強靭なブロックに阻まれて苦杯 それでもVC長野が示した“フレッシュな力”

しっかりと対策された一戦だった。2025年11月22日、SVリーグ男子第5節GAME1のVC長野トライデンツはANCアリーナにSTINGS愛知を迎えてセットカウント1-3で敗れた。第1セットの出だしこそ好調だったものの、相手の堅いブロックディフェンスに終始苦戦しての黒星。ただ、その中でもセッター(S)赤星伸城やアウトサイドヒッター(OH)ファルハン・ハリムが躍動した。
文:大枝 史 /編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
序盤につかみ損ねた試合の流れ
背景にあった相手の入念な対策
「第1セットは良い形でスタートが切れたけれど、絶対に点数を取れるようなブレイクチャンスで点数が取れなかった。そこでSTINGS愛知さんにリズムをつかまれたのが大きかったと思う」

川村慎二監督が試合後会見で切り出した総括だ。実際のプレーとともに振り返ると、第1セット序盤でフリーボールが返ってきたブレイクチャンスは2回あった。
まずは5-2の場面。オポジット(OP)マシュー・ニーブスの強烈なサーブで相手を大きく崩すと、コート中央にフリーボールが返ってくる。

リベロ(L)古藤宏規がS中島健斗に丁寧に返すが、OH工藤有史のパイプ攻撃は相手ブロックに阻まれる。
直前のプレーでは古藤が相手OH藤中謙也のアタックをディグで上げてブレイクに繋げていただけに、一気に勢いに乗れるようなシーンでもあった。

続いて8-5の場面。中島の放ったサーブは直接こちらのコートに返り、ミドルブロッカー(MB)松本慶彦が高く上げる。しかし、ここでもOHオスカー・マドセンのパイプ攻撃はブロックタッチを取られてブレイクに繋げられない。

この2つだけでも、STINGS愛知が中央からの攻撃に警戒を強めていたことが浮き彫りになる。前者はブロックが2枚、後者はブロックが3枚しっかりとついていた。

試合後会見でSTINGS愛知の真保綱一郎監督は「事前に対策を練った中で、サイドアウト率が非常に高かった。そのサイドアウトをいかに壊すかが我々の今日の課題だった」とうなずく。
その言葉通り、強いサーブと堅いブロックに何度も苦しめられた。第1セットでは厚くマークされているクイックをほとんど使わずに立ち回るが、サイドからの攻撃も阻まれて厳しい戦いが続く。

強いサーブでブレイクを取り、一時は21-21と追いついたが終盤に連続ブレイクを許し、22-25で第1セットを落とす。続く第2セットも22-22と終盤まで競ったが、最終的には23-25とあと一歩が届かない。

第3セットは23-23からリリーフサーバーで登場したOP飯田孝雅のサーブから連続ブレイクに成功してセットを取り返すが第4セットは終盤に相手に連続ブレイクを許し、18-25でゲームセット。
セットカウント1-3での敗戦となった。
KINGDOM パートナー
右アキレス腱断裂から早期に復帰
長いプレー時間を得た赤星伸城
相手の高いアタック決定率とブロック本数に苦しんだ一戦だったが、目に見える成果も多くあった。
その一つが第1セット13-17の場面から出場した赤星だ。「(中島)健斗のトスは好きなタイプ。自分とは逆ぐらいのスタイルでリスペクトしている」。同じポジションの中島をリスペクトしながらも、違ったトス回しで相手の対策を無効化させる。

第2セットでも途中から出場すると持ち味のツーアタックが炸裂。第3セットはスタートからコートに立つと「得意っちゃ得意」というブロックも成功させ、存在をアピールした。

指揮官も「赤星もよく頑張ってくれたと思う」とねぎらう。
チーム合流後まもなく、右アキレス腱断裂の大ケガを負った赤星。10月半ばからボールを触り始め、急ピッチで仕上げてきた。「不安はあったが、『それを出して何になるのかな』というのはある」。黙々とリハビリに励み、しっかりとコートに立つ日に向けて備えてきた。

試合後には「まだコンビは合わせられるというのはすごく感じた」と自らに矢印を向け、精度向上を期していた。
巧みさと鋭さを兼ね備えたOH
日本がファルハンを知った日
そして、第3セットから登場したファルハン。

シーズン前のトレーニングマッチから、切れ味鋭いサーブやブロックアウトを狙うテクニカルなアタックも披露。この日はアタック決定率70%に加えて、サーブのターゲットになりながらもサーブレシーブ成功率40.5%と安定したパスを供給した。

これには指揮官も「あそこまで(パスを)返すとは思わなかった。ありがたい誤算」とにっこり。同じOHの工藤、オスカーの調子が上がらない時の選択肢になるだけではなく、チーム内競争をより活発にして練習から緊張感を持たせる。

出身地のインドネシアでは、バレーボール人気が高い。来日直後には「みんながもっと応援してくれれば良いが、あまり期待しすぎないでほしい」と控えめな言葉を残していたが、プレーではしっかりとその力を示した。

かつてVC長野に在籍したリヴァン・ヌルムルキについても知っており、「彼はインドネシアのすべてのアスリートのロールモデル。私も彼のようになりたい」と先人の後を追って活躍を目指す。

「ここのバレーボールの技術はとても優れている。技術を向上させたいし、もっと安定したプレーができるようになりたい」。24歳で異国の地に降り立ったファルハン。経験を積んで成長を重ねれば、かけがえのないアクセントになるだろう。
良いプレーの「継続性」がカギ
対策を越えた先に見たい景色は
サーブの効果が一定以上あっただけに、苦みが増す敗戦。ただ、素晴らしいプレーも随所にあった。

例えば第1セットの13-15の局面だ。「今日は割り切ってブロックに行けた」と振り返る安部が相手MB岩本大吾のクイックに手を伸ばし、ブロックタッチを取る。惜しくもブレイクには繋がらなかったが、簡単には決めさせない粘り強さを見せた。

ニーブスもサーブ効果率13.3%のハードサーブを何本も入れて思い切りの良いプレーを見せたし、第2セットから出場したL難波宏治も相手の強いサーブに対してサーブレシーブ成功率57.5%と高い数字を残した。

「点数を取ったプレーではすごく良いプレーもたくさんあった。それを継続させることが今日はうまくできなかったのが一番」
「今のチームにとって良い収穫だったと思うので、それをまた一つ一つ修正して明日に繋げたい」
松本が試合後の会見で話したように、その良いプレーを継続することができれば勝つチャンスはいくらでもある。

「少なからず前までのVC長野だったら、例えば相手の外国籍選手がスタートから出てこないとか、全然スイッチが入っていないのが見てわかるぐらいのチームも正直あった。それがなくなって、相手が隙を作ってくれなくなる状態だと思う」

第4節の東レ静岡戦の前に飯田が話していた言葉が、顕著に出た一戦とも言える。ここまでの戦い方を分析され、ブロックにしっかりとつかれる。その対策を跳ね返して初めて、強いチームになった――と胸を張って誇れる。
新たな課題と収穫とともに、GAME2で再び難敵に挑む。

SVリーグ第5節 ジェイテクトSTINGS愛知戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div5-1
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461





















