“最年長44歳のレジェンド”松本慶彦 故郷のクラブで現役続行した理由は

VC長野トライデンツが2025年6月6日、新入団選手を発表した。このうち日本人選手2人はすでにチームとの顔合わせを済ませており、5日のキックオフミーティングにも出席。同時に新加入の意気込みやこれまでの来歴などをインタビューした。第1回は、国内バレーボール界最年長44歳・松本慶彦の一問一答をお届けする。
(2025年6月6日14:25修正)
取材:大枝 令
KINGDOM パートナー
緊張感を持った勝負強い集団に
自身はルーキーの心でまず競争へ
――VC長野に入団した経緯などを教えてください。
「現役にこだわった」という部分が大きいです。
もちろん(日鉄)堺(BZ)さんでもコーチ専任などの選択肢をいただいてはいたんですが、いろいろなことを天秤にかけた結果、「現役をやっぱりやりたい」という気持ちがありました。
あとはやはり、地元にSVリーグのチームがある環境でまた頑張りたいという気持ちが大きかったです。
コーチという方向になると、現役のいち選手としてはそこでピリオドという形にはなります。シーズンが進んでいく中でそういう気持ちも全くなかったわけではなかったのですが、どうするかを最終的に自分で決めました。
――現役にこだわる理由について、どんなモチベーションがあるのでしょうか?
どのぐらいだろう…400試合の時とか、その当時の日本記録をどんどん塗り替えてはきたんですけど、自分の中でそれに挑戦できるのも自分だけです。もちろんプレー(のクオリティ)が一番ですけど、積み重ねてきたものがあります。
スパイクやブロックの数字のように、そのシーズンだけ良くて伸びていく数字ではないので、できるだけ挑戦し続けたい思いがありました。
――その前提として、身体がしっかり動くという自信があるのですね。
もちろんバリバリにピークで動いたときに比べると、衰えている部分も出てきてはいます。そこはしっかり技術などでカバーしていくしかないのでしっかりやっていきます。
あとは今まで自分が経験してきたことをこの新しいチームに伝えたいと思います。若い選手も多いですし、そうやってより上位に食い込めるようなチームになっていけたらという思いもあります。
――外から見ていて、VC長野の成長や昨季の戦いぶりはどう映っていましたか?
もうやっぱり、他のチームとは違う見方をしていました。地元だし、頑張ってほしいというか。「頑張れ、頑張れ」と思っていました(笑)。
昨シーズンも10勝して、2桁勝利は初めてだったと思います。すごく粘り強いディフェンスと、ハイボールの処理に関してもその前のシーズンに比べるとかなり良くなっていた印象があります。
サーブもストロングサーバーがしっかり勝負できるところはしていたし、その中でも緩急をつけながらけっこうサーブで揺さぶっていた場面が多かった印象があります。
――その中で選手として、最年長の立場として、具体的にどのようなものを還元したいですか?
チームの練習環境はいろいろあると思うんですが、その中でも(VC長野は)限られた時間でしか練習できないと思います。
その中でどれだけ技術だったりチーム力だったりをどう上げていけるか――はかなりカギになります。
練習も長くやればいいというものでもないし、やる時はしっかりとお互いに厳しさを持ってやることが大事。馴れ合いにならないように、という部分は意識したいと思っています。
やはりトップのリーグでプレーしている、というプライドがないといけません。学生ではなく全員が成人した大人たちなので、しっかりと相手の意見を聞いて尊重しつつ、高い意識でベクトルを束ねていきたいです。
――外国籍選手はまた違うアプローチが必要になってくるのではないでしょうか?
やはり外国籍選手は文化が違うので、どうしても我々がやろうとする雰囲気作りだったりにはうまくハマらないこともあります。彼らには彼らのやり方があるので、そこをあまり頭ごなしに「全部やれ」というのではなく、やはり尊重していきたいです。
もちろんそれで自分のパフォーマンスが発揮できるのであれば全然いいですが、それがストレスになってパフォーマンスが出ないのであれば、100%を発揮できるような働きかけをする必要もあります。
それも仕事だと思っているので、外国籍選手にもしっかりアプローチをしながらやっていけたらと思っています。
――そうして緊張感を持った集団にする意義は、どのような部分に感じますか?
勝負事なのでもちろん大事な数字もあるはあるんですけど、「ここで1点取るか取られるか」というとこの勝負どころは意外と数字じゃなかったりする側面もあります。
「相手と勝負している」という駆け引きの部分で、チーム全体が緊張感を持ちながら楽しめればいいかなと思っています。
――選手からすれば最も身近なコーチングスタッフのような選手であり、指導陣からすると最も身近な選手でもあります。
やっぱり難しいです(笑)。選手側の気持ちももちろんわかりますし、スタッフの方の気持ちもわかるので。どこの組織でも一緒だと思いますが、選手の立場で発言する場面もあれば、スタッフ側の立場に立たなきゃいけない時も多分あると思います。
「どっちもわかる」で終わってしまうと一番中途半端になってしまうので、やはりそこは自分の意見を「どちら側で言っているのか」をしっかりさせたいと思っています。
――長年在籍した日鉄堺BZから移籍して初めてのシーズンとなります。どんなシーズンにしたいか、思い描いているものを教えてください。
一番は今の自分のプレーをしっかり発揮し切るところ。まずはパフォーマンスをしっかり出す必要があります。
それと同じぐらい、なんとか昨シーズンの10勝以上を目指していきたいし、より上位に食い込んでいけるチームにしたい。少しでも上に行けるようにチームに働きかけていきたいです。
――パフォーマンスを示してこそ、言葉の説得力が増す側面もあると思います。その意味ではまず競争ですね。
ここでは僕のプレーを知らない人の方が多いと思うので、一からしっかりとプレーで示すようにする必要があります。(年齢は)関係なしに一から競争です。気持ちはルーキーのつもりでやっていきます。
松本慶彦 2024-25 SVリーグ男子 個人成績
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