新たな“切り札”飯田孝雅&赤星伸城 リリーフサーバーが底上げするチーム力

SVリーグ男子で重要視されるサーブ。その中でVC長野トライデンツのリリーフサーバーとして存在感を際立たせているのがオポジット(OP)飯田孝雅とセッター(S)赤星伸城だ。「一人一人が役割をしっかりと全うすることが大事」という川村慎二監督の言葉を体現するように、自らの役割を明確にしている2人にフォーカス。安田瑛亮コーチの分析も加味しながら、次節の東レ静岡戦を展望する。

文:大枝 史 /編集:大枝 令

リリーフサーバーの矜持
準備が生む12.9%の切り札

“切り札”と言っても差し支えないだろう。

試合終盤に登場し、左腕から放たれる強烈なサーブは相手にとって脅威となる。

「この3週間は個人的にも手応えは確実にあるし、数字的にも満足している」と話すのは、リリーフサーバーでひときわ存在感を放っているオポジット(OP)飯田孝雅だ。

本人が手応えを感じているように、SVリーグ男子3節を終えてサーブ効果率は12.9%と高い数字。昨シーズンは主にOPウルリック・ダール(日鉄堺BZ)の不調時や2枚替えなどで登場していたが、今シーズンはまずサーブで示す。

「『一人一人が役割を』という話がある中で、僕は求められているものがハッキリしている。それに対して準備もしてきたし、コートに入ったらそれを出す自信もあった」

その準備はシーズン前から続けてきた。

本来、OPはスパイクを打って決め切ることが求められるポジションでもある。

「今年はマット(マシュー・ニーブス)が来て、セカンドで酒井が入るみたいな感じで、僕が必要なのは何か…と考えたらサーブしかなかった」

OPはニーブス、酒井秀輔とのポジション争いがある中で、自らサーブにフォーカスして取り組んできた。練習ゲームでもサーブを打つだけで終わる週もあったと明かす。

「前の人がミスした後でも良いサーブが打てるように、練習からプレッシャーを与えてやっていた」

安田瑛亮コーチはそう明かす。

リリーフサーバーでの出場を想定してチームでも準備をしてきた。「試合でも練習の通りにしっかり結果を残してくれている。オポジットで出ても良い働きをしてくれていたので、今のチームにとって欠かせない」と活躍を評価する。

飯田がしてきた準備はそれだけに留まらない。

「僕が意識したのは、練習試合中に空いているコートで練習するのではなく、逆に何も動かないこと。試合の身体は練習でできている身体じゃない」

試合中のベンチでは動ける範囲も広くはない。試合の終盤になると、身体を良い状態に保つのは難しい。有賀康大S&Cトレーナーと相談しながら、狭いエリアでできる身体の温め方や身体を試合に近付ける方法を模索してきた。

リリーフサーバーとして出場することを想定し、入念に準備してきた結果が今の数字に表れている。

経験を還元してチームの力に
赤星から飯田へのアドバイス

その飯田にアドバイスを送っているのがセッター(S)赤星伸城だ。

「ジャンプサーブがあまり得意ではなくて、高校時代から始めた」という、ハイブリッドサーブの使い手。フローターサーブのトスから、強弱をつけて相手の目線を惑わせる。

そのサーブが重宝され、2022-24年に在籍した日鉄堺BZ時代は主にリリーフサーバーでの起用が多かった。

「試合と似た状況を作って練習から打とう」

赤星が飯田にそう話したのがきっかけとなり、練習試合での取り組みに繋がった。今までの経験を伝え、2人で話し合いながらチーム力の底上げを図る。

自身もメンバーが大きく入れ替わった第2節WD名古屋戦からリリーフサーバーで急遽の登場。そこから第3節でも登場し、サーブ効果率8.9%の数字を残している。

「(出番は)自分もびっくりした。でもユニフォームを着たからにはやらないといけない」

そう言いながらも、出番が来た際には「気負わず打っている」という。ここまでの結果に対しても「こんなもんだろうな、みたいな感じ」と飄々と語る。

「今のSVリーグではフローターサーブではあまり効果が出ないシーンが増えてきている。ああいうサーバーがいることでチーム全体の力は上がっていると思う」と安田コーチは分析する。

飯田と赤星。2人は終盤の1点をもぎ取るための明確な武器として備え、その時を待つ。

勝負のカギを握るのはサーブ
ホームの後押しを背に勝利を

VC長野のサーブ効果率は昨シーズンの6.8%から向上し、第3節を終えて7.8%の数字を残している。

「サーブ効果率が昨シーズンより上がったので、(相手の)B〜Cパスが増えてブロックタッチができるシーンが増えた」

ここまでの戦いを安田コーチはそう分析する。敗れた第2節WD名古屋戦、第3節東京GB戦については「サーブが走らなかったので、向こうに好き勝手やられるシーンが増えた」とみる。

特に相手がミドルブロッカー(MB)にノルベルト・フベル(WD名古屋)や村山豪(東京GB)など代表クラスの選手を擁する場合、選択肢を削る必要がある。

強いサーブで相手を崩し、アタッカーを限定させてブロックディフェンスを機能させるのがブレイクへの道のり。今週はサーブ練習の時間を多く取る日もあった。

2025年11月15-16日はホームのANCアリーナで東レ静岡を迎える。シーズン開幕前に練習試合を行った相手で、手の内はお互いにわかっている状態だ。

攻撃の軸になるのは高身長のOPキリル・クレーツ。特にサーブは強烈で、ここまでサービスエースは9本、効果率10.8%の数字を残している。飯田も「高さもあるし勢いもある。OPに集まってくるチームだと思う」と警戒を強める。

「東レ静岡とやって感じたのはやはりサーブ。強いサーブが入った方が勝てる」

東レ静岡との練習試合後にS中島健斗が話していたように、どれだけ強いサーブを入れられるか。そして相手の強いサーブをどれだけ我慢できるかが勝敗のカギとなる。

安田コーチは「どんなサーバーに対してもしっかりサイドアウトを取らなければいけない」としながらも、「こちらの苦手なローテーションで向こうのサーバーの誰と当てるかはこちらの仕事」と意気込む。

開幕節で日鉄堺BZに連勝した後は、肉薄しながらも勝ち切れない試合が続いている。

前節について、飯田は「アウェイで向こうの一体感にのまれた部分はあった」。しかし次節はホーム。安田コーチは「今節は自分たちのホームアドバンテージをしっかり生かして勝ちたい」とホームの後押しに期待する。

取り切れなかった1点。
届かなかった1点。

それをチーム、そしてファンの全員で取り切って――勝つ。

そのための準備は万全だ。


第4節【ホームゲーム情報】11/15-16 安曇野大会(vs.東レ静岡)
https://vcnagano.jp/information/20772
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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