“ダイヤの原石”東海林奨は黄色に輝く 聖地・千曲に降り注ぐ声援を浴びながら

2018-19シーズンにB2優勝を果たした”聖地”ことぶきアリーナ千曲で、今季最初で最後のホームゲームを行った信州ブレイブウォリアーズ。26年2月14日のGAME1はホームゲーム400試合目の節目にもなった。その中でひときわ大きな声援を浴びていたのが東海林奨。決して目立つスタッツを残したわけではないが、会場が揺れるほどの拍手が送られた。その背景に横たわる葛藤と成長をたどる。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

KINGDOM パートナー

一時はベンチ外の経験も味わう
立ちはだかった「1年目の苦悩」

数字では目立たずとも、まぎれもなく主役級の存在感を放った。

東海林奨。GAME1は17分20秒出場で6得点、GAME2では14分55秒の出場で2得点だった。しかしそれ以上に、「マザータウン」ことぶきアリーナ千曲を沸かせ、その存在価値を示した。

青森ワッツから移籍し、信州で1年目のシーズンを過ごす東海林。柔らかいシュートタッチでリングを射抜き、俊敏なフットワークや長身を生かした力強いドライブ、リバウンドなどオールラウンダーな活躍を見せる選手だ。

前半戦では13試合をスターティングメンバーとして出場。11月16日の福島ファイヤーボンズ戦では20得点を記録するなど、メインローテーションの一角を担っていた。

しかし12月に入ると、周囲のメンバーがケガから復帰してコンディションを上げてきたのに伴い、自身のプレータイムは徐々に減少。些細なターンオーバーでもすぐに交代を告げられるなど、出場時間が10分を下回る試合も少なくなかった。

「ケガ人が戻ってくれば自分のプレータイムが減ることはわかっていたし、数回ミスしたらすぐに交代させられることが普通。それでも『またミスしちゃった』とメンタルがブレてしまうことがあった」

そう明かしていたのは1月20日。確かにその時期、プレーにはどこか迷いが見られた。オフェンス面では持ち味の思い切りの良いシュートやドライブが影を潜め、止まって周りを見渡すようなシーンが散見された。

勝久HCが求める原理原則や緻密な戦術の理解に苦しむのは、1年目の選手なら誰もが通る道。瞬時に判断して、プレーを遂行することは決して簡単なことではない。

とはいえ、勝負の世界でもある。コートに立つためには頭と身体にそれらを叩き込まなければいけない。そしてミスをした後にどのようなカバーを見せるのか。強い気持ちでコートに立てるのか。そこがブレると、コートに居場所はなくなる。

その後は1月24日の青森戦で今季最短となる2分2秒の出場。そして2月1日の横浜エクセレンス戦と2月7日のベルテックス静岡戦ではベンチ外を経験した。

横浜EX戦GAME2後の会見で、東海林の起用について勝久HCは丁寧に言葉を紡いだ。

「奨には『またチャンスは来るから』と伝えた。昨日(1月31日のGAME1)も奨を長く出していたらミスの後にバウンスバックをしていたとは思う。だけど『気持ちの強い(横山)悠人にしよう』と(東海林の代わりに横山を)ベンチに入れることを決めた」

迷いを晴らした3Pとダンク
練習が生んだ覚悟のプレー

信州ブースターの多くも、こうした背景と東海林の実力を知っているのだろう。だからこそ今節の東海林には惜しみない声援が送られた。

この日一番の歓声が上がったのは第3クオーター(Q)3分48秒からのプレー。東海林がフロアを見渡して素早くボールをフロントコートまで運ぶと、そのままセットプレーに移行。フリーになった東海林が両手を挙げてボールを要求すると、マイク・ダウムのパスを受けて迷わず3ポイントシュートを沈めた。

残り1分52秒には山形のスコアラーであるジェームズ・ベルをブロック。さらに1分30秒、左45度から2本目の3ポイントシュートを記録して会場を沸かせた。

ホームコートに戻ってきた東海林。さまざまな思いを口にした。

「率直にすごくうれしかった。自分があまり良いパフォーマンスができず、ベンチを外れたことに対しては応援してくれるブースターの方に申し訳ない気持ちがあった。戻ってきて自分のタオルを掲げてくれた方たちが多く見えたので、温かい信州ブースターにすごく感謝している」

勝久HCも東海林の活躍に目を細める。

「奨は今週すごく良い練習をして『使いたい』と思わせられる準備をしていた。前半は良くなかったが、あのままではこちらとしても終わりたくないし、チャンスをあげずに終わることはしたくなかった。ターンオーバーもあったが、迷わずシュートを打つ姿勢は素晴らしかった」

時には練習中でも遂行力を発揮できずに、普段あまり大きな声で指摘しない久山智士・トップアシスタントコーチ(TAC)にも強い口調で姿勢をただされることもあった。

「自分のプレータイムを勝ち取っていくためにも自分のことをどんどんアピールしていかないといけない。練習でも試合でもチームの勝利のためにプレーしているけれど、自分個人のアピールの時間でもあると思う」

「そこで積極的に自分の良さを出していかなきゃいけないと思い、練習から一つひとつのことに集中してアグレッシブにやることを今週ずっと意識してきた」

翌日のGAME2、今季初のダンクを叩き込んだ東海林。苦悩の日々を経てつかんだ、プレーヤーとしての覚悟をにじませた。

勝久HCから“ダイヤの原石”と評された25歳。研磨の時を経て、今ようやく光を放ち始めた。ベンチ外という見えない時間も、限られた出場機会も、すべてが彼を磨き上げる砥石となった。

プレーオフ制覇を目指す信州にとって、東海林の存在はもはや欠かせない。心優しき“すっすー”がコートでエゴとアグレッシブさを解き放つとき、信州の山々はさらに厚みを増すだろう。


Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/club_detail/?TeamID=716&tab=1
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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