唐突にも映る松本山雅の経営トップ交代 新旧経営陣の言葉から探る深層は

J3松本山雅FCを運営する株式会社松本山雅が、経営トップの交代に踏み切る。代表取締役社長の小澤修一氏が新設の代表取締役CRO(チーフリレーションオフィサー)に肩書きを変え、新たな経営トップ(代表取締役CEO)には代表取締役執行責任者の横関浩一氏が就く役員人事を内定。2026年4月21日の株主総会と臨時取締役会での承認を経て、新体制が発足する。小澤氏は社長就任から1期2年での退任。小澤氏の前任として5期10年にわたって社長を務めた神田文之氏は、このタイミングで取締役を外れ、クラブから去ることになる。唐突にも映る経営体制変更の狙いは何か。クラブを取り巻く環境や本人たちの言葉を基に、深層を探った。

編集:大枝 令

1期2年で社長を退く小澤修一氏
「このままでは成長戦略描けない」

4月10日午前10時。クラブ公式ホームページに「役員改選に関するお知らせ」と題したニュースがアップされた。

小澤氏と横関氏の2人が代表権を持つことは変わらないが、6人の役員名簿の最上位に掲載されたのは横関氏の名前。同日午後、松本市内で報道陣の取材に応じた小澤氏は「執行順位は横関が一番上になる」と、自らは経営トップから退く人事であることを説明した。

小澤氏は、記者からの質問に先手を打つ形で、今回の狙いと自身の思いを語り始めた。

「クラブ経営に求められるスキルが高度化してきている。(これからの)10年間で経営規模を1.5倍から2倍にしていくことを考えた時に、もっとアクセルを踏む体制にしていかなければ追いつかない」と強調。選手として松本山雅で現役引退を迎え、一般社員からの叩き上げで社長に就いた自分自身を冷静に見つめ、「社長業は難しくて、思うようにいかないこともすごく多かった。このまま続けて大きな成長戦略を描けるかと言われれば、難しいと思ったことも事実」と率直な思いを吐露した。

クラブの経営規模は、2度目のJ1を戦った19年をピークに下降の一途をたどる。

19年に27億円余を計上した売上高は、25年には14億円余と半減。トップチームの成績低迷やコロナ禍による入場制限など経営にマイナスのインパクトを与えた要因は一つではないが、小澤氏は「自分が(社長を)やっていても、周りのスピード感に追いついていけないことを感じた2年間だった」と振り返る。

次期トップは“右腕”として招聘
短期間で確かな実績示して昇格へ

小澤氏にバトンを渡した神田氏は、社長退任後も取締役としてクラブに残留。それは、小澤氏が一本立ちするまで支えるという姿勢の表れだった。

実際、黒幕のような立ち位置で経営の実権を握ることはせず、小澤氏をサポート。小澤氏も「彼(神田氏)がいなければ乗り切れなかった部分もある」と認める。

一方で、大手広告代理店でビジネス界の最前線に身を置いていた横関氏を松本山雅に招聘したのも神田氏。経験に裏打ちされた高いビジネススキルと、サッカークラブの事業に情熱を持っていた横関氏の能力が松本山雅の成長に欠かせないと判断し、小澤氏の社長就任と同時に代表取締役執行責任者に起用する厚遇で迎え入れた。

神田氏は取材に「その時から『2年後は経営トップに』という含みがあったわけではない」と断言する。

この2年間の横関氏の実務は、対外的な関係性構築よりも経営課題の洗い出しや財務の立て直しといった部分にウエイトが置かれた。

J2昇格が果たせず収入増の起爆剤が見出せない中で、財務管理を徹底することで収支の安定化に尽力。昨年に鉄骨部材落下の影響でサンプロ アルウィンが利用停止となり、クラブに想定外の損失が発生した際も、スタジアムを保有する長野県と粘り強く折衝するなど「彼(横関氏)でなければできない仕事を目の当たりにした」と話す。

近く発表される直近1年間の決算も、横関氏が果たした役割が数字として示される見通しという。

「本当は社長の右腕になってほしいと考えていた」と神田氏。「ただ、ビジネス面での知識といった経営スキルの高さはもちろん、サッカー界で広い人脈を持っているなど、この2年間で示した実績で(経営トップに起用する方向性が)クリアになっていった」と明かす。

Jリーグはシーズン移行を控え、8月には秋春制の新シーズンが開幕する。チームは石﨑信弘監督を新たに迎え、J2・J3百年構想リーグで変革への期待が膨らむ試合を重ねている。

2020年のJ2降格を起点に、競技面でも経営面でも長いトンネルが続いているとすれば、そこから抜け出すカギは経営と強化――つまりフロントと現場の両輪がブレることなく前進する以外にない。

新経営陣も新チームも、真価が問われるのはこれからだ。


株式会社松本山雅 役員改選に関するお知らせ
https://www.yamaga-fc.com/archives/537328
小澤修一社長 一問一答
https://yamaga-premium.com/archives/371884

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