肉体改造で“ムキムキ・トライデンツ”に? 高強度トレーニングの全貌を探る

「体格がたくましくなった選手が多いのでは――?」。オフシーズン期間の写真を眺めながら、編集部内でそんな話題が持ち上がった。実際にVC長野トライデンツは7月まで、フィジカルを重点的に強化してきたという。どんな姿を目指してトレーニングを積み、実際にどんな成果が出そうなのか。筋肉に詳しい安部翔大らを直撃した。

文:大枝 史 /編集:大枝 令

チーム随一の筋トレ好き安部翔大
「筋肉がそのままパワーに」

VC長野はチーム始動の6月以降、7月まではフィジカルを重点強化してきた。ウエイトトレーニングに加えてフロアトレーニングや走り込みもハードに敢行。選手たちは口々に「本当にキツかった」と話す。

新しく就任した有賀康大S&Cトレーナーのもと、今年はアプローチが大幅に変わった。動きのあるトレーニングをメインに、普段しないような動きを取り入れたという。

有賀康大S&Cトレーナー

安部が振り返る。

「例えばただ引いて背中をトレーニングするのではなく、バランスを取りながらプッシュアップ(腕立て伏せ)の状態でダンベルを持って、体幹を鍛えながらやるとか、プラスアルファがあった」

加えてその期間はレスト時間を短くして、集中的にトレーニングを行った。

「自分だったらスクワットを120kgで潰れるまでずっとやって、ヘロヘロになっている状態で次は高くジャンプを10回、そして何か動きがあるもの…と、連続でやるのがキツかった」

安部は振り返りながら苦い顔を浮かべる。今までは練習で筋トレした後にもう一回自主的に筋トレをしていたが、「練習がキツすぎてできなかった」と明かすほどの負荷だった。

それだけのトレーニングを積み重ねれば、さぞムキムキになったのではないか――?と問うと、意外にもそうではないと答える。

「筋力自体は落ちた。有賀さんのトレーニングは筋肥大というよりも筋パワーや身体の動かし方」

さらに、従来は体重が重くなりすぎて膝に負担がかかっていたと明かす。ケガのリスクを低減するために体重を5kgも落とした。

それでも以前より、力の使い方が良くなっている実感を得ているという。

「今までは筋肉があってもうまく使えずにパワーが分散していたのが、今は筋肉がそのままパワーになっているイメージ」と安部。パワーは神経伝達でどれだけ伝わるかが決まるため、そこを鍛える目的もあるという。

KINGDOM パートナー

「一番伸びた」という藤原奨太
「ボールにパワーが乗っている」

「6月はフロアトレーニングが週に2回あって、自重で負荷をかけるのがものすごくキツかった」

そう振り返るのは藤原奨太。チームメイトの評によると、この期間のトレーニングで最も伸びた選手の一人だという。バレーに関わらず、全ての競技に必要な動きをトレーニング。走り方一つでも、脚の上げ方から追い込んでいく。

横になって脚をずっと上げる関節のトレーニングなど、今まで取り組んだことのないトレーニングに悲鳴をあげる選手も多かったと振り返る。

しかし、その成果は目に見える形で現れた。マックス値の測定はしていないものの、測るまでもなくパワーが身についているという。

「今まではスクワットを150kgか160kgで上げていたのが、今は180kg。クリーン(バーベルを床から上げて肩に乗せる動作)は60kgか70kgでやっていたけど今はどの選手も80kgを10回上げられるようになっている」

「クリーン一つでも、バーベルを上に持ち上げるスピードは早くなっているのは感じる」

そしてそれが、パワーアップにも繋がっているという。「8月に入ってボールを触った時に、パワーが乗っているのを感じた」。実際に計測しているサーブのスピードも上がっている。

7月までの土台作りを終えて水分量や筋肉量が向上し、8月からはボールを使ったトレーニングが始まった。現在は試合期に向けて、高重量低回数のトレーニングをしてパワーを鍛えている段階だ。

「選手たちも成長していると感じている人が多いと思う」と藤原。その成長を自信に変えて、コート上でいかんなく発揮したい。

サプリ摂取の取り組みもスタート
鍛えた身体で発揮するものは

バージョンアップしたのはトレーニングだけではない。今季はチームでサプリメントを摂る取り組みを始めた。

練習中にはクレアチンでパワーを上げ、練習後には疲労回復の狙いでBCAAを摂取する。さらに、現在はパワー系でトレーニングしているが、また試合期に一度強度を上げる計画だという。

「去年も良かったけれど、今年も違うアプローチでやっていて良いと思う」と安部。あとは鍛えたものをどのようにコート内に落とし込むか。開幕までの期間でより精度を高めていく。

今シーズンの目標を尋ねると、「去年より出られる試合を増やすのと、スパイク決定率、サーブ効果率、ブロック決定率など個人スタッツは上げたい」と話す。

現在もミドルブロッカー(MB)陣は切磋琢磨している状態。鍛えた身体を持ち寄ってチーム内で競争し、今シーズンを戦い抜く。

2年連続キャプテンとなった藤原も「全体的にレベルアップしている。やっていてすごく良かった」と口にする。

個人の目標としては「今シーズンは『自分が雰囲気を変えて勝てた』という試合を増やせるように、ミスをしないプレーでチームに貢献したい」と堅実性を挙げた。

3カ月にわたってハードなトレーニングを繰り返してきた選手たち。単純に筋肉が増えてムキムキになったわけではなかった。

しかし、身体の使い方やパワーの伝え方を習得し、より強い力をボールに加えることができるようになった。 新たなパワーで打たれたサーブやスパイクは、昨シーズンよりも大きな音でアリーナに響きわたる。


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