期限付き加入2年目の松原颯汰 “若き守護神”として確固たる存在感

藤本主税新監督のもとでJ3リーグ開幕を迎えたAC長野パルセイロ。アウェイ2連戦を1勝1敗で終え、2025年3月1日にザスパ群馬とのホーム開幕戦を迎える。直近2試合は劣勢の時間も長かったが、その中で気を吐いたのはGK松原颯汰だ。ジェフユナイテッド千葉から期限付き移籍を延長した22歳が、確固たる地位を築こうとしている。
文:田中 紘夢
開幕戦で待望のリーグ初勝利
チームに寄せた思いが結実
「素直にうれしい。最高だった」
開幕戦のテゲバジャーロ宮崎戦で1-0と勝利した後、松原は開口一番に喜びを表していた。
それもそのはずだ。加入1年目の昨季は後半戦からレギュラーをつかむも、15試合に出場して9分6敗。チームの不調も相まって、一度も勝利がなかったのだから。

流通経済大柏高からプロ入りして6年目、待望のリーグ戦初勝利。道のりは長く、険しかった。
チームが18位に終わった昨季も、自身のパフォーマンスが低調だったわけではない。出場した15試合のうち、複数失点を喫したのは5試合のみ。キャリアハイの出場数を重ねる中で、みるみると自信をつけていった。
それでも、納得のいくはずがない。
「良いパフォーマンスだけではダメ。自分の中で1試合1試合成長していかないと、勝利というのはまだまだ遠いのかなと思う」

PROFILE
松原 颯汰(まつばら・そうた)2002年9月30日生まれ、大阪府出身。高校時代に流通経済大柏(千葉)でプレーし、全国高校選手権で決勝を経験した。卒業後はJ2のジェフユナイテッド千葉に加入。2年目の2022年に1試合に出場してJ2デビュー。昨季はAC長野に期限付き移籍して15試合に出場。今季も期限付き移籍を延長し、開幕戦からゴールマウスを守っている。181cm、77kg。
不完全燃焼のままシーズンを終え、当然ながら心残りはある。保有元の千葉には戻らず、期限付き移籍期間を延長。このまま立ち去るわけにはいかなかった。
「上でやりたい気持ちもあったけど…。去年は『迷惑をかけた』という言い方が合っているかはわからないけど、チームに貢献できなかった。今年はパルセイロの力になりたいと強く思っていた」
その思いが結実したのが、開幕初スタメンを飾った宮崎だった。

チームは前半のうちに先制したものの、初戦特有の硬さもあって押し込まれる展開。後半は何度もゴールを脅かされた。
そこに立ちはだかったのが松原だ。
59分、60分と相手のシュートを立て続けにセーブ。65分にもゴールエリア手前からのシュートを横っ飛びで弾くと、素早く立ち上がってこぼれ球に備える。至近距離で相手に詰められたものの、身体を目いっぱい広げて足に当てた。

ゴール期待値(シュートチャンスが得点に結びつく確率)は長野の「0.669」に対し、宮崎は「2.329」。2点以上を決められても不思議ではなかったが、松原の攻守もあって無失点に終える。プロ初勝利を自らの手で手繰り寄せた。
開幕2試合の出来を最低水準に
おごらすホーム初勝利を狙う
続くギラヴァンツ北九州戦も0-2と敗れはしたが、再び好セーブを連発。2失点とも至近距離からのシュートだったが、反応はできていた。
至近距離でのシュートストップは特長でもある。昨季はシュナイダー潤之介GKコーチのもとで前に出る意識を高め、今季は渡邉英豊GKコーチからより細かなポジショニングを習得。ただ単に動くだけでなく、ステイする判断も磨いている。

的確な立ち位置を取った上で、最後に手足が伸びるのも彼の武器。2失点目は左肩の上を打ち抜かれ、GKからすれば泣きどころでもあるコースだったが、素早く左手を振り上げていた。
181cmとGKにしては小柄で、手足が長いわけではない。それでも「得意なほうではないと分かっている」からこそ、練習から伸ばす努力をしてきた。ポジショニングも含めて弱点を補いながら、瞬発力という強みを生かしている。

本人からすれば、開幕から2試合のパフォーマンスは最低水準。「シュートストップができた部分はあるけど、その回数を当たり前にしていかないと次の成長はない。『これ止めるんか』というシーンをもっと増やしていきたい」と先を見据える。
昨季から見せたビッグセーブは数知れず。サポーターからは“松原神”と称えられているが、それにおごるつもりもない。

「うれしいはうれしいけど、調子に乗らずに『もっとやれることはあるぞ』という気持ちで試合に挑みたい。もっとやれるし、いまは常にやらないといけない」
次節はザスパ群馬とのホーム開幕戦。相手のゴールマウスを守る近藤壱成は、千葉時代のチームメイトでもある。2023年は互いに試合に絡めず、悔しさを分かち合ってきた。
「ドゥ(近藤)は人としても本当にリスペクトしているし、支えてもらったと思っている。試合で戦えるのは本当にうれしいけど、負けたくない気持ちは強い」

松原にとっては、ホーム初勝利がかかった試合でもある。昨季は勝利の女神から見放されてきたが、アウェイでの開幕戦で負の連鎖を断ち切った。次はホームで歓喜を味わうべく、「とにかく勝ってシャナナ(ラインダンス)を踊りたい」。
かつては年代別代表も経験した22歳。プロ入り後も新井章太(千葉)やキム・ジンヒョン(セレッソ大阪)ら、偉大な守護神の背中を見てきた。
彼らに追いつき、追い越すためにも、ここで立ち止まっている暇はない。長野で確固たる地位を築き、神がかり的なセーブでチームを勝利に導く。

J3リーグ第3節 群馬戦 試合情報
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