先発からメンバー外へ 松本山雅のGK小林将天が見つめる現在と未来

2026年8月22日。J3松本山雅FCで開幕からゴールマウスを守り続けてきた20歳は、サンプロ アルウィンのスタンドから試合を見つめていた。ケガではない。判断や技術のミスが失点に直結するプレーが重なり、公式戦4試合目にしてポジションを失った。J1のFC東京から育成型期限付き移籍で今季加入したGK小林将天。通常、最低でも1人が交代要員としてベンチに入ることを考えれば、先発からのメンバー外は“2段落ち”と言える。9月のアジア大会に出場するU-21日本代表にも選出された逸材は、どんな思いを抱き、どんな未来を見ているのか。膝を突き合わせた。
文:板倉 就五
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新天地で迎えたプロデビュー
緊張で崩れた心身のバランス
松本山雅FCには2種登録選手を除いて4人のGKが在籍している。
小林将天は唯一の新戦力で、キム・ジュンヒョンと同学年の最年少だ。FC東京のアカデミーからトップチーム昇格を果たしたが、厚い選手層に阻まれ、昨季までプロでの公式戦出場はゼロ。GKとして独り立ちするためには欠かせない試合経験を積むため、FC東京より2カテゴリー下の松本山雅での武者修行を決断した。

昨季の百年構想リーグでは、33歳の富澤雅也が12試合、26歳の高麗稜太が9試合に出場(ハーフタイムに富澤から高麗に交代した1試合を含む)。経験値や安定感では年長の2人に分がある。
小林の持ち味は、アグレッシブな姿勢を生かした守備範囲の広さとシュートストップのうまさ。性格は「マイペース」(高麗)だが、指導陣やチームメイトからの言葉に耳を傾けるオープンマインドの精神を持っている。

松本山雅に合流後、積極的に技術を吸収しながら自分自身の持ち味もアピール。潜在能力と将来性を評価した古川昌明GKコーチの推挙を石崎信弘監督が受け止め、今季初の公式戦となった8月2日の長野県選手権決勝のスターティングメンバーに抜擢した。
同じJ3のAC長野パルセイロとサンプロ アルウィンで対戦する決勝前夜。小林は経験したことのない緊張に戸惑った。心は平静でいるつもりだったが、身体が言うことを聞かない。寝ようと思っても寝付けず、「ドキドキという鼓動がずっと聞こえていた」。その緊張は、翌日の試合で悪い方に出た。

10分、相手のプレスに押されたDFラインが小林へバックパス。小林もプレスを受け、苦しい体勢から右サイドの味方にフィードしたボールが低くなった。
相手に渡ったボールからカウンターを受けて失点。0-1のまま迎えた91分には、小林が処理できるエリアに送られた相手のロングボールに対して味方との連係を欠き、決定的な追加点を奪われた。

屈辱的な敗戦にスタンドからはブーイングが起きた。石﨑監督は試合後の記者会見で「初歩的な大きなミスが失点につながった」と指摘した。
涙で目を腫らした小林は「ミスをすれば厳しく言われる。そういう世界だと分かっている」とプロデビュー戦を振り返る。
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開幕戦で見せたビッグセーブ
第2節では再び失点招くミス
8月8日のJ3リーグ開幕戦。アウェイで高知ユナイテッドSCと当たった試合でも、石﨑監督は小林を起用した。

押し込みながら決定機を生かせず、0-0で迎えた69分。この試合最大のピンチを迎える。自陣左サイドを突破され、背走するDFラインとGKの間に低いクロスを流し込まれる。ゴール前に飛び込む相手は、ニアに1人、ファーに1人。同じシチュエーションは、古川GKコーチによる練習で経験していた。
ニアに食い付かず、ゴールマウスで我慢。ファーに流れたボールに対して果敢に前進し、身体ごと相手を潰して決定機を逃れた。最終的にスコアレスドローだったことを思えば、小林のビッグセーブが最悪の結果を防いだと言える。

しかし、チームも小林も、高知戦の結果と内容を浮上のきっかけにできなかった。辛辣な言い方をすれば、続く第2節のレイラック滋賀FC戦で見せた小林の不安定なプレーが、チームの足枷になった。
1-0で迎えた51分。セットプレーの2次攻撃からゴール前に送られたクロスをキャッチしようと前に出た。しかし、「落下地点を読み違えた」ため処理できず、そのままファーにこぼれる。これを蹴り出そうとしたMF安永玲央が相手を蹴る形となってPKを与え、追いつかれた。

1点を勝ち越された直後の78分。DFラインの背後に送られた縦パスをクリアしようとペナルティーエリアを飛び出したが、ヘディングが相手に当たり、ガラ空きとなったゴールに決定的な3点目を決められた。チームが公式戦3試合で喫した計5失点のうち4失点に小林のミスが絡んだ。
そして、8月22日の第3節、愛媛FC戦のメンバー表に小林の名前はなかった。
「ここで終わらせたらダメ」
再起を誓って前に進むのみ
愛媛戦の翌日、大学生との練習試合を終えた小林を呼び止め、話を聞いた。

「結果が伴わなかったので、交代させられることはプロとして当然だと思う」。まぶしいほどのLEDが照らすピッチとは対照的に、暗いスタンドに座って観戦した愛媛戦は「悔しい気持ちいっぱいで見ていた」と唇をかむ。
現実を受け止め、課題や力不足を直視しようと苦しむ胸の内が伝わってくる。

「でも…」と言葉を継ごうとした小林の切れ長の瞳に、鋭い光が差す。
「ここで終わらせたらダメだと思う。滋賀戦の失点は、自分の特長を出しながら積極的にプレーした結果のミスだったので、長野戦の失点とは別物だと思っている。僕のミスでゲームを崩してしまったことは、チームにも応援してくれるサポーターにも申し訳なくて悔しいけれど、“ただいるだけ”のGKにはなりたくない。このミスをどう改善して、次に巡ってきたチャンスで成功させてチームを勝ちに導けるか。そのために(練習を)継続するだけ」

育成型期限付き移籍は、若手選手の出場機会を増やして成長を促すJリーグの制度。小林の所属元はFC東京で、現在の契約で松本山雅でプレーするのは2027年6月末までだ。
「松本を、自分の成長の踏み台にしようなんていう気持ちは1ミリもない。このチームで結果を出さなければ(選手として)終わりだと思っている。このチームを本気でJ2に昇格させようという気持ちでやっている」

そう言葉に力を込め、クラブハウスに引き揚げた小林。サンプロ アルウィンのサポーターに、一回りも二回りも成長した背番号31の姿を示す日を信じて、明日からも前を向いて進む。
松本山雅FCオフィシャルサイト
https://www.yamaga-fc.com/


















