“ミツバチ軍団”の新たな巣 上田西高サッカー部は土を卒業して人工芝へ

全国高校サッカー選手権大会で長野県勢最高のベスト4の実績を誇る“ミツバチ軍団”が、新たな巣を作り出した。上田西高は2026年6月から、グラウンドの人工芝化に伴う工事を開始。9月に完成を迎えた。約1億円の工事費用を賄うべく行ったクラウドファンディングでは、当初の目標金額である300万円の2倍以上となる653万1千円で着地した。全国高校選手権県大会3連覇に向けて機運が高まっている。
文:田中 紘夢
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OBの力も借りて目標超え
上田わっしょいで黄色い声援も
「最初は『ギリギリかな』と思っていたのに…。どんどん増えていって感謝しかない」
クラウドファンディングのリーダーを担った田島虎之介(3年)は、積み上がる金額に驚きを隠せなかった。

サッカー部OBの大久保寿幸さん(菅平プリンスホテル専務理事)の知恵を借りて立ち上げたプロジェクト。大久保さんは過去にラグビー合宿の聖地・菅平高原の支援を募る「WE ARE スガダイラーズ PROJECT」を立ち上げ、6千万円以上の寄付金を集めた実績を持つ。
ラグビー合宿の聖地と高校のサッカー部となれば、規模感は大きく異なる。当初の目標金額は300万円と低めに見積もっていたが、1カ月足らずで突破。目標を500万円に上方修正してても、653万1千円と大きく超えた。

「すごく応援されていることが分かって嬉しかった」と田島。OBを中心に設立した一般社団法人・西蹴会からも手厚い支援を受けたという。17年に全国高校選手権ベスト4を選手として経験したGK小山智仁さんもその一人だ。
周知活動で地域を巡った際にも、さまざまな応援の声が届いた。毎年恒例の夏祭りである「上田わっしょい」にも参加。キャプテンの浅野航大(3年)は見ず知らずの親子に写真を求められ、心が温まったエピソードを明かす。

「いつもは自分がプロ選手に写真やサインをお願いする立場だった。そこから写真をお願いされる立場になって、『応援してもらうってこういう気持ちなんだ』と感じた。嬉しかったし、『もっと頑張らないとな』と思った」
チームカラー通りの“黄色い”声援を浴びた選手たち。クラウドファンディングの活動を通して、資金だけではない強力な後押しを得られた。
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人工芝で進めるチーム強化
夜間照明完備で地域への開放も
9月に人工芝のグラウンドが完成し、16日に初練習を行った。当日はあいにくの雨となったが、土のグラウンドなら中止を余儀なくされるところも、人工芝であれば問題はない。水を含んだスリッピーなピッチで、選手たちは「ボールの滑りが良い」と声を弾ませた。

田島は「ボールが跳ねないのが一番良い」と利点を挙げる。従来であれば石が転がっていてイレギュラーが起きたり、ケガを恐れたり――。思うようにプレーできない側面もあったという。
そんな心配も解消され、思うがままにピッチを駆け抜けた。ケガの影響で初日を欠席した浅野も「早くやりたい」と話すように、選手のモチベーションは高い。

グラウンドの北側には、ウォーミングアップができるスペースを用意。女子サッカー部の練習にも活用できる。公式戦の開催や練習試合の誘致も現実味を帯び、チームの強化にも繋がるに違いない。

照明柱を6基完備しており、夜間の使用も可能。近隣のクラブチームにも貸し出す予定だ。白尾秀人監督は「自分も指導者としてできることはやりたい。地域に根付くような環境になれば」と青写真を描いている。
新たな巣でも「初心を忘れず」
県大会3連覇へひた走る
チームは9月26日から始まる全国高校選手権県大会に向けて、新たな“巣”で調整を進めている。「今までのように雨で中止になることもないので、ボールを触る回数が増えると思う」と浅野。より技術の向上にも目を向けられるだろう。

元来の武器である走力も欠かせない。グラウンド工事の間は上田市内の古戦場公園に赴いていたが、学校から3キロ弱の距離をランニングコースとして活用。「最初は歩いていたけれど、走ったほうが頑張っている姿が伝わるんじゃないか」という指揮官の思惑もあったそうだ。
土のグラウンドが雨で使えない時も、室内を走り続けてきた。「走力は人工芝になっても捨ててはいけないところ。初心を忘れず泥くさくやっていきたい」と浅野は力を込める。“ミツバチ軍団”という二つ名の通り、全員攻撃・全員守備のコンセプトは変わらない。

9月9日には長野Uスタジアムで行われたルヴァンカップを観戦。J1水戸ホーリーホックに所属するOBのFW根本凌が、長野県に帰ってきた。2017年の全国高校選手権ベスト4の立役者を見て、同じFWの浅野は「すごく刺激をもらった」と目を輝かせた。
県大会での目標は3連覇。県高校総体とU-18県リーグ1部では思うような結果を残せていないだけに、白尾監督は「選手権は譲れない。この環境で最大限やれることをやっていきたい」と語気を強める。ミツバチ軍団は新たな巣で、その針を尖らせていく。























