主力不在で上位・町田にドロー ピッチを“翔”ける最古参、“昇”りゆく最年少

逆境も力に変え、堂々と戦い抜いた。ボアルース長野は2025年12月7日のF1リーグ第20節で、ペスカドーラ町田に3-3のドロー。ホームで上位相手に勝ち点1をもぎ取った。キャプテン三笠貴史をはじめ主力が数人不在の中、最古参の松永翔を軸に総力を結集。勝ち点以上の意義を見い出せた一戦を弾みに、レギュラーシーズンのラスト2試合に向かう。
文:田中 紘夢/編集:大枝 令
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エースや主将が不在の非常事態
最古参の松永を軸に乗り越える
「勝ちたかった」
チーム最古参7年目の松永翔は、開口一番に悔しさをにじませた。
12チーム中10位のボアルース長野が、3位のペスカドーラ町田を迎えた一戦。町田が外国籍GKビゴージと日本代表の甲斐稜人を出場停止で欠く傍ら、ボアルースはそれ以上の打撃を食らっていた。
キャプテンの三笠貴史、エースの上林快人、そして新戦力の野口茅斗。これまで主軸を担ってきた3人が、体調不良によって欠場を強いられたのだ。

「主力を欠く中でも身体を張って、技術、戦術の前に泥くさく戦う。このクラブがずっと大事にしてきたものを出さないと、試合にはならないと思っていた」
三笠に代わってキャプテンマークを巻き、本職のアラ(サッカーのサイドハーフに相当)からフィクソ(同センターバック)に移った松永。山蔦一弘監督は主力不在の中、33歳の副キャプテンに全幅の信頼を置いた。
「今週は松永(翔)をフィクソに置いて、キャプテンマークも巻いてもらった。彼は自分に矢印を向けてプレーし切れる選手なので、良くないときは彼の背中を見るという意味も込めて、彼にフィクソとキャプテンを任せた。そこはすごく良かったと思う」

ピヴォ(同FW)の森岡薫に対して真っ向勝負を披露。今季限りで引退する46歳の“キング”に「めちゃくちゃ身体が強かった」と舌を巻きつつ、自由だけは与えない。ピヴォ当てのパスを奪ってそのままシュートにも持ち込んだ。
チームは立ち上がりに3点を先取。エースの上林が不在の中、代わってピヴォに入った今野遼介が流れを引き寄せる。左足関節三角靱帯損傷および遊離体から復帰した渡辺大輔も、持ち前のハードワークで活気づけた。

その後も押し込まれる展開が続く中、残り2分まで1点のリードを保つ。35分には自陣でのボールロストからカウンターを受けたが、松永が身体を張ってカバー。味方のミスを助けたまま足をつって交代したが、しばらくしてピッチに戻ってきた。
最後はパワープレー(GKをフィールドプレーヤーに代えての全員攻撃)に屈して3-3と引き分けたが、上位相手に堂々の勝ち点1。松永は非常事態を乗り越えられた――と胸を張る。

「ピッチに出ている選手もベンチで見ている選手も、一丸となって戦えた。それをなくして勝ち点1は取れなかったので、その姿勢は讃えていいと思う。来週以降、みんなが戻ってきたときにも同じものを出せれば、もっと良い戦いができるんじゃないか」
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「今までの歴史になかったもの」
若手もベテランも泥くさく競争
勝ち点1という数字以上に、大きな意義があった。
エースやキャプテンが不在の中でも、「できることは100%やってくれた」と山蔦監督。彼らが試合に間に合う状況ではありながら、町田に対してベストな14人をぶつけ、総力で勝ち点1をつかんだ。
以前の取材に対し、在籍3年目のキャプテン三笠は「今までにない競争力がある」と手応えを口にしていた。それは三笠に限らず、在籍7年目の最古参・松永も感じている様子だ。

「僕はもう7年もこのチームにいるけど、そういうエネルギーは今までのボアルースの歴史になかったもの。試合に出ていない選手もエネルギッシュだし、石川(昇永)なんて出たらすごく良いプレーをしている」
松永が名を挙げた石川は、城西大学体育館サッカー部・フットサル部門から加わったルーキー。この日も持ち前の守備で活力を与え、強気な縦突破から3点目をアシストした。気合いが空回りしてファウルカウントも重ねたが、それもご愛嬌だ。

「エネルギー」を充満させるのは、何も若手だけではない。最年長の40歳・田中智基をはじめ、ベテランも泥くさく戦うのが信条。田中とプライベートでの交友が深い松永も、その振る舞いから刺激を得ている。
「練習からめちゃくちゃ走るし、練習以外にもものすごく追い込んでいる。40歳の智基さんがそうやっているのに、33歳の僕が手を抜くわけにはいかない。僕がやっていたら20代の選手を手を抜くわけにはいかないだろうし、自分たちの姿勢がすごく大事だと思う」

「自分はとにかく走って、戦って…。そういう泥くささをなくしてしまったら、ここにいる意味はない。年齢的にはベテランだけど、がむしゃらに。それはやめる日まで続けないといけない」
最古参の松永のプレーが、何よりもボアルースらしさを象徴している。
元気印の大卒ルーキー・石川昇永
物怖じしない姿勢で「和を乱す」
23歳の“元気印”も、紅き血をたぎらせている。
「シーズンの最初に『若手が全然ダメだ』と言われて、シーズン途中の監督との面談でも『このままじゃダメだ』と言われてきた。心に刺さるものがあったし、『絶対にかましてやろう』という気持ちでいた」

そう話すのは、チーム最年少の石川。吉田怜生、浅田琉星とともに大卒1年目で苦しんできたが、終盤戦にかけて山蔦監督の信頼を勝ち取りつつある。
「彼のストロングは物怖じしないメンタル。それはチームのエネルギーになるし、少しずつやるべきことも整理されて今がある。フットサルとの向き合い方次第で、いつ中心選手になってもおかしくない」
お調子者な性格の石川。本人の言葉を借りれば、良い意味で「和を乱す」存在だ。町田戦は軽率なファウルが続いて山蔦監督の叱りも受けたが、その背景には「自分が戦ってみんなを引っ張りたい」という思いがあった。

前節のY.S.C.C.横浜戦では出番が一度しかなく、何もできないまま終わった。今節は主力を複数人欠く中、スタンドで見守った野口から「お前は大丈夫だからやってこい」とエールを受け、3点目の強気な縦突破に繋がった。
城西大の先輩である稲葉柊斗も含め、彼には背中を押してくれる先輩がいる。周囲に認められているからこそ、物怖じすることはない。その気概がチームにも乗り移り、良い相乗効果が生まれている。
「なかなか試合に出られていない中でも、主力選手にプレッシャーを与えられたと思う。これで練習の強度ももう一段階上がると思うし、とにかく続けてやっていきたい」

ピッチを“翔”け抜ける最古参の松永翔と、“昇”りゆく最年少の石川昇永――。彼らに限らず、誰が出てもボアルースはボアルースだ。
レギュラーシーズンは残り2試合。12チーム中10位で、下位2チームとの勝ち点差は2に開いた。11位以内の残留圏を維持したまま、勝負のファイナルシーズンを迎えたい。
クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/
















