アルウィン鉄骨部材落下で12日のホームゲーム中止 松本山雅に大きな打撃

サンプロ アルウィンのバックスタンド側照明用架台鉄骨部材が観客席に落下した10月3日の事象を受け、2025年10月12日に予定されていたJ3第31節・松本山雅FC-テゲバジャーロ宮崎は中止となった。今後の見通しは明らかになっていないが、クラブ経営やチーム運営に大きなインパクトを与えることは不可避な状況だ。

文:大枝 令

試練の「今季3回目の試合中止」
チームはスケジュール変更で対応

「選手たちもどうなるのか気にしていたようだった。仕方がないから受け止めるしかないし、試されている。やるしかない――というマインドでいようと伝えた」

10月8日の練習後、取材に応じた早川知伸監督はそう切り出した。選手には同日のトレーニングに先立ち、前節フィードバックのミーティングで伝達したという。

ただでさえアウェイの第28節ツエーゲン金沢戦が雷の影響で中止となり、水曜日の10月15日に振り替えられた。リーグ終盤戦に連戦が重なることは避けられないうえ、そもそも成績も9勝9分11敗の13位とふるわない。“泣きっ面に蜂”の状況でもある。

現場は3日の発生からほどなく、さまざまなケースを想定して複数のシナリオを準備。今回の中止を受けて次回の試合は15日の金沢戦となったため、チームスケジュールを大幅変更して組み立てる。

「アルウィンで後押しをしてもらえることは、実は当たり前じゃない。そのありがたみをまた感じた」と早川監督。「リスクがあったら開催できない。最悪の最悪まで準備して構えている」と話した。

想定されるケースとして、もっともインパクトが大きいのは「今季のホームゲームは全てアルウィンでは開催できない」という状況。その場合は他スタジアムを使用することとなり、現場は移動負担とコストを含めて検討が必要となる。

選手たちの受け止めはどうか。

DF樋口大輝に問うと、しばし沈黙した後に「とんでもないですね…」とポツリ。今季は雪と雷ですでに2回の中止と延期を経験しており、今回で少なくとも3回目。「いろんな試練が降り掛かっていると思う」と険しい表情を浮かべた。

自身は松本山雅FC U-18出身。アカデミー時代からホームスタジアムは憧れの場所でもあった。「本当に『ホーム・アルウィン』という感じなので、そこが使えなくなるのは実感が湧かない。違う場所で試合をするにしても、ちょっとまだ想像もつかない」と戸惑いを口にした。

前節でJ通算100試合を達成した大卒5年目のDF宮部大己も、率直な心境を明かす。

「やっぱりアルウィンの雰囲気や圧力は別格。試合ができないとなるともったいないと思うし、アドバンテージが小さくなるとは感じる」

クラブ経営にも大きな痛手
他会場での開催ならコスト増大

「今後のホームゲーム開催につきましては、先週末より関係者と密に情報交換をさせていただいておりますが、施設の安全性について調査中のため、現時点では確定できておりません。

なお現状では、他会場での代替開催が困難なため、サンプロ アルウィンでの開催を軸に、今後の対応を進めていく方針です。

早急に今後の開催に関する確定情報をお伝えできるよう、引き続き関係各所と連携のうえ、全力で対応を進めてまいります」

10月8日15時にクラブが出したリリースの文言を一部抜粋した。基本的には「安全確保→アルウィン開催」が軸。鉄骨部材が落下したバックスタンド側を閉鎖した状態での開催も選択肢としては存在するが、ピッチ内の安全を担保できるかどうかが不透明だ。

このほか、他会場での開催を想定するとハードルが一気に上がる。「席割の調整、確定、案内」「スポンサー露出の調整、ボード運搬」「警備などの人員、駐車場の手配」などの膨大なタスクを短期間で遂行する必要がある。

少なくとも10月12日に間に合わせることは「徹夜しても難しい」(クラブ担当者)という状況だったという。

実際に2018年のホーム開幕戦を山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場で開催した際も、事前に何度か現地を視察した上で行うなど時間もコストも要した。

現在行っている長野県の調査終了と判断を受け、松本山雅は今後の方針を固める。

仮にホームゲーム残り4試合が全て他会場での開催となった場合、数千万円〜1億円規模の収入減が見込まれる。クラブは今期これまで黒字ベースで推移していたというが、今回の一件で赤字に転じる可能性もある。


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