女子SC軽井沢クラブは悔しさを糧に 「今、ここ、自分」にフォーカスする

2025年9月のカーリング日本代表決定戦。ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪につながる大一番で、女子SC軽井沢クラブはあと一歩のところで日本代表の座を逃した。ただ、リードを務める金井亜翠香の言葉からは、悔しさを糧に成長しようという強い意志がにじむ。大切にするのは「今、ここ、自分」という言葉。チームの強みである「カーリングを楽しむ姿勢」と「爆発力」を武器に、個性豊かなメンバーたちとともに世界を目指す。
文:大枝 令
KINGDOM パートナー
迷いを振り払って臨んだ大会
「今、ここ、自分」の境地とは
2025年9月の日本代表決定戦。女子は3チームによる予選が1勝1敗で並び、助っ人に三浦由唯菜を加えた女子SC軽井沢クラブはDSC(ドローショットチャレンジ)の差で首位通過した。しかしフォルティウスとの決定戦で僅差の惜敗。「あと一歩」のところで勝ち取れなかった悔しさは今も残る。
それでもリード・金井亜翠香(かない・あすか)は、その悔しさを前向きな力に変えていた。

「悔しい気持ちを燃やして、もっと強くうまくなって、必ず次に繋げて、これからも挑戦していきたい」
大会を通じて見えたのは、確かな成長だった。
金井自身これまで大会で自分の力を出し切れないことがあったというが、今回は違った。「今、ここ、自分」という言葉を意識し、結果ではなく今やることに集中し、実力を発揮できたという。

「勝ち負け以外の目的や価値をしっかり見つめて、そこに集中できたのが、迷わずプレーできた要因だった」
メンタルトレーナーから学んだ「今、ここ、自分」。時間と空間の軸に唯一性を見い出しながら、その座標に立つ、ただ一人の自分にフォーカスする。

「自分以外に目が行っていると、『周りからどう見られているか』とか自分以外に意識がいってしまう。自分が今やることとか、本当に自分で作ることなので、そういう意味合い」と説明する。
一方で課題も明確になった。
全体的なスキルの底上げが必要だ――と金井は指摘する。「自分たちで点を落としてしまっている場面がいくつかあった。コールだったり、ジャッジだったり。カバーできるミスではあるので、そういうところをしっかり潰していけたらもっといいチームになれる」

KINGDOM パートナー
「楽しさ」と「爆発力」を武器に
個性豊かな仲間たちを金井が紹介
女子SC軽井沢クラブの強みについて、金井は「カーリングを楽しめる人たち」が集まっていることだと語る。
「みんな楽しんで試合に臨んでいて、それがチームだけじゃなくて見ている人たちも巻き込んで『楽しい』というのを伝えられている。あとは爆発力がすごくあると思っていて、優勝した時の日本選手権も今回(の代表決定戦)もそういうところは出していけた」
チームを構成するメンバーも個性豊かだ。
金井に紹介してもらった。

上野結生(うえの・ゆい/サード)
「一番のムードメーカー。もともと2年前ぐらいはリードをやっていて、ドローの部分もすごく安定している。テイクも速いウエイトも出るし、あとはスイープがすごく強くて、私のドローの石もうまく距離を伸ばしてくれる。チームのメンバー一人一人をちゃんと見てくれていて、率直な意見を言ってくれるまっすぐなタイプ」

上野美優(うえの・みゆ/フォース/スキップ)
「本当にとても真面目なスキップ。シートの情報をいつもコーチと書き込んだり、いろいろ細かいところまでやってくれる。チームをまとめてくれ、頼りになる存在。すごく頑張ってるのが伝わってくるので、自然と『支えたい』と思わせられる」
世界のトップチームと伍すために
心・技・体を磨いてリスタート
ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への挑戦が一つの区切りを終え、最年長の西室淳子はクラブを退団した。しかし、チームの視線は既に次のサイクルに向いている。
「また次の4年のサイクルが始まったとも言える。新しいスタートとして代表決定戦で得た部分だったり、その中でも成長した部分をしっかり生かして、きちんと次に繋げていく」

課題であるスキルの底上げに取り組みつつ、カナダ遠征などを通じてアイスリーディングの水準向上を狙う。世界選手権やグランドスラムなどの国際大会で世界のトップチームと戦える力をつけていくことが目標だ。
「世界のトップチームともたくさん戦って、勝てるようになっていきたい」

コミュニケーションの強化にも力を入れてきた。「アイスに乗っている以外の時間もいろいろ話して、お互いのことを知ろうとやってきた」と金井。従来は話すことが苦手だったという金井自身も、チームで対等に話し合えるようになったことが大きな成長だったと振り返る。
さらに、昨年夏からはウエイトトレーニングも強化。スイープ力の向上だけでなく、投げるフォームの安定にも繋がっているという。

日本代表の座には届かなかったが、確実に成長を遂げている女子SC軽井沢クラブ。「今、ここ、自分」を大切に、一投一投を積み重ねながら、若きチームの挑戦は続く。


























