要点絞る指揮官のアプローチで トライデンツに″ラーナー流“じわり

新しいユニフォームを身に纏った戦士たちが躍動した。SVリーグ男子開幕を5週間後に控えた信州松本トライデンツは2026年9月20日、スワンドーム(岡谷市民総合体育館)で東京グレートベアーズ(SVリーグ)とのプレシーズンマッチに臨んだ。24年9月の設立から丸2年を迎えた「信州スポーツキングダム」が協賛したゲームには、会場を埋める932人ものファンが来場。トライデンツは同カテゴリーの相手と熱戦を演じ、セットカウント2-2(25-15、25-22、17-25、21-25)と奮戦した。トーマス・ラーナー新監督の方針が浸透していることを実感したゲームから見えた収穫と課題を振り返る。

文:大枝 史

攻めるサーブでブレイク連発
最高の入りを見せてセット連取

サーブで攻め、システムで守る。新生トライデンツを見せつけるような、ゲームの入り方だった。

第1セットは4-4からオポジット(OP)フィリップ・ジョンが放った強烈なサーブでエースを取り、ブレイクに成功。続くサーブも相手を大きく崩し、連続ブレイクした。

その後もアウトサイドヒッター(OH)佐藤隆哉、ミドルブロッカー(MB)デイビッド・スミスのサーブでブレイク。守っては1回でサイドアウトを取り、順調に得点を重ねて優位に試合を進めていく。

12-7で迎えたセッター(S)赤星伸城のサーブでは、リベロ(L)松尾敬介が相手のアタックを好レシーブで拾い、ブレイクにつなげた。

19-10から2枚替え(ローテーションを優位に進めるためにSとOPを同時に交代する戦術)で登場したS星名勇佑のサーブも相手を崩してブレイク。影も踏ませぬまま、25-15で第1セットを取った。

トーマス・ラーナー監督が「第1、第2セットは自分たちの最高レベルに近いプレーができていた。プレッシャーのかかる中で『自分たちはここまでできる』と感じられたことは大きい」と話すように、第2セットでも主導権を握る。

1-1からブロックタッチでこぼれたボールをジョンがパンケーキで拾い、MBマックレヴィン・ディアリス平が高打点から決め切ってリードする。その後も佐藤のネットインとなるサービスエースや、ブロックタッチからラリーにつなげて取り切るなどリードを広げて相手に追いつかせない。

24-22のセットポイントからはOH工藤有史がアタックを決め、第2セットも取り切った。

練習の成果を発揮
効果的なディフェンスシステム

オフェンスもディフェンスも、チームがやりたいことをやれている。そうした感覚は選手たちも感じていた。

「ハイボールを打ち切るところと、第2セットまでは相手にサービスエースを取られることもほぼなかった」と工藤。「そこはずっと意識していたことなのですごく良かった」と振り返る。

特にハイボールを打ち切ることはチームとして時間をかけて取り組んできた。

2026-27シーズンからはアタックヒットの判定が厳格になり、ボールを押し込むようなプレーはホールディングの反則を取られる。それに伴い、ハイセットなど難しいボールに対してリバウンドを取りに行くことにもリスクが増えたためだ。

加えて、指揮官が設定するシステムもある。

レセプションを苦手としていた佐藤は「すごく強いサーブだったら『(セッターに)返さなくて、上に上げるだけでもいい。それでハイセットで決め切る』と明確にルール(チーム内の約束事)化されているから負担が軽くなったと思う」と明かす。

例えば、第1セット6-5の場面。相手のサーブで大きく崩されたものの、佐藤がハイセットを決めてサイドアウトを取った。

ディフェンス面では、何度も相手のスパイクを拾った松尾も「自分のやるべきことに集中していた。みんなとの信頼関係を持つために、チームのシステム通りに動いただけ」と淡々と話す。

状況判断やブロックの割り切りもシステム化されている。それが顕著に出ていたのが、相手のレセプションが少し乱れただけで3枚ブロックに跳ぶシーン。

指揮官も「徐々にシステムがハマりつつあることはすごく良いと思う。(相手の)パスがネットから離れた状況の時に、落ち着いてプレーを展開できた」とうなずく。

明確なチーム内ルール、システムの下で取り組んできた成果が、第1、第2セットに表れたことが大きな収穫だ。

苦境の中で見えた課題
一つ一つに絞って改善

起用選手を変えた第3、第4セットは、序盤から相手の強いサーブに苦しんで連続ブレイクを許し、点差を離される展開になった。

指揮官は「今、取り組んでいる課題が出てしまったのは事実」としながらも、第3セットでは最大10点差あった状況から中盤以降に7点差まで盛り返すシーンもあり、「スタートで遅れをとってもそこから巻き返せる。そういうことができると感じてほしかった」と前向きに捉える。

現実的な課題として指揮官は「簡単にフェイントで向こうに返してしまうことが多かった」とアタックの選択肢を挙げる。

チームとしては2〜3個、そして個人には1つの課題。それに対して改善に取り組み、また次の課題を見つけていくサイクルを回している。

個人に対して与えられる課題はいたってシンプルだ。

例えば佐藤。19日に東京グレートベアーズと行った練習試合では、ハイボールに対して3枚ブロックがついた際、中央のブロッカーに打つシーンが多かった。それに対して与えられた課題が「打つなら1枚目(左)か3枚目(右)」

一つ一つの課題に向き合うことで、選手の思考をクリアにしていく。

一人一人が課題をクリアして個の力を蓄え、チームとしての課題をクリアしてシステムを完成させていく営みだ。

8月8日に合流し、当初は外からチームを見続けてきたスミスは「一人一人の役割があって、それがちゃんとチームに還元されてまとまったプレーになってきている」と変化を敏感に感じ取る。

システムについては、「正しいシステムとは、チーム全員がシステムを信じてプレーして、一つのユニットとしてプレーできるかどうか。一緒にプレーする時間を長く重ねていけば、システムの中でうまくいかなくても頭を切り替えられるようになる」と重要性を説く。

同格相手との実戦を通して得られた収穫と課題。チームとしてのシステムを洗練させ、SVリーグ開幕に向けてギアを一段階上げていく。


信州松本トライデンツ 2026.9.20 プレシーズンマッチvs東京グレートベアーズ
https://shinshu-sports.jp/photogallery/42152
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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