大橋良隆のオレンジ・アイ(1)「低迷を招いた守備の甘さ」

サッカーは11人で助け合いながら、相手に応じてさまざまな戦術や駆け引きを繰り広げるスポーツだ。AC長野パルセイロはどんなサッカーを目指していて、現在地はどこなのか――。2009-15年に在籍した大橋良隆が、チームの舵を取るボランチの視点を交えながら解説する。第1回は、J3リーグで20チーム中19位に低迷した一因を掘り下げた。
構成:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
インターセプト数はリーグ最下位
定まらなかった守備の奪いどころ
苦悩の2025シーズンが幕を閉じた。
J3リーグで20チーム中19位。トップチーム初挑戦の藤本主税監督のもと、クラブとしても野心を持って挑んだ1年だったが、結果は振るわなかった。

監督にはさまざまなタイプがある。自分の指導哲学やスタイルに選手を当てはめるのか、今いる選手の特徴を最大限に生かすのか――。藤本監督はどちらかと言えば前者だったように思う。
ただ、前者がうまくいかなかったときに、臨機応変さや柔軟性がなかった。

リーグ最少得点の攻撃に関しては、チームとして「これ」といった形があれば、行き詰まったときも立ち帰れたのかもしれない。攻撃以上に再現性が作りやすい守備に関しても、それさえあればリーグ5番目に多い失点は避けられたのではないか。

そもそも得点を取りに行きたいのか、失点をしたくないのか――。どっちつかずになってしまった印象は否めない。
4-1と大勝した第29節・福島ユナイテッド戦のように、ハイプレスが機能していた試合は自分たちのペースになっていた。相手との兼ね合いもあったかもしれないが、相手がどこであろうと「こういう守備をするんだ」というベースがあれば、選手に迷いは生じない。

逆に言えばそのベースがないと、「ここは行っていいのか」と迷いが生じ、出足も一歩遅れる。ボールを奪えないし、サイドにも追い込めなくて、自陣に押し込まれてしまう――。そんな歯がゆい試合が散見された。

今季は「ボールを奪ってやろう」という選手が少なく、「誰かが奪ってくれるだろう」と人任せになっていたようにも感じる。相手のパスを奪い取る「インターセプト」の数はリーグ最下位。チームとして奪いどころさえ共有できていれば、それも変わったのかもしれない。

KINGDOM パートナー
人数が揃っていても守り切れず
5-4-1の布陣は“安泰”ではない
主なシステムは3-4-2-1。敵陣では果敢にハイプレスを仕掛け、自陣では5-4-1のブロックを敷く。後方に人数を割いてスペースを埋める配置だが、人数が揃っていてもボールを奪えなかったり、クロスを上げられて失点したり――。守備が安定しなかった。

例えば1-2と逆転負けした第28節・FC岐阜戦。42分の失点は象徴的なシーンだった。
自陣深い位置で5-4-1のブロックを形成。岐阜左サイドハーフ泉澤仁のカットインに対し、右ウイングバックの安藤一哉がついていった。それによって空いたサイドのスペースを北龍磨に使われたが、まだ後ろに人数は余っている。

ボランチのイム・ジフンと3バック右の酒井崇一が2人でスライド。2対1と数的優位の状況を作ったが、簡単にクロスを上げられる。中央でもフィニッシャーの山谷侑士に対してフリーでヘディングを許した。

いくらブロックを敷いていようが、最後はボールに一番近い選手が奪いに行かなければならない。それはサイドの局面だけでなく、中央でも同じだ。「人がいるから」と安心してしまっては、5-4-1のシステムは裏目に出る。

元ボランチの目線で言えば、ボールの移動に対してスライドが遅く、ブロックの間を突かれてしまうのも気がかりだった。
まずは中を締めることが前提だが、仮に相手のトップ下に縦パスを通されたとしても、ボランチとセンターバックで挟み込めば奪取率は高まる。それも含めて奪いどころが共有できていれば、簡単には失点しないはずだ。
ボールを奪い、ゴールを目指す
失われた積極性を取り戻せるか
日本代表を見ても、ボランチの佐野海舟はボール奪取能力に長けている。ボールの移動に対してポジショニングが的確で、常に足が止まらない。運動量、予測力、スペースの消し方、足の出し方――すべてが一級品だ。

ともにプレーはできなかったが、2017-19年にAC長野に在籍した元日本代表・明神智和さんも教科書のような存在。当時は大ベテランの域に差し掛かっていたが、状況判断の的確さが目を引いた。
ボランチは攻守の舵取り役で、その振る舞いがチームの勝敗に直結する。今季は長谷川雄志と古賀俊太郎のダブルボランチが多かったが、長谷川は大卒から3年間をJ1で過ごし、古賀も育成年代から海外でもまれた過去がある。

彼らの経験値も含め、チームとしてもっと引き出せるものはあったはず。そんなもどかしさを抱えながら見守った1年だった。
トップチーム初挑戦の藤本監督は、来季も続投が決まった。OBとして今のAC長野に求めたいのは、ボールを奪い、ゴールを目指すという「積極性」だ。

1人でダメなら2人、2人でダメなら3人でボールを奪いに行く。ボールを奪ったら受け手と出し手の2人だけでなく、3人、4人とゴールに向かって出ていく。がむしゃらで、ひたむきで、とにかく走る――。それが本来のパルセイロが持つカラーで、その姿にサポーターも共鳴してきた。

来季は秋春制への移行に伴い、2月-6月まで昇降格のない特別大会となる。大卒選手も多く加わる中で、チームとして恐れずチャレンジしながら、失われたアイデンティティを取り戻してほしい。

PROFILE
大橋 良隆(おおはし・よしたか) 1983年7月1日生まれ、埼玉県出身。浦和南高から仙台大に進み、卒業後の2006年にベガルタ仙台に加入した。07年に当時東北リーグ1部のNECトーキンに期限付き移籍。08年には完全移籍に移行してキャプテンを務めた。その年は全国社会人選手権(全社)で準優勝し、JFL昇格の権利を得られる全国地域リーグ決勝大会(当時)の出場権を得たものの、開催前に休部が発表されて出場を辞退。自身は09年から当時北信越リーグのAC長野パルセイロでプレー。2015年の引退までにJFL昇格とJ3参入を経験し、3カテゴリーで172試合17得点をマークした。相手の攻撃をつぶすボランチとして存在感を示した。好きな釣りはエギングとアジング。
クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
長野県フットボールマガジン Nマガ
https://www6.targma.jp/n-maga/













