の西山哲平スポーツダイレクターだ。

昨季まで大分トリニータに在籍し、2019年には長谷川の獲得に関与。鹿児島城西高で全国高校選手権に出場し、宮崎産業経営大で九州選抜にも選ばれた逸材に惚れ込んだ。

両足のキック精度が武器。利き足は右だが、かねてから左の練習も続ける中で、大学時代には左右遜色なく扱えるようになった。

PROFILE
長谷川 雄志(はせがわ・ゆうし) 1996年12月6日、鹿児島県出身。鹿児島城西高時代に全国高校選手権を経験し、宮崎産業経営大ではデンソーカップ九州選抜に選ばれた。卒業後の2019年、当時J1の大分トリニータに加入。21年までにJ1でリーグ戦通算61試合に出場した。22-23年はJ2徳島ヴォルティス、24年には期限付き移籍したJ3のSC相模原でプレー。今季AC長野パルセイロに完全移籍した。左右両足を使えるユーティリティープレーヤー。178cm、78kg。

大分の練習試合に参加した際には、左足で直接FKを決めた。「ビューティフルゴールすぎて、自分でもびっくりした」と本人は言う。

大卒から3年間を大分で過ごし、J1で61試合に出場。小林裕紀、下田北斗(現町田ゼルビア)らの壁に阻まれながらも、ボランチとして厳しい競争に揉まれた。

その後はJ2の徳島ヴォルティス、J3のSC相模原とカテゴリーを落としたが、“新境地”を開拓。ボランチからセンターバックにコンバートされ、プレーの幅を広げた。

もともと178cmと比較的身長が高く、フィジカルコンタクトも強い。左右両足のキック精度を生かし、ビルドアップの一助にもなれる。徳島でセンターバックとしての適性を見出され、3バックの中央と左でプレー。昨季も相模原で3バックの左を担った。

徳島ではプレータイムを得るために受け入れるしかなかったが、相模原では乗り気ではなかった。シーズン途中、シュタルフ悠紀リヒャルト監督に「センターバックはどうか」と聞かれたが、3-1-4-2のアンカーでプレーしたい気持ちもあったという。

「とりあえず『やりたいかやりたくないか』の2択で聞かれたので、『やりたくない』と答えた」

そう長谷川は笑いながら明かしたが、練習試合で起用されたのは3バックの左。その後のリーグ戦でも、同ポジションで約3カ月ぶりの先発となった。

本望ではないかもしれないが、「センターバックの楽しさはあるし、自分の武器を出しやすいところもある」。いまはマインドを切り替え、求められたところでベストを尽くす構えだ。

右ウイングバックで“新境地”
「キックで違いを見せないと…」

今季はまさに、置かれた場所で花を咲かせようとしている。

期限付き移籍先の相模原で期限付き移籍期間が満了となり、保有元の徳島から長野に完全移籍。大分時代の恩師である西山スポーツダイレクターに招かれた形だ。

ジュビロ磐田から加わった藤川とともに、J1経験豊富な“補強の目玉”。そのプレーぶりはもちろんだが、どのポジションで起用されるのかにも注目が集まった。

3-3-1-3の布陣において、当初はアンカーか3バックでの起用が見込まれた。さまざまなポジションを経験した中で、行き着いたのは右ウイングバック。またもや新境地を見出すことになった。

「自分がそこで求められていることは、間違いなく縦への突破ではない。広角に蹴り分けることが求められるし、そうやって頭の中を整理して前向きに捉えられた」

右のワイドレーンでボールを受けた際は、両足を駆使して複数の選択肢がある。右足でオープンに持って前線に流し込んだり、左足で中央に運んでサイドチェンジしたり――。

左ウイングバックが逆サイドに張って待ち構え、前線にはラインブレイクに長けた選手が数多い。長谷川の武器が生かしやすい配置だ。

本職がボランチであるがゆえに、中央に絞ってプレーできるのも強み。シャドーと入れ替わって相手を撹乱することもできる。当初はウイングバック起用に驚きもあったが、そういった特性を踏まえれば疑問はない。

「キックで違いを見せないと、自分がそこにいる意味は薄まる。自分が蹴ると分かってから相手のダウンが速くなったり、そういうチームは絶対にあると思う。そこに対して次はどういうボールを蹴るかというところも練習していけたら」

もっとも、アンカーで見てみたいのも本音。攻守においてバランスを取りながらも、機を見てのミドルシュートもあるだろう。いずれにせよ、その能力やユーリィリティー性は大きな武器となる。

チームは2月11日から、宮崎県綾町で2次キャンプをスタートさせた。長谷川としては大学時代を過ごした宮崎に帰り、拠点の小田爪陸上競技場も馴染みあるグラウンド。16日の開幕戦に向けて、モチベーションは上々だ。

「開幕戦だからといってすごく意気込むんじゃなくて、最初も最後も同じようなメンタルで、その試合に対して100%の自分を出していきたい」

利き足は両足の28歳。その特異性を駆使して新境地を見出し、待望のJ初ゴールも虎視眈々と狙う。


クラブ公式サイト
https://www.gainare.co.jp/
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