攻勢強めた“佐久長聖2.0” 全国で課題と成果を持ち帰り、創部10年目のシーズンへ

確かな進化のプロセスを刻んだ。全日本高校女子サッカー選手権が2025年12月29日に開幕。4年連続4回目出場の長野県代表・佐久長聖は初戦で大逆転勝ちを収めたものの、3回戦で敗れてベスト16で幕を閉じた。前回大会のベスト8には届かなかったが、より攻撃的にアップデートした“佐久長聖2.0”の姿を披露。成果と課題を持ち帰り、創部10年目の節目に歩みを進める。
文:田中 紘夢/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
0-2から逆転して初戦を突破
3連覇中の王者相手にも奮闘
「今までは3点も取れなかったし、逆転なんてなかった。OGたちが残してくれた課題に向き合ってきた成果が出た」
3-2と競り勝った2回戦・宮崎学園戦。序盤に2点のビハインドを負う苦しい展開となったが、MF宮内優衣の得点とオウンゴールで前半のうちに追いつく。後半にもMF金谷彩花が決勝点を奪い、逆転勝ちで初戦を突破した。

4大会連続4回目の出場。これまでの3大会を振り返ると、16-0と大勝した前回大会1回戦・高取国際(奈良)戦を除けば、実力が拮抗した中で1点を取るのが精いっぱいだった。そんなチームが0-2から試合をひっくり返したのは、進化の証と捉えられる。
3回戦では3連覇中の王者・藤枝順心(静岡)と対戦。前回大会準々決勝で0-4と敗れた相手を前に、真価が問われた。
前半の立ち上がりと終了間際にセットプレーから失点。王者のしたたかさを見せられながらも、主導権を明け渡したわけではない。「去年よりも自分たちでボールを動かして、ゴールに向かうことはできた」とMF西尾碧海が言うように、ハイプレスを回避して敵陣に進んだ。

後半もシステムを柔軟に変えながら、ゴールに向かう回数を増やしていく。52分にはMF名倉愛佳のミドルシュートから、相手に当たったこぼれ球を宮内がプッシュ。ゴールは惜しくもオフサイドの判定で取り消された。
0-3の完封負けに終わったが、昨年以上に見せ場はつくれていた。シュート数は1本から5本に増え、幻のゴールも。大島駿監督は「できるすべてを出した」と選手たちをねぎらう。前回のベスト8には届かなかったが、ベスト16で成長の足跡を残した。

KINGDOM パートナー
逆境から始まった「2.0」
DFリーダー不在を乗り越えて
そもそも逆境から始まった1年だった。
ディフェンスリーダーの筆頭だった平賀千春が、前回大会3回戦・作陽(岡山)戦で負傷交代して長期離脱。一度は復帰して県選手権出場を目指したものの、その過程で再び大ケガを負った。

前線は1トップの尾茂弥花帆を軸に、左右サイドハーフの金谷と宮内がセカンドトップとして機能。遅攻が目立った昨年度とは異なり、敵陣に入ればギアが上がり、クロスに入り込む迫力も増した。
いわば「佐久長聖2.0」を構築。攻撃力は高まっただけに、最終ラインさえ安定すれば――。そんなジレンマを抱えながらも、最終的には形になった。

左サイドバックからセンターバックに移った新井陽彩が、持ち前のスピードを生かして奔走。攻撃となれば4バックから3バックに可変し、オーバーラップで彩りを添える。「前線の選手に決めてもらって、自分たちは守備に徹したい」と言いつつも、持ち前の攻撃参加を隠そうとはしない。

ボランチから右サイドバックに移った草山梨子も、新境地で輝きを放つ。前回大会1回戦・高取国際戦でミドルシュートを決めたように、キックの精度が武器。2回戦の宮崎学園戦では右サイドを駆け上がり、ピンポイントクロスで金谷の決勝点をアシストした。

1年生からスタメンを張る新井とは異なり、草山は3年生でようやく定位置を確保。ポジションが変わって不安もありながら、「対人で負けないことは徹底した。攻撃参加はずっと課題だったけど、大会を通してクロスも多く上げられるようになったし、サイドバックをやったおかげで成長できた」。
兵庫県出身。地元開催の全国舞台を通して、「人としても選手としても成長できた」と胸を張る。サッカー人生に区切りをつけ、新たな道へ進むつもりだ。

平賀の思いも背負った1年間
進化を遂げて創部10年目へ
リハビリ中の平賀も、今大会は選手としてベンチ入り。スパイクではなくランニングシューズを履いていたように、プレーすることはできない。それでも大島監督は彼女を必要としていた。
「選手たちにも『千春のために』という思いはある。足を止めたり、戦うことをやめたり、自分の殻にこもっている選手に対して『出たくても出られない人がいるんだぞ』と言ってきた。それを感じてほしくて彼女をベンチに入れた」

平賀自身も「プレーでは見せられないけど、チームのために全力でサポートしたかった」。新井、尾茂弥とともに3人でキャプテンを担い、ミーティングから率先して話したり、最終ラインにアドバイスを送ったり――。
2年生の宮内もその思いを汲み取り、「本当にサッカーに向き合っている人で、本当に良くしてもらった。頑張っているところも見てきたので、自分の点で勝たせてあげたい」と力説。2回戦で今大会チーム初得点を決め、3回戦でも“幻のゴール”を決めるなど、平賀の思いも背負って走り抜いた。

WEリーグ内定の2人を擁した昨年度に比べても、必ずしも個が長けているわけではない。それでもOBが残した攻撃力という課題に取り組みつつ、チーム一丸となって進化のプロセスを刻んだ。
3年生の6人中4人は海外へ。「世界の佐久長聖へ」という教育方針のもと、活躍の場を広げる。

佐久長聖としては来年度、節目の10年目を迎える。大島監督は「2.0」からのアップデートに向けて、「もっとゴール前で遊びたい。そこに速く行くこととゆっくり行くことを使い分けながら、4点取られても5点取るチームになるかもしれない」。
遅攻と速攻のコントラストを描きつつ、ゴール前で大胆さと繊細さを織り交ぜられるか。佐久長聖の進化は止まらない。

佐久長聖高校 クラブ活動ページ
https://sakuchosei.ed.jp/hs/hs-club/
長野県フットボールマガジン Nマガ
https://www6.targma.jp/n-maga/

















