野球界からバスケの世界へ 信州BWの強い身体をつくる北野一郎S&Cコーチ

「まずは健康であること、試合に多く出場できる選手を探した」。Bプレミアで戦う信州ブレイブウォリアーズの青野和人ゼネラルマネジャー(GM)は、今季に向けてコンディションの大切さを説いていた。プレー強度が高いBプレミアを戦い抜く鍵は「健康」にあると考えているからだ。選手たちの体づくりを担うのが、米大リーグのフィラデルフィア・フィリーズやプロ野球の中日ドラゴンズで経験を積んだ北野一郎ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチだ。野球畑からの異例の転身を遂げた49歳の仕事に焦点を当てる。
文:芋川 史貴
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誰も欠けずに1カ月経過
「全員が万全の健康状態」
Bプレミア開幕から約1カ月。12試合を戦い終えた信州ブレイブウォリアーズは、ロスター全員が健康を維持してコートに立っている。ここ数年はケガ人の多さが課題だったが、今季は状況が好転している。

開幕1カ月の段階で、青野和人GMが掲げる「健康」というテーマを達成したと断定することは時期尚早だ。それでも、チームの土台を固める序盤戦に誰も欠けなかったことで、新戦力を多く迎えたチームは戦術の浸透を進めることができている。
ジャッド・フラベル・ヘッドコーチ(HC)は、ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチやアスレティックトレーナーといったメディカルスタッフについて、「全員が懸命に取り組んでいる。現時点では、チーム全員が万全の健康状態にある。この状態を維持することがわれわれにとって最優先事項」と評価する。

そのメディカルスタッフの中に、異例の経歴を持つ人物がいる。今季から加入した北野一郎S&Cコーチだ。国内外の野球界で20年以上にわたって選手を支えてきた。
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転身のきっかけは青野GM
49歳で選んだ新天地
北野コーチがバスケットボール業界に転身し、信州の指導者に就いたきっかけは青野GMだった。

2人は、2000年8月から10カ月間、スプリングフィールドカレッジ(米マサチューセッツ州。バスケットボール発祥の地として知られる)でルームメイトだった。渡米したばかりで英語がほとんど話せず、北野コーチは「今日から英語で会話しましょうか、と言ったら会話がなくなった」と笑う。
北野コーチは大学院在学中に米大リーグ球団の学生インターンに応募。受け入れ先となったのがフィラデルフィア・フィリーズだった。当時のヘッドトレーナーは日米野球で来日した経験があり、日本人の名前に目を留めてくれたという。その縁で2005年に入団。アスレティックトレーナーとしてマイナーで6年、メジャーで4年を過ごした後、2015年からは日本に戻って中日ドラゴンズで11年間にわたってアスレティックトレーナーを務めた。

ドラゴンズを退団後、引き続き野球界での仕事を探る中で青野GMに連絡。青野GMから「興味があるなら」と声がかかった。49歳での転身。迷いもあったが、長くプロスポーツの現場に携わってきた自分に合う道を選んだ。
野球では大人数を束ねる仕事が中心だったが、バスケ界は選手一人一人と向き合う時間が長い。やりがいを感じるのは、落ち込んでいる選手を手伝い、その選手が再び活躍する姿を見た時だ。

「寄り添うと言うと大げさかもしれないが、関わった選手が頑張って試合に出ている姿を見たら、うれしい」
数値と対話でケガ予防
「1年間ケガなくプレーを」
北野コーチが信州で担う役割は、大きく分けて二つある。一つは、筋力(ストレングス)と、心肺機能やアジリティ(コンディショニング)を高めるトレーニングの指導。もう一つが、選手の運動負荷(ロード)の管理だ。S&Cコーチが1人のチームでは負荷管理を兼ねることが多く、信州も今季から取り組み始めた。

トレーニングは、選手一人一人に足りないものを探すところから始まる。フォースプレート(地面に加わる力を計測する装置)を使ったテスティングで力の出し方を測り、瞬発力の有無などからタイプを見極める。そこに本人との会話や、コート上の動きの観察を重ね合わせていく。
テスティングの結果からは、選手それぞれの個性も見えてくる。例えば、東海林奨は日本人選手の中で最も体が強く、重量も瞬発力も備える。それぞれの選手の良さを伸ばし、弱点を補っていくことを目指す。
選手からの信頼も厚い。エリエット・ドンリーは「シーズンに向けてトレーニングのプランを練っていた。栄養補給などについても話して、本当に役立っている。選手に対して何が必要かを理解しているので本当にありがたい」と感謝する。

負荷管理には、今季導入したカタパルトと呼ばれる測定機器を使う。選手が身に着けた機器の数値を、練習中はiPadで、試合中はベンチ裏でリアルタイムに確認している。負荷を可視化し、その多さに応じて翌日の練習量を調整する。昨季多かったケガを減らすことが目的の一つだ。
数字と並んで大切にしているのが、選手との対話だ。性格は一人一人で違う。冗談が通じない選手もいれば、冗談ばかり言っている方がいい選手もいる。声のかけ方は相手によって変えている。
シーズン序盤、出場機会を得られず落ち込んでいた小栗瑛哉にも、シューティングやトレーニングで寄り添った。その小栗は少しずつ出場時間を伸ばしている。

もちろんトレーニングを積んだとしても、アクシデントによるケガなどを完全に防ぐことはできない。ただ、目指す場所ははっきりしている。
「選手が1年間通して、ケガなくプレーできる体づくりをずっと目標にしてやりたい」
健康を維持して戦い抜く。開幕前に青野GMが掲げたテーマに答えが出るのは、シーズンを終えた時だ。北野コーチの挑戦は続く。
信州ブレイブウォリアーズ 公式サイト
https://www.b-warriors.net/




















