“オール日本人”で強豪WD名古屋に善戦 小さなチームが示した大きな可能性

いるべき選手がいない――。首を傾げた人も多かったのではないだろうか。VC長野トライデンツのSVリーグ男子第2節、2025年11月1-2日のホーム・ウルフドッグス名古屋戦。コンディション不良などで外国籍選手3人と松本慶彦を欠く中でも、日本人選手たちが躍動した。連敗したものの、若き才能たちがポテンシャルを示して善戦。多くの選手が貴重な経験を積んだ2日間を振り返る。
文:大枝 史 /編集:大枝 令
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大卒1年目選手が続々SVデビュー
悔しさをバネに取り組んだ成果
多くの若い選手が、始まりの一歩を踏んだ。
11月1-2日で行われたSVリーグ第2節、VC長野はホームで強豪のWD名古屋を迎えた。コンディション不良により、第1節で活躍を見せた外国籍選手とミドルブロッカー(MB)松本慶彦がメンバーから外れ、若い日本人選手のみでの対戦となった。

GAME1は序盤から相手のサーブに苦戦。第1セットのスタートから相手セッター(S)深津英臣の巧みなサーブで崩される。逆にVC長野のサーブは効果的に決めることができず、ブレイクが取れない。
攻撃のリズムを作れずに、じわじわと点差が開いていく苦しい展開となった。

SVリーグ初出場となったオポジット(OP)酒井秀輔やアウトサイドヒッター(OH)工藤有史のスパイクで奮闘するものの、昨シーズン35勝9敗の成績を収めた強豪は隙を見せない。

結局1セットも取ることすら叶わず、セットカウント0-3のストレート負け。しかし試合経験のない若手選手が出場し、SVリーグという舞台を経験する収穫はあった。
GAME1でスターティングメンバーとして出場した酒井。持ち前のジャンプ力を生かして積極的にアタックを決める。守備面でもブロック3本を記録してアピールした。

第1セット途中でOH佐藤隆哉に代わり後衛から出場したのはOH一条太嘉丸。丁寧にサイドアウトを重ねると、第2セットは最初から出場。WD名古屋の強いサーブに対して粘り強くパスを返した。

第2セット途中からはMB安部翔大に代わってMB岸川蓮樹が出場。左利きのMBである特異性を生かして相手のブロックを惑わせるスパイクを決めた。

昨シーズンは内定選手としてチームに帯同はしていたものの、出場機会はなかった3人。
「モチベーションを保つのは難しかったけど、押し殺して『3人で頑張ろう』という話はよくしていた」
一条がシーズン前に振り返っていたように、黙々と練習を積み重ねた結果、その3人が前衛に並ぶシーンも見られた。

アタックの打数は26本とOPとしての役割を果たした酒井。「自信という部分では僕の武器である攻撃、スパイクで通っている部分も多々あった」と手応えを感じる一方で、「相手の対応に対応しきれなかった」と二の矢、三の矢の必要性を口にした。

一条は「いつもは決まるコースが決まらない。急に見えないところからぐっと手が出てきて、SVリーグのレベルの高さはすごく感じた」とその高さに舌を巻く。
事実、WD名古屋のMBノルベルト・フベルは身長207cm。練習では体験できない高さを持つ。「自分の持ち味は絶対にディフェンス。チームにダメージにならないように無理をしないこと」と役割をより明確にする。

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戦術の修正力が光ったGAME2
レセプション強化で2セット連取
GAME2ではスターティングメンバーをGAME1終盤から大きく入れ替えた。リベロ(L)は古藤宏規から難波宏治、OPも酒井から飯田孝雅。OHは佐藤が出場した。

狙いはWD名古屋の強いサーブに対するレセプションの強化だった。
サーブターゲットにされる佐藤に対して、レセプションを得意とする難波が積極的にスイッチを掛けて負担を軽減。飯田も後衛時にはレセプションに参加してディフェンス力の向上に寄与する。そうして佐藤の高さとパワーを最大限に生かし、サイドアウトを取る。

「安田(瑛亮)コーチに『どんどん隆哉をカバーしてくれ』という声掛けをいただいたので、どんどんやっていこうと思って試合に入った」
難波の言葉通り、サーブレシーブ受数はチームトップの34本。相手OP宮浦健人、OH水町泰杜と日本を代表するビッグサーバーを真っ向から受けた。

「『やっぱり日本人選手じゃダメなのかな』と言われるのがすごく悔しいので『今日は絶対に勝つ』という気持ちで試合に臨んだ」
そう振り返る佐藤は、持ち前の高さでブロックはチームトップの5本。アタックも要所で力強さを見せた。

こうした狙いがハマり、第1セットを25-23、第2セットを26-24と連取に成功。中でも第2セットは飯田のサービスエースでブレイクを取った14-12以降、お互いブレイクすることなくサイドアウトを重ねた。緊張感のある中〜終盤でも集中力を切らさずに食らい付き、丁寧にプレーし続けた。

24-23のセットポイントでブレイクを許してデュースに持ち込まれるが、25-24からリリーフサーバーで出場したセッター(S)赤星伸城のサーブで崩してブロックタッチを取ると、佐藤が26点目を決めてセットを取り切った。

第3セットは19-25、第4セットは23-25と相手の強いサーブと高いブロックに苦しめられた。特に第4セットは終盤まで粘りを見せたが取り切れず、第5セットも11-15。フルセットの末に惜敗した。

「あと一歩で勝てなかったこの現実は、ちゃんと全員が受け止めないといけないと思う」。難波が振り返るように、善戦しながらも勝ち切れなかった悔しさを残した。
「頑張った」だけで終わらせない
惜敗から得た財産をどう生かすか
この2日間。昨シーズン出場機会に恵まれなかった選手たちが自身の役割を全うした。「リーグ2週目でこれだけの選手が使えたのは、チームにとってすごくプラスになったと思う」。川村慎二監督が振り返るように、第2節でそれを実現できたことは大きな意味を持つ。

出場機会を得たことで、それぞれの選手が手応えと課題を明確化。試合後会見に来た選手全員が「良い経験ができた」と振り返った。
緊張感のある試合の中での経験が、自らの基準を上げる。

「『なぜ勝ち切れなかったのか』『どうしたらいいのか』と選手自身がもっと深堀りして考えていけば基準が上がって、良い練習もできる。その相乗効果でチームがさらに強くなっていくループができたらいい」
「どんな選手が出ても勝てるチームを作り上げたい」

そう青写真を描く指揮官。チーム内競争がより活発になれば、それだけチームの総合力も上がる。「OPとOHはすごく厳しいメンバー競争がある」と佐藤が話すように、とりわけ外国籍選手のいるポジションは特に厳しい。

それでも酒井がGAME1で力強さをアピールすれば、第1節からリリーフサーバーで登場して存在感を出していた飯田もGAME2ではアクシデントで交代となった第3セット途中までアタック決定率63.2%、サーブ効果率20.5%と猛アピールした。

サイズのある日本人選手は多くはない。こと高さにおいては外国籍選手に頼る側面も否定できないが、日本人選手だけでも強豪相手にこれだけ善戦することができた。
「どうやったら勝てるかをみんながわかれば、結果がついてくる」。シーズン前に古田博幸コーチはそう話していた。

フルメンバーで連勝した開幕節。日本人選手のみで善戦した第2節。その4試合で得た経験を日々のトレーニングから落とし込んでいくのが、勝てるチームへの道のりだ。
一人一人が自身の武器を磨き続けて、その役割を全うしたとき。勝ちどきがアリーナに何度も響きわたるだろう。

SVリーグ第2節 ウルフドッグス名古屋戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div2-1
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div2-2
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461















