V連覇からSVグロース初代女王へ “開花のとき”を夢見て、信州Ariesは根を張る

より深く、広く根を張る。幹を太くして咲き誇り、地域の未来を照らす――。“開花”への力を蓄えるシーズンが、2026年10月17日にスタートする。Vリーグ女子を連覇し、新設されたSVグロース女子で「初代女王&3連覇」に挑むルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズ。難しさを増したリーグを勝ち抜いていくために、どんな準備が進んでいるのか。知事表敬訪問と壮行会の言葉から、そのタクティクスを浮き彫りにする。

取材:大枝 令、大枝 史

「現状維持」はすなわち「衰退」
ラストピースも埋まって開幕へ

「今シーズンは3連覇が懸かる大きなシーズン。選手たちは努力を重ねて、昨シーズンよりも1回りも2回りもパワーアップして、バレーボールを楽しみながら、さらに強いチームになれるよう努力を続けている」

2026年9月26日、アリオ上田1階の吹き抜け「太陽のコート」。シーズン壮行会の場で、信州Ariesの成田郁久美監督は力を込めた。

今季のスローガンは「Never Settle-心火し続ける-」。チームは「現状に満足しない」と意味を添え、「進化」「新化」「真価」「深化」「心火」の5つの“シンカ”を掲げた。キャプテンの西村美海は壮行会で、その言葉をなぞるように誓った。

「圧倒的な力と、どんな状況でも現状に満足しない貪欲さを持って、リーグを通して成長できるチームになりたい」

現状維持はすなわち、衰退を意味する。

連覇を重ねたことで、見える景色も変わった。壮行会から9日前、チームは阿部守一・長野県知事を表敬訪問。その場で、成田監督は「追われる立場になった。勝っているからいいのではなく、さらに進化して、より強いチームを目指してきた」と語っている。

“進化”の基準は、1つ上のカテゴリーに置いた。国内最高峰のSVリーグだ。将来的にそのステージで戦うことを念頭に置き、より高い水準を要求。実際にSVリーグのクラブと練習試合などを重ねてきた。昨季の優勝後はSVリーグのチームから声がかかる機会も増えたという。

もちろん、先方はフルスペックではない。それでも、得るものは大きかった。

「まだSVのチームも外国籍選手や日本代表選手がいない中での戦いだった。それでもレベルの高い相手と練習試合ができたのは、チームにとってすごくプラス。今季取り組んできたことは、ある程度形になってきている手応えがある」

ラストピースも埋まった。キューバ出身のオポジット(OP)リアネット・ガルシア。身長188cmで、中国やトルコなどでプレーしてきた21歳だ。合流は9月16日。壮行会の壇上では、日本語で「リアです。頑張ります」と、短い言葉に決意を込めた。

同じ相手と6〜8回当たるリーグ
勝ち抜くために必要な戦術とは

戦いの舞台も昨季までとは異なる。SVグロース女子は6クラブ。レギュラーシーズンは10月17日から来年3月14日までの32試合で、上位2クラブがプレーオフに進む。

対戦相手は5クラブしかない。リガーレ仙台、岐阜リオレーナ、ブレス浜松、カノアラウレアーズ福岡、フォレストリーヴズ熊本。基本は各6試合で、岐阜とは8試合を戦う。知事表敬で、指揮官は「リーグが再編され、実質上位のチームだけのリーグ。簡単に勝てる試合は少なくなる」と見通していた。

何度も顔を合わせる相手に、手の内は隠しきれない。その中で、どう勝ち星を積み重ねていくか――。成田監督のアンサーは、布陣を固定しないことだった。

「一つのチームと当たる回数が多いので、戦略として全ての選手を使っていかないといけない」

「選手一人一人には『自分ができるプレーの幅を広げてほしい』と伝えていて、2つのポジションを練習してもらっている選手もいる。固定するのではなく、文字通り全員がどういう場面でも活躍できるチームを目指してきた」

その考え方は、選手の言葉にも表れている。副キャプテンのリベロ (L)佐藤未羽は、知事表敬でチームの強みをこう語った。

「どの選手が出ても同じぐらい強いチームとして戦えるのが私たちの強み。誰か一人というより、一人一人に注目してほしい」

壮行会での自己紹介を聞くと、層の厚さは顔ぶれにも表れる。アウトサイドヒッター(OH)田中瑠奈と目黒愛梨のSV経験者2人だけでなく、今季新たにAstemoリヴァーレ茨城からOH高間来瞳、アランマーレ山形(当時)からOH前田美紅が、ともにSVリーグから加入。高間は「このチームで初めてのシーズン。いろいろなことを学んでいきたい」と話した。

ミドルブロッカー(MB)山村涼香は、昨季アタック決定率とブロックの2部門を制してベスト6にも選ばれた中核選手。アキレス腱手術からのリハビリ途中にあり、壮行会では「まずはプレーをしっかり戻して、コートにまた戻れるように頑張る」と前を向いた。

誰か一人に頼らず、誰が出ても戦える。成田監督は「新戦力を迎えたことはプラスだけれど、既存の選手がしっかり成長することが一番大事」とも話す。6クラブのリーグを勝ち抜く布陣は、チーム全体を底上げした先に見えてくる。

県庁知事室でも上田アリオでも
“広く、深く”根を張る営み続く

コートの外に目を移すと、今季のチームは2つの方向に根を伸ばしている。1つは信州全体へ“広く”、もう1つはお膝元の上田に“深く”だ。

“広く”の場面を象徴する一つが、9月17日の知事表敬だった。関由美江・代表責任者は昨季の戦績報告から切り出すと、すぐその外側に主語を広げた。

「行政、企業、地域と連携して、試合に勝つだけではない、それ以上の価値を作っていく。地域から支持され、地域に欠かせない存在になりたい」

応接室に並んだ選手には、県内出身者が3人。岡谷市出身のセッター(S)横田実穂、千曲市出身のオポジット(OP)上島彩季、そして長野市出身の前田。中でも横田は2020年に加わった最古参で、今季が7年目。昨季プレーオフではMVPに選ばれ、今季は副キャプテンを務める。

知事の前で語ったのは、成績ではなく周囲の変化だった。

「長野県出身として7年目になるけれど、年々、私たちを応援してくださる方が増えているのを実感している。その方たちのパワーを感じながらバレーボールができている」

加入から何度となく入れ替え戦で阻まれてもきたが、歳月を重ねながら増えたのは勝ち星だけではない。そう言えるのは7年間、熱源の中心から広がりを実感してきたからだ。

“深く”の場面が、9日後の壮行会だった。選手たちは「上田の体育館に熱源がある」ことを前提に、その熱を少しでも伝播させようと訴えた。

例えばホームの上田市自然運動公園総合体育館へは、上田電鉄別所線の大学前駅が最寄りであること。ホームゲームは全16試合で、試合ごとに1人の選手を主役にする「Fandom Day」を開き、特別席「Fandom Seat」を設けること。

そして10月24日のホーム開幕戦は「JOIN US! UEDA DAY」として、上田市在住者を2階自由席に先着500人まで無料で招くこと。コート発のエネルギーを地域の活力へと変換するために講じた、さまざまな取り組みがある。

今季のスローガンには、「真価」の意味として「地域貢献などチームとしての価値を求める」とも書かれている。チームが掲げる目標は「Growth初代女王&3連覇~入れ替え戦で勝ち切れるチームになる~」。勝ち切る力は、コートの中だけで培われるものではない。

ホーム初戦は10月24-25日、上田市自然運動公園総合体育館で行われる。より広く、より深く――。上田から張った根を、どこまで伸ばせるか。その営みの連続が全て、“桜満開”の大団円へとつながっていく。


チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/team/shinshua/

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