“紅の名脇役”は引退後もフットサル界のために ボアルースGK岡島工

2025-26年シーズン限りで現役引退したF1ボアルース長野のGK岡島工。ボアルースでの4年半は控えに回る機会が大半だったが、どんな立ち位置であってもチームを支え続けてきた。愛知県出身の32歳は12年間の選手生活を終え、今春から東海地方に戻って新たな道へ進む。プロフットサル選手としての軌跡と、セカンドキャリアを歩み始める思いに迫る。

文:田中 紘夢

主将も指揮官も認める“準備の鬼”
引退発表直前に報われた努力

「オカジ(岡島)がやっているから自分もやらなきゃ――と、本当に助けられていた。引退すると聞いた時はすごくショックというか…やっていけるのかな、という気持ちになった」

2026年2月15日に開催された25-26年シーズンのホーム最終戦。岡島工の引退セレモニーを終えてから記者会見に臨んだキャプテンの三笠貴史が珍しく弱音を吐いた。

岡島は、それほどチームにとって欠かせない存在だった。

21-22シーズンの途中にF2アグレミーナ浜松から移籍加入。主力の山口友輔や橋野司を支え、試合ではベンチを温める日が続いた。それでも、いつか訪れる出番に向けて準備を怠らない姿勢を示してきた。

「どうしてもGKは1人しかピッチに立てないけれど、14人のメンバーに選ばれている以上は責任がある。出ている選手に声を掛けることもそうだし、ベンチから雰囲気を盛り上げることもそう。ベテランという立場でもあるので、伝えることは伝えないといけない」

努力が報われたのが、25年12月に開催された第21節、フウガドールすみだ戦だった。正守護神の橋野がコンディション不良で欠場。岡島に1年ぶりの出番が巡ってきた。

チームは、第1ピリオド(P)に先制されたものの直後に追いつき、第2Pで逆転に成功。守勢に回る展開だったが、岡島が好セーブを連発して追加点を与えず、最小失点に抑えて2-1で競り勝った。

「今日はオカジがMVPだった」と山蔦一弘監督が言えば、1ゴール1アシストの米村尚也も「何度も助けられた」と感謝。その試合でのパフォーマンスが評価され、初めてリーグの週間MVPに選出された。引退を決意し、直後に正式発表を控えていた岡島にとっても忘れられない試合となった。

「試合後に『今までやってきてよかったね』とか『腐らず準備してきたからだね』とか、いろんな人から連絡をもらった。選手としてのあり方が間違っていなかったんだと感じられた」と感慨を込める。

地元の名古屋で迎えたファイナル
「プレゼントをもらった感覚」

すみだ戦から12日後、岡島はクラブ公式サイトを通じて引退を表明した。このシーズン限りでユニフォームを脱ぐことは、開幕前から思い描いていたという。

「一緒にプレーした選手たちが伸びたり、スクールで教えた子どもたちが成長したり。それを見て『嬉しいな』と感じている自分がいて、もう選手として100%で戦える状態にはないのかなと…」

ベテランの域に達し、控えGKとしてチームや若手を支える立場になったことで、良くも悪くも角が取れたのかもしれない、と思う。

そんな自分と向き合いながら、チームが3年ぶりに昇格したF1の舞台で「最後にもう1年勝負したい」と臨んだのが25-26年シーズンだった。

リーグ戦は全27試合でメンバーに名を連ね、出場はすみだ戦の1試合。最終順位を決めるファイナルシーズンは出番がなかったが、ホーム開催の「長野ラウンド」と、地元開催の「名古屋ラウンド」を経験。「最後にプレゼントをもらったような感覚だった」と白い歯を見せる。

名古屋ラウンドの会場は名古屋金城ふ頭アリーナ。15年2月にFリーグデビューを飾った名古屋オーシャンズのホームアリーナは、岡島にとって思い入れの深い場所だ。

出発点となった地が、現役最後のリーグ戦会場に。「感慨深いものがあった」と振り返る。

「(名古屋での)最初の1年は特別指定選手で、サテライトとトップを行き来して毎日ずっと練習しているような感じだった。その日々がなかったら、こんなに長く続けることはできなかったと思う」

名古屋ラウンドの会場には、若き日の岡島を支えた面々の顔もあった。

「ピッチには立てなかったけど、キャリアの最後に帰ってきて成長した姿を見てもらえたのはよかった」

「拾ってくれた」クラブで引退
セカンドキャリアは選手の支えに

チームは9カ月間にわたるリーグ戦を終え、シーズン最後の大会となる全日本選手権へ。3月の1回戦で岡島に出番が訪れたが、東海1部リーグのロボガトフットサルクラブにPK戦で敗れ、有終の美とはならなかった。

現役ラストゲームを終えた岡島は、「プロとしてアマチュアクラブに負けてはいけない」と重く受け止めつつ、「『次も頑張れよ』と言われている感覚になった」と前を向く。ほろ苦い幕切れも次へのエネルギーに換え、セカンドキャリアへと歩みを進める。

Fリーグで過ごした12年間のうち4年半をボアルースに捧げてきた。21-22シーズン途中にアグレミーナ浜松を退団することになり、引退も視野に入れていた中で届いたオファー。「うまくいかない自分を拾ってくれた」と感謝は尽きない。

「このクラブのために、と思って戦ってきたし、これだけ熱量のあるクラブもなかなかない。地域の方々に支えられて、あれだけ熱いホームゲームがあって、地方クラブの最先端にもなれると思う」と熱く語る。

「このクラブでキャリアを終えよう――と思えるくらい、感謝の気持ちがあった。結果で恩返しできなかったのは心残りだけれど、引退後もフットサルには関わっていくので、何かしらの形で還元できたら」

クラブからはGKコーチ就任の打診も受けていたが、4月から静岡県を拠点とするフットサル専門ブランド「Desporte(デスポルチ)」に身を置くことが決まった。今後はシューズやアパレルを通して、選手をサポートしていく。

現役時代にチームを陰で支えたように、引退後もフットサル界を足元から照らしていくつもりだ。


クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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