菌が結んだ“奇跡の絆” AC長野のホクトと水戸のタカノフーズが共創コラボ

きのこと納豆の共演――。2026年9月9日にJ3のAC長野パルセイロがJ1の水戸ホーリーホックを長野Uスタジアムに迎えるルヴァンカップ2回戦で、大手食品メーカー同士のコラボレーションが実現する。AC長野のユニフォームスポンサーであるきのこ生産・販売のホクト(長野市)と、水戸のサプライヤーである納豆メーカーのタカノフーズ(茨城県小美玉市)が手を組み、地域・クラブ横断型の新たな企業連携を展開する。その全貌を担当者の声とともに掘り下げる。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
きのこと納豆が生む「菌」の絆
地域とクラブを横断した連携へ
きっかけは何気ない会話だった。
AC長野パルセイロの市原侑祐取締役副社長と、ホクトのマーケティング課担当(以下、エリンギくん)が情報交換をしていたところ、話題はルヴァンカップに。J1の水戸ホーリーホックとの対戦が見込まれており、互いに胸を躍らせた。

昨年まで8年間水戸に在籍していた市原副社長は、クラブ視点で「何かできないか」と頭を巡らせてきた。その思いを汲み取ったエリンギくんも、パートナー (スポンサー)視点で「水戸に関わる企業はどこか」と思案。思い浮かんだのがタカノフーズだった。
ホクトとタカノフーズは、折よく企業間連携を図っていた。7月10日は「納豆の日」で、ホクトにとっては「ブナピーの日」でもある。「何か一緒にやりましょう」と販売促進の協力をしていた中で、ルヴァンカップでのコラボも提案。快諾を得たという。

ホクトとタカノフーズ、AC長野パルセイロと水戸ホーリーホック。いわば“4者間連携”という形となったが、水戸ともタカノフーズとも親交が深い市原副社長の存在もあって、企画はスムーズに進んだ。
ホクトの「きのこ(菌類)」と、タカノフーズの「納豆(納豆菌)」。2つの菌を掛け合わせ、「ホクト×タカノフーズ presents 菌勝マッチ」と銘打った。
当日は両社のマスコットが登場し、商品贈呈セレモニーを行う予定。クラブの公式X上でもキャンペーンを実施し、抽選で商品詰め合わせをプレゼントする。
2つの菌が“善玉菌”として働き、地域・クラブ横断型の新たな企業連携モデルを生んだ。
KINGDOM パートナー
「視点を変えないといけない」
広告露出だけではない価値を
これまでも「ホクトPresents〜」というように、企業名を掲げた冠マッチは催してきた。とはいえ、単なる広告露出の機会に過ぎなかったことも事実。市原副社長は「もっと視点を変えないといけない」と感じていた。
「我々クラブが考えなければいけないのは、企業の広告露出だけでなく、どうやって価値を高めるか。幸いにも長野にはメディアの力があるので、その力を借りて世の中に価値を発信できれば、冠マッチやパートナーシップのあり方も変わっていくと思う」

当日はテレビ局の密着取材を予定。X上でのキャンペーンにおいても、15万人のフォロワーを持つタカノフーズの発信力を借りられる。4者間連携にメディアの力も掛け合わせ、企業の価値を高める算段だ。
近年はクラブの成績が下降し、パートナー側からすればスポンサードの価値を見出しづらい側面もあった。その価値を再定義する意味でも大きな一歩だと、エリンギくんは捉えている。
「(ホクト)社長の水野雅義が『強くあれ』と言うように、強さに勝る影響力はない。けれど、お金と成績だけの繋がりではなく、地域やクラブに関わる皆さんとともにパートナーとして歩んでいきたい。いろんな応援の形を広げていけたら」
そんな話を市原副社長としていた最中に、今回の企画が生まれたという。
「共創」の事例を増やし
「競争」の価値を高める
マーケティング課に所属するエリンギくんは、いちサポーターとしてAC長野の応援に駆けつけている。昨季の百年構想リーグでは札幌市にも足を運ぶなど、クラブ愛は筋金入りだ。
きっかけはJリーグの冠スポンサーである明治安田生命だった。同社が開催する「明治安田Jリーグウォーキング」に参加し、長野Uスタジアムで試合を観戦。ホームの雰囲気に魅了され、気づけばアウェイにも駆けつけるようになった。
明治安田がAC長野と出合わせてくれたように、ホクトとしてもクラブと“誰か”が出合うきっかけになりたい――。今回のコラボにも「もしかしたらきのこや納豆が好きな人が、地元のクラブに興味を持ってくれるかもしれない」と思いを込めている。

昨年まで水戸に在籍していた市原副社長にとっても、強い思い入れがある。
「対戦できるだけでも嬉しいし、水戸でタカノフーズさんを担当している眞田光一郎・営業部ディレクターは、同じ日に入社した間柄でもある。そんな戦友たちと再会できて、お世話になったタカノフーズさんともコラボできる。奇跡的な縁が重なっていると思う」
試合は相手との「競争」だが、ステイクホルダー(利害関係者)と作る空間は「共創」であると、市原副社長は言う。「こうして共創の事例をたくさん作ることが、競争の価値を高めることにも繋がると思う」。それは水戸がJ2からJ1に駆け上がる過程でも実践してきたことだ。

クラブがハブとなり、パートナーの価値を高めていく――。菌と菌の結びつきが、今後のパートナーシップのあり方を変えるかもしれない。
クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/





















