今季初戦が最終テスト? 松本山雅の石﨑監督がチームづくりを急ぐ理由

静岡県御殿場市を拠点にキャンプに臨んでいるJ3松本山雅FCは2026年7月4日、キャンプ地でJFLヴィアティン三重との練習試合に臨んだ。始動日から数えて12日目で迎えた今季初の対外試合。新加入選手による3ゴールで3-0と快勝した結果はもちろん、収穫と課題が詰まった内容もチーム強化を進める上で大きな材料になることは間違いない。ただし、この練習試合を“試運転”と捉えることはできない。試合後に石﨑信弘監督が何気なく発した言葉からは、この日の90分間に込められた大きな意味が浮かび上がった。
文:板倉 就五
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「形をつくっていく」
指揮官が発した言葉の意味
練習試合前日。石﨑信弘監督は翌日のメンバーについて「ミックス」と明かした。
主力かサブかの線引きをせずにチーム構成を決めるという意味だ。「新しい選手を混ぜこぜにする」とも話し、新旧戦力の融合を図る狙いで組み合わせを決める方針を示した。

百年構想リーグを終えて2週間のオフを挟んだだけとはいえ、9人もの新戦力を迎え、全選手の3分の1が入れ替わったチームは昨季とは別モノと捉える方が自然だ。
主力の固定化が進んだ昨季の序列はリセットされ、新たな競争が始まる――。まずは開幕スタメンの座を懸け、横一列でスタートラインに立ったと多くの選手が考えていたはずだ。

指揮官の言葉通り、別メニュー調整中の選手を除くフィールドプレーヤー21人を2チームに分けた練習試合のメンバーは、昨季のリーグ戦出場時間を物差しにすれば「ミックス」されていた。
30分間を計3回行う中で大半の選手が45分間の出場機会を与えられ、チームメイトとの連係を確認しながら自らをアピール。立ち上がりは多くの選手がボールを欲しがるあまり、うまく攻守が機能しないほどだった。
プレーの成否は度外視し、始動日からチームが積み上げてきたことを出そうとしたかどうかを焦点に試合を見つめていた石﨑監督。尻上がりの内容に「良かったんじゃないの」と前向きな受け止めを示した。
この練習試合を踏まえて、残りのキャンプ(7月10日まで)で大事になることは何か――。
そう問われた指揮官は、少し踏み込んだ。

「今日出た課題をどう改善していくかということ。それと…」
「今日はごちゃ混ぜでメンバーを組んだけれど、来週のトレーニングからは限定と言うのかな、ある程度形をつくっていく」
――平等に機会を与えるのではなくて、ポジションをつかみ取る選手が出てくるということですか?
「そうだね。だんだんと」
その言葉が示す意味は、今季最初の対外試合が、開幕に向けて主力を固めていく最終テストの意味を含んでいたということに他ならない。
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開幕までの短い準備期間
穴を埋める見極め最優先
石﨑監督が「形をつくっていく」ことにスピード感を持たせている理由は二つある。
一つは準備期間が短いこと。Jリーグの全60クラブを見渡しても、6月第4週に始動したクラブは数えるほどしかない。今季の松本山雅は、フィジカル強化に特化したメニューよりも戦術を落とし込む実戦的な練習に時間を割いている。

もう一つは、二つのポジションにチームを形づくるカギがあると考えていることだ。
今季を前に、昨季の主力を担った4選手が上位カテゴリーのクラブに移籍して抜けた。中でも、トップ下に入り攻守に躍動したMF村越凱光(J2テゲバジャーロ宮崎に完全移籍)と、中盤で汗をかいてセカンドボールを拾い続けたアンカーのMF深澤佑太(J2湘南ベルマーレに完全移籍)が抜けた影響は大きい。
この穴を埋めることができれば戦える――。百戦錬磨の指揮官は、そう計算しているのではないだろうか。

練習試合でトップ下のポジションに入ったのはFW井上愛簾。FW田中想来とFW藤枝康佑も流れの中でトップ下を担ったが、これはトップ下で出場予定だったMF金子翔太が、ケガ人が出た影響でシャドーに回ったためだ。
アンカーでは、MF松村厳とMF力安祥伍、MF渋谷諒太の3人が試された。
練習試合を終えた選手たちに受け止めを聞いた。

「(トップ下もシャドーも)どちらでもできる。前向きでボールを受けて仕掛けにいくシーン、ミドルシュートを打ちにいくシーン、2列目から飛び出すシーンは、あまり出せなかった」(金子翔)
「バランスを取りながら、うまく(味方をプレスに)出していくところがつかめていなかった。守備の部分、攻撃をつなぐ部分、全然納得していない」(力安)
「ボールを奪いにいく強みは意識したけれど、奪った後の攻撃でつなぎのミスがあった」(松村)
ここには書かなかった選手を含めてポジティブな受け止めも言葉にしているが、総じて現状に満足せず、課題を挙げる姿勢が印象的だった。
待ち受ける真夏の過密日程
監督による採点結果はいかに?
石﨑監督は、選手個人の評価を並べ立てるようなことは日常からしない。この日も「(金子)翔太はトップ下だけではなくてシャドーでも使ってみたいと思っていた。だから(想定外の起用になったことも)良かったんじゃないか」と言及した程度だった。

取材を終え、報道陣の輪から離れていく石﨑監督は、近くにいた松村を呼び止めて立ち話をした。時間にして数分間。何を話したのだろうか。
「とにかく前にプレーしてほしいと言われた。横パスやバックパスだけではなくて、フィードや縦パスをもっと入れていってほしいと」
石﨑監督が松村に求めた内容は、松村自身が挙げた課題と合致する。

そのやり取りをもって、最終テストの合否を推測することは難しい。ただ遠からず、一人一人の選手に下した現時点での判定が、練習での組み分けや対外試合での起用方法となって目に見える形で現れてくるはずだ。

J3開幕前の8月2日に長野県選手権決勝があり、その試合に勝てば8月は天皇杯全日本選手権が最大2試合入ってくる。J3リーグ戦と合わせ、真夏の1カ月間で最大7試合の過密日程に臨まなければいけないことになる。「やっぱりスタートは大事になる」と石﨑監督。白星と勝ち点を積み上げてスタートダッシュを決め、勢いを持ってシーズンに向かっていく重要性を強調する。

そのためにも急ピッチで進めているチームの形づくり。テストの答案用紙に、指揮官はどんな赤ペンを入れたのだろうか。
松本山雅FCオフィシャルサイト
https://www.yamaga-fc.com/
松本山雅FC 御殿場キャンプレポート
https://www.yamaga-fc.com/archives/550557


















