サトタクNavigates バスケット・ラビリンス(7)「終盤戦でカギとなる攻守のポイント」

バスケットボールは豪快で派手なプレーが目を引く一方、コート上の戦術面に目を向けると非常に繊細で難解でもある。信州ブレイブウォリアーズはどんなバスケットを目指していて、現在地はどこなのか――。2018年から3シーズン、勝久マイケルHCの元でプレーした佐藤託矢がナビゲートする。7回目はレギュラーシーズン終盤戦に向かうチームの現状などについて解説する。
構成:芋川 史貴、大枝 令
ディフェンスの完成度に疑問符
要所でのミスも勝敗に響いて苦戦
早いものでB2リーグは全60試合中43試合を消化し、2月28日時点で残すは17試合のみとなった。信州の成績は29勝14敗で東地区の2位。正直に言うと、シーズンを通して思ったよりも試合を落としているように感じる。
そして負けた試合の内容を見ると、負ける原因も「要所での得点力不足」「要所でのディフェンスエラー」「要所でのターンオーバー」など、とにかく勝負どころでまだまだ弱い印象だ。

勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)がしばしば敗戦後のコメントで「自ら手綱を放すような…」と表現する通り、40分間のうち35分間は良かったとしても、残り5分でバタバタと崩れてしまう。
とりわけ、チームのアイデンティティでもあるディフェンス面が気がかりだ。コミュニケーションがまだまだ足りず、2月23日の静岡戦GAME2でも得点を簡単に許すシーンも見られた。

バスケットボールはオフェンスもそうだが、ディフェンスこそコミュニケーションを必要とする。
誰がどこを守っているのか、相手のスクリーンはどの向きにかけてくるのか、オフボールの選手がどう動いているのか――。
相手が仕掛けてきたことに対して一つ一つを瞬時に把握し、声を掛け合ってゴールを守る。その際に重要になってくるのは最深部を守るセンターポジションの選手だ。

大黒柱のウェイン・マーシャルはミスをほぼしない。正しいポジショニングで、後ろから指示を出しつつ、ゴールの番人として相手に立ちはだかる。
だからと言ってチーム全体が完璧というわけではないが、マーシャルが交代した時のチームディフェンスの精度はまだまだ低い。

一切の妥協も許さない勝久HCのことだから、試合前後や練習中のミーティングで再三改善を図ろうとしているはずだが、それがあまり改善されていないように感じる。
ディフェンスは誰が出ても同じ強度が求められる。その波をなくしていくことが、今後の試合では間違いなくカギとなるだろう。
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日々成長と勢いが必要な終盤戦
石川、生原らガード陣がカギ握る
当然オフェンスも試合の流れをつかむ上で重要な要素。良いディフェンスから得点が決まれば一気に流れを引き寄せる。
しかし、オフェンスもまだまだ不安定だ。要所でのターンオーバーも目立つし、誰がゴールを狙うのかが、明確ではない時間帯もある。ましてや、ビハインドで迎えた終盤の時間帯はシュートセレクションが悪くなっている課題も散見される。

どのようにクリエイトして流れを引き寄せるのか。その命綱を握るのは石川海斗と生原秀将の司令塔コンビだ。
石川の活躍はチームの調子にも直結する。持ち前の得点力を生かしてチームを引っ張っていってほしい。生原は身体を張ってハッスルすることを得意とするほかゲームコントロールにも長けプレータイムを伸ばしていってほしい。

そこを支えるウィング陣のエリエット・ドンリーやアキ・チェンバースが調子を上げてきているのも面白い。
プレーオフに向けた熾烈な争い
強豪との連戦でチームを磨く局面
この時期になるとプレーオフの影がチラついてくる。もちろん勝久HCと選手たちは目の前の試合に一点集中しているし、現段階ではまだプレーオフへの出場も決まっていない。ただ、外野が確認しておくことに特段の問題はないだろう。

17試合を残して東地区3位の富山とは2ゲーム差。ワイルドカード上位の福井とは4ゲーム差。いつ順位が入れ替わってもおかしくない群雄割拠の状態にある。
その中で選手ができることは、やはり目の前の試合に集中して勝つこと。1試合ごとに成長をしていくこと。それに尽きる。

今回も辛口なコメントが続いたが、ここからの試合はより重要度が目に見えてくる。ブースターのみなさんもより気合が入ってくるのではないだろうか。
日々成長して、笑ってシーズンを終われるように、まずは3月1-2日のホームで福井ブローウィンズ相手にしっかりと2勝を積み上げて、成長を示していきたい。

PROFILE
佐藤 託矢(さとう・たくや) 1983年8月25日生まれ、大阪府出身。東住吉工高(現・東住吉総合高)時代はウインターカップ、インターハイともに4強を経験し、青山学院大ではインカレ準優勝。卒業後は当時JBLの三菱電機からスタートし、千葉ジェッツ、京都ハンナリーズなどを経て2018〜21年に信州でプレーした。引退後はクラブの「信州ふるさと大使」となり、今季からはアカデミースーパーバイザーも兼任。「ど素人バスケ」と出張型パーソナルトレーナーを自主事業とするほか、養護学校などでのボランティア活動も実施している。好きなおつまみは梅水晶。
ホームゲーム情報(3月1-2日、福井ブローウィンズ戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20250301_20250302/
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/