代表帰りの若き俊才・工藤有史 “A代表までの距離感”と新シーズンへの覚悟

国内トップの環境に身を浸した若武者は何を得て、何をチームに持ち帰ったのか――。2025年度男子日本代表登録メンバーに選出され、およそ2カ月間の活動をしてきたVC長野トライデンツのアウトサイドヒッター(OH)工藤有史。合宿期間中に「帰ったときに、自分がどれくらいできるのか楽しみ」と話していた23歳に、前後の変化などを聞いた。

文:大枝 史 /編集:大枝 令

代表での経験をチームに還元
中心選手として自覚も芽生える

工藤に大きな刺激を与えたのは、大塚達宣(パワーバレー・ミラノ)との会話だった。

「『イタリアに行った時に、リスクを負う場面でももっと打ちにいかないといけない、と気付いた』と聞いた。世界では細かい技術だけでは通用しないんだと感じた」

小中学校時代をパンサーズ・ジュニアでともに過ごした1学年上の先輩が海外で得た経験。その会話を通じ、スパイクを打つ判断基準に変化が生じたという。

シーズン中から決定力アップの必要性を感じていた工藤。代表合宿でそれを痛感したという。

そして今は「打つ時に自分の選択肢が増えたし、状況判断が前よりはできている」と自信を持って話す。

それらの糧になったのは大塚だけではなく、代表レベルの選手たちとの交流だ。

中でもリベロ(L)の高木啓士郎(広島TH)とは岩手遠征まで同部屋で過ごし、セッター(S)の深津英臣(WD名古屋)とは食事に誘ってもらうなど、多くの話を聞くことができた。

「こういう考え方もあるんだ…と感じた。それを自分がうまく他の人に伝えられればいい」

「すごく若いチームなので、自分が積極的にコミュニケーションを取らなければと思っている。自分がどう伝えていけばいいのかは考えてやっている」

代表の経験をVC長野に還元し、全体のレベルアップを図る。昨シーズンにチームを支えた柱が抜けた今、自らがチームの中心となる覚悟だ。

実際、キャプテンの藤原奨太は工藤の変化について「ポジショニングが違ったら指示をすることが増えてきている。すごくありがたい」と明かす。

ディフェンスには一定の手応え
A代表への道筋も「遠くはない」

代表での2カ月間を経て、工藤は自分の現在地を冷静に見つめていた。

「正直B代表にも入れると思ってなかった。そこでまず入れて、親善試合を経験できたのはうれしかった」

しかし、A代表への道のりは決して甘くない。昨シーズンの活躍だけでは「Aはまだまだ」だと率直に認める。

それでも感じた手応えはある。

「ディフェンスの部分はB代表の中では一番自信があると思ってやっていた。アウトサイドは特にディフェンスができる選手は重宝されると思う」

オフェンス面で劣る部分があっても、ディフェンス面での安定感があれば監督にとって使い勝手の良い選手になれる。工藤はそこに活路を見出す。

代表活動を通じて身体面でも変化を実感している。

個人的にはパワーがついた感覚はないというが、「前に比べたら軸がブレるのが減って、『あまり力が乗らない』という感覚が前よりは減った」。代表で重点的に行った体幹トレーニングの効果が現れ、安定性が向上した。

7月にチームに戻ってからのトレーニングも含め、フィジカル面でも成長。ディフェンスの精度向上やアタック面での課題を持ちながら、目指す場所を明確にして階段を上っていく。

「次は選ばれるだけじゃなくて国際大会で活躍したり、出ることができれば自分のレベルがどんどん上がっていく」

SVリーグの試合がない時期に濃密な練習ができる喜びを強く感じていた工藤。さらなる経験を積むためにも、次はA代表入りを目指す。

「ディフェンス面をもっと安定させれば遠くはないんじゃないか」

代表での経験が教えてくれた現実と可能性。再び日本代表のユニフォームに袖を通すために、そしてその先へ――。 その未来をつかみ取るために。新シーズンは絶対的な存在としてコートに君臨する決意だ。


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