「勝負どころの1点」は近いようで遠く 紙一重の惜敗でしか得られない“養分”

1点の重みが、ずしりとのしかかる2試合だった。VC長野トライデンツのSVリーグ男子第3節、2025年11月7-8日に代々木第二体育館で行われた東京グレートベアーズ戦。GAME1は第1〜2セットを連取。第4セットでは一時マッチポイントを握るも、セットカウント2-3とフルセットの末に惜敗した。GAME2は第3セットに39-41と激闘を演じたが、セットカウント0-3のストレート負けとなった。随所で粘りを見せながら、多くの経験を得た戦いを振り返る。
文:大枝 史 /編集:大枝 令
蘇る前節のフルセットでの惜敗
マッチポイントから敗れた第1日
東京・代々木の夜に歓喜の咆哮を上げる瞬間は、目の前まで来ていた。

2025年11月7日、東京GBとのGAME1。VC長野は第1セットを26-24、第2セットを25-19と連取。「第3セット以降は東京GBさんのサーブにすごく苦しめられた」と指揮官が振り返るように、ここからVC長野の苦闘が始まる。

東京GBのサーブで崩され、サイドアウトがなかなか取れない展開。17-25で落とし、セットカウントを2-1とする。
それでも第4セットでは終盤、21-20の局面からリリーフサーバーで登場した赤星伸城のサーブからブレイク。22-20とし、その後はサイドアウトを重ねて24-22とマッチポイントを握る。

ベンチ外の選手・スタッフも立ち上がり、歓喜の瞬間を今か今かと待つ。背番号3の酒井秀輔はユニフォームを後ろ前に着て「3勝目」の記念写真への準備を整えてすらいた。

サイドアウトを取られて24-23とするが、依然としてマッチポイントを握った状態。しかし東京GBのミドルブロッカー(MB)村山豪の放った強烈なサーブで崩され、ブレイクを取られる。

24-24のデュース。その後も粘り強く食らい付いたが、32-34と逆転でセットを奪われた。迎えた第5セットでも東京GBのサーブに苦しみ、10-15。2時間48分にもわたる熱戦の末に惜敗した。

「サーブが相手リベロ(L)の古賀選手に取られるとAパスがかなり返ってくるのでしんどい展開になる」
「ディフェンスがしっかりと機能しなかったのが第3セット以降の戦い方になってしまった」

川村慎二監督が会見で振り返ったように、第3セット以降は効果的なサーブが入らず、なかなかブレイクが取れない。デュースとなった第4セットも赤星のサーブを含めてブレイクは3回だけ。粘り強くサイドアウトを取り、食らい付いて得たチャンスだった。

「得点チャンスもあったが、そこで取り切れなかったのがすごく大きく響いたと思う」
指揮官がそう口にすれば、最年長44歳のMB松本慶彦も同様に「第3セットはサイドアウトとチームの課題でもあるブレイクが取れていなかった。そこをもう少し頑張れたら取れたかなと思う」と話す。

取り逃した――。
そんな表現では生やさしいほど、あまりにも悔しい敗戦だった。
粘って食らい付いてデュース
39-41と激闘を表すスコア
翌日のGAME2は疲労の影響か、第1セットは1度もブレイクを取れないまま15-25と大差で落とす。しかし第2セットでは序盤から丁寧に試合を進め、13-14の場面からMB安部翔大のサーブから連続ブレイクに成功。

23-22と優位を持ったまま終盤に突入したが、最後は東京GBのアウトサイドヒッター(OH)ルチアーノ・ヴィセンティンの高いブロックに阻まれて23-25。連続でセットを奪われた。

後がなくなった第3セットでも、中盤に相手に走られて一時は12-17と5点差をつけられる。
しかしセッター(S)中島健斗のサーブやリリーフサーバーで登場した飯田孝雅のサーブでブレイクを取り、24-24と終盤で追いついてデュースに持ち込んだ。

マッチポイントを握られた緊迫感の漂う中、それでも丁寧にサイドアウトを重ねる。
26-26からオポジット(OP)飯田が、31-31からはOHオスカー・マドセンがそれぞれブロックに成功。逆にセットポイントを握るシーンもあった。

それでも粘り強く戦う相手に対して、最終的には39-41というスコアで膝を折った。
試合後に指揮官は「後半はよく持ち直してくれたと思う。しかし『ここ1点』が取り切れないのが昨日、今日ですごく多かった」と1点の重要性を説く。

GAME2では松本に代わってフル出場した安部も「『ここで1本ほしい』というところで取り切れない場面が昨日も今日もあった。全員でそこを取り切るのが今後の課題になってくると思う」と大事な局面で取り切ることを課題に挙げる。

取れた1点、取れなかった1点
イージーなプレーこそミスなく
取れなかった、遠かった1点はあった。
だが、取れた1点があったのも、また確かだった。

例えばGAME1の第1セット、24-24のデュースで迎えた局面。OHマドセンの強烈なサーブで相手を崩すと、フリーボールをOH工藤有史が確実に決めて25-24。セットポイントからはサービスエースで一気に第1セットを取り切った。

一連のプレーに指揮官も「そこでしっかりとサーブを入れるオスカー選手は本当に素晴らしい」と称賛する。
例えばGAME2の第3セット、23-24でマッチポイントを握られた局面。S中島のサーブで始まったプレーでは、相手OHヴィセンティンのアタックをOP飯田が1枚でブロックタッチを取る。跳ね上がったボールをL古藤宏規が懸命に繋ぎ、相手のミスを誘った。

敗れた以上は敗因に目が向けられがちだが、取れている1点があったからこそ、接戦に持ち込めた事実がある。
MB松本も「良いところもたくさんあった。あとはイージーなプレーをミスなくやること。取れるところを取り切らなければいけない。それをどんな状況でもやらなければいけないと思う」と話す。

得点機会の多いバレーボールという競技において、最後の1点だけが全てではないだろう。当然、序盤と終盤では得点の取り方が変わってくる側面はあるが、そこに至るまでの経緯でどれだけ得点を積み上げられるか。

あのスパイクが決まっていれば――。
あのサーブが入っていれば――。
あの1本を上げていれば――。
万全な状態でコートに立てていれば――。
“たられば”の話にはなるが、マッチポイントをもっと優位な状況で迎えられる世界線もあったはずだった。

S中島が「どんなブロックのつき方をしてくるチームかを瞬時に見極めて、引き出しをもっと作っていかないと」と言えば、MB山田航旗も「最後にMBが決めていけばサイドの負担も軽くなるし、試合がもっと楽な展開で運べると思う。大事な場面で託されるようなプレーをしていきたい」と自身に矢印を向ける。

選手それぞれが、悔しさを胸に課題を挙げる。
基準が上がって得られた経験
生かすも殺すも選手次第
「よく『面白い』、『ナイスゲーム』と言われるが、それだけではダメ。やはり勝たないと」
指揮官が奮起を促せば、S中島も「何かを変えないとこのまま『いい試合だったね』という試合が増えて、勝ち切れないで終わってしまうような気がする」と焦燥感を口にする。

勝つことでしか得られない成功体験があり、それが自信へと繋がって良い循環が作られる。そういった面があるのは否めないが、選手それぞれが悔しい思いを抱えたこの節も、決して無駄にしてはならない。

GAME1の第1セットは一時13-17とリードを広げられた展開から逆転でセットをもぎ取ったし、GAME2の第3セットも12-17の局面から追いついてデュースに持ち込んだ。
デュースになってから緊張感のある中で何度もプレーを続ける経験は、決して練習では得られないものだ。

「それがどう生かされるかは各選手次第だと思う」
「これからもっともっとチーム力を上げていけるんじゃないかと思っている」
会見の最後にそう締めくくった指揮官。貴重な経験、そして味わった悔しさをどう練習に落とし込んで生かしていくか。

かつては、その緊張感ある展開にまで持ち込めるシーンが決して多くはなかった。紙一重の敗戦から初めて得られる経験を糧に、”強いVC長野”へと変貌を目指す。
シーズンが終わった時に「この経験が生きた」と笑って言えるようにしたい。

SVリーグ第3節 東京グレートベアーズ戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div3-1
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div3-2
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461















