信州を支える自己犠牲の精神 アンジェロ・チョルは謙虚に学んで一気にフィット

信州ブレイブウォリアーズの新外国籍選手アンジェロ・チョルがチームにフィットしてきている。ディフェンスでは持ち味の跳躍力を生かしてリングを守り、リバウンドやアシストでチームを下支え。習得が難しいと言われる信州バスケの中で、32歳のベテランはなぜこんなにも早くチームにフィットできているのだろうか。11月29-30日に行われたベルテックス静岡戦を振り返りながら迫ってみた。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
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練習から垣間見える人間性
急遽の合流もフィットした理由
ジェイシー・ヒルズマンとの契約解除に伴い、シーズン開幕直前にチームへ合流したチョル。
シーズン序盤はチームルールをコート上で遂行するのに苦労している様子だった。ディフェンスではズレが多く生まれ、オフェンスでもやや消極的なプレーが見られた。

もちろん、勝久マイケルヘッドコーチ(HC)が求めるバスケットは緻密であり、トレーニングキャンプを初日から積んでいる1年目のメンバーもまだまだ成長途上にある段階。その過程を踏んでいないチョルに多くのエラーが起こるのは仕方のないことだった。
その時期をチョルが振り返る。
「(勝久HCのバスケを理解するのに)最初は時間がかかった。コーチが言うことをやろうとして固まってしまい、自分のプレーが少しぎこちなくなってしまっていた」

その中でも練習中にはひたむきにプレーを学ぶチョルの姿があった。時には勝久HCから強い口調で指摘を受ける場面もあるが、ウェイン・マーシャルや、歳下の仲間からのアドバイスにも真摯に耳を傾けて成長し続けてきた。
その姿勢に着目すると、チョルの人間性も垣間見える。
「年齢がいくつだろうと関係ない。チームの中では自分が他のメンバーより歳上だったとしても『歳上だから人の話を聞かなくていい』なんてことはなく、常に誰からでも学べると思っている」
「歳上からも歳下からも、時には5歳の子どもからでさえ何かを学べる」

その考えは、勝久HCが今季掲げる「良きチームメイト、良い集団」の一員となるためには必要な要素そのもの。
様々なカテゴリーを横断しながらキャリアを積み上げてきたことの裏付けであり、開幕直前の合流にも関わらずチームへのフィットが早いことにもうなずける回答だった。

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外国籍一人の時期に大きく成長
「今はだんだん自信もついてきた」
マイク・ダウムのケガにより11月8日の岩手ビッグブルズ戦からスタメンに抜擢されたチョル。その後11月16日の福島ファイヤーボンズとのGAME2ではウェイン・マーシャルもロスターから外れ、外国籍1人だけでローテーションの主軸を担った。
平均プレータイムも15分程度から30分近くに増加。リバウンドやブロックの数字も伸びている。

成長を続ける中、11月29日の第1戦では27分3秒の出場。12得点7リバウンド1ブロックを記録し、今季初めてヒーローアワードにも選出された。
スピーチでは流暢な日本語で「(ホワイトリングの雰囲気は)完璧です」と発言し、ブースターの拍手と声援を誘った。

その活躍に勝久HCも目を細める。
「トレーニングキャンプの途中から合流した彼は、キャッチアップするのに時間がかかりながら、厳しくされながらも素晴らしい人間で、毎日頑張ってくれている。彼の笑顔、賞をもらえるのを見れてうれしい」
「昨日(29日のGAME1)あまりできていなかったピック・アンド・ロールディフェンスで早めの努力が今日(30日のGAME2)はより良かった。リングでの駆け引きやプレスブレイクされてもリングを守ってくれた。ディフェンスがどんどん成長している」

チョル自身も成長を実感している。
「シュートはあまり良くなかったが、とにかくチームを助けるために他のことをやろうとした。ショットブロックやリングを守ること、しっかりスクリーンをかけること。そういった形でチームに貢献できることを常にやろうとしていた」
「今は段々と自信もついてきたし、自分のコート上でのポジションとかも理解できるようになってきた。コートに出ていても前よりもずっと居心地が良い」

GAME1では土家大輝のアシストからアリウープが飛び出したり、GAME2では4アシストを記録するなどチーム間での連係も磨かれている。
「賞を取ったことに対してみんなも妻も喜んでいた。だけど僕にとって一番大事なのはチームが勝つこと。『自分がMVPになろう』とか『何点取ろう』とかは考えていない。とにかくチームが勝てばみんながハッピーになれる。そこが一番大事」

それはまさに自己犠牲の精神。チョルもまたスタッツに残らない泥くさいプレーを厭わない選手なのだ。チョルが成長した分だけ、信州のアイデンティティである泥くさいディフェンスとチームワークはより強化される。
Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/club_detail/?TeamID=716&tab=1
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/










