“捲土重来”の一歩を踏み出した松本山雅 格上・J2勢との12試合で得た収穫は

J2に昇格し、そこで競争力を発揮する――。J3松本山雅FCの中期ビジョンに照らすと、リスタート直後の現状は「まずまず」と言えるだろう。J2・J3百年構想リーグは地域リーグラウンド18試合中17試合を終え、8勝9敗(PK勝ち2、PK負け3を含む)のEAST-Bグループ7位。J2勢に胸を借りる試合も、2026年5月18日の前節・いわきFC戦で一区切りとなった。その試合は1-1のPK戦で制したものの、目標までの距離感を突きつけられた格好。現状を整理しながら、次節の福島ユナイテッドFC戦を展望する。

文:大枝 令

目指したい場所までの距離感は
いわき戦であぶり出された現在地

5月18日、ハワイアンズスタジアムいわき。PK戦で勝利した後の取材エリアに、MF村越凱光は冗談交じりに隠れるようなそぶりを見せながら現れた。

1人目でPK失敗をしたから――という推測は容易についたが、結果としては勝利。それよりも、今季ピッチに立ち続けてきた24歳に聞くべきことがあった。

松本山雅は成長したのか。

昨季までのアプローチを刷新すべく石﨑信弘監督を迎え、質実剛健な組織を練り上げて5カ月余。大枠のスタイルで似通う先行者・いわきFCとの距離感を、ピッチ上でどう感じたのか。前回対戦との比較も踏まえてたずねると、村越は苦笑交じりに切り出した。

「(自分たちは)成長していたと思うけれど、それよりもいわきの方が成長していたと思う。全部(ロングボールを裏に)蹴るわけじゃなくて(足元でパスを)つないでくるし、多少のプレッシャーがかかってもはがしたり当てて落としたり、ターンして仕掛けたり。僕らが見習わなければいけないところだと思う」

「試合をしていて感心してしまった。相手を見ていて、自分に足りないところに試合の中で気付くことができた。自分に見つかった課題に、練習の中から取り組んでいきたいと思った」

実際、いわきのスタイルは松本山雅が志向するそれに極めて近しい。圧倒的なフィジカルや縦方向への鋭さを基本としつつ、一辺倒に陥らず足元の選択肢も残す。相手を見ながら引き出しを入れ替える手法で、それは2020年以降(22年を除く)の松本山雅が目指して頓挫したユートピアでもあった。

実際に3バックを統率するDF金子光汰は、ストレスを感じていた。

「僕らが(ロングボールを裏に)蹴られると思って下がった時に、(逆に)足元へのパスが多くあった。ただ裏に早く対応するのではなく、足元も潰しにいかなければいけない」

「逆に自分たちももっとそういうボールの持ち方をして、相手にプレッシャーやストレスを与えないといけない」

PK戦でGK富澤雅也が2連続ストップを見せ、「勝点2」をゲット。J2勢相手の白星は4つ目となり、一定の成果を感じさせた。ただそれ以上に、目指すべき舞台への距離感が如実に表れた一戦でもあった。

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試合を通じて個々に成長を示す
シーズン残り3試合も最後まで

その半面、成果が出始めている部分もある。個々の成長にフォーカスすると、例えばDF樋口大輝の躍動が目覚ましい。今季は左ウイングバックとして全試合に出場。前半戦は不完全燃焼なパフォーマンスも目立ったが、後半戦は一変した。

第10節RB大宮アルディージャ戦、縦に1対1を仕掛けて左クロスを入れ、今季初アシスト。その試合で成功体験を得て、以降は積極的な突破からの折り返しが光る。

いわき戦も、マッチアップしたのは203cmのDF木吹翔太。J1サンフレッチェ広島から期限付き移籍中の有望株に対し、もちろん体格やリーチの長さに苦戦した側面はあった。

しかし目立った仕事をさせずに切り抜け、88分には絶体絶命のピンチでゴールカバー。16分には木吹を置き去りにする縦突破から、左足クロスでゴール前の好機を演出した。

それ以外にも、若い才気がハーフシーズンを通じて次々と芽吹いてきた。FW藤枝康佑は途中出場がメインながらもチーム最多タイの5得点を挙げており、金子はセンターバックとして信頼を勝ち取りながら4得点とゴール感覚も光る。既存組はMF安永玲央の進化が目覚ましかっただけに、ケガでの離脱が悔やまれる。

改善の余地はもちろん残すが、守備組織も一定水準には練り上げられてきた。だからこそ、次なるフェーズの「決定力」も課題として浮上。8月に開幕する26-27シーズンに向け、現状では大きな入れ替えはなく、ピンポイントの補強を加えて臨むことになりそうだ。

その前に、地域リーグラウンド最終節とプレーオフラウンド2試合をやり切るのが目前のミッション。5月24日にサンプロ アルウィンで福島ユナイテッドFCを迎える最終節は、ボール保持にこだわる福島にどれだけプレッシングをはめられるか――がカギの一つになりそうだ。

「8勝9敗で、次に勝てばなんとかイーブンに持っていける。しっかりと勝てるようにしたい」とDF小田逸稀。「(相手の福島は)同じカテゴリだし、僕も(アウェイの前回対戦時に)2点取っているので良いイメージがある」と力を込め、残り3試合でも最大の勝ち点と成果を積み上げていく構えだ。


5月24日(日) 松本山雅FC vs 福島ユナイテッドFC ホームゲーム情報
https://www.yamaga-fc.com/archives/544468

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