“90分間ボールが動き続ける”サッカーを 新生・長野がいざ初陣へ

2025年2月15日、明治安田J3リーグがいよいよ開幕する。12年目のJ3を戦うAC長野パルセイロは藤本主税新監督を招へいし、キャンプから攻守にアグレッシブなスタイルを築いてきた。16日にアウェイで行われるテゲバジャーロ宮崎との開幕戦を前に、現状の完成度などを検証していく。

文:田中 紘夢

人とボールが動き続けるサッカー
「うまくなる」ことが大前提

「攻守をよりアグレッシブにしたい。もう1段階、もう2段階上げられる印象はあるので、徹底的にやりたい」

就任会見の際、藤本監督はそう口にしていた。

大枠は昨季と変わらない。攻守において足を止めず、アグレッシブにゴールへと向かうサッカー。鋭利なハイプレスからのショートカウンターは健在で、むしろ奪いに行く鋭さが増している。システムも同じ3バックのため、大きな違和感はない。

ただし、テイストは異なる。昨季のボール支配率は20チーム中19位。ボール保持に固執せず、むしろ非保持の際に強みを発揮していた。守備から攻撃への切り替えが早く、ボールを奪えばなるべく手数をかけずに攻め込んだ。

そんな昨季と比べれば、よりボール支配率は上がってくるはずだ。始動からパス&コントロールやポゼッションなどの基礎演習を徹底。「これでもか」と言わんばかりにパスを繰り返してきた。

「選手がうまくなって、強くなって、初めて戦術が成り立つ」

就任会見での言葉の通り、戦術以前に技術がなければ成り立たない。とりわけ始動から3日間はそこに重点を置いたが、藤本監督からすれば「ゲームでやってほしいテクニックだったりプレーのところをやっているだけ」だった。

練習のオーガナイズも特徴的だ。ウォーミングアップは各自に委ね、いきなりロンドやポゼッションから始まる。「とにかくボールをたくさん触ってほしい」と指揮官。2時間におよぶトレーニングの中で、選手がボールに触れる機会は多い。

その根幹にあるのは、「プレーし続ける」という考え。藤本監督は人とボールが止まることもそうだが、余計なファウルも嫌う。ホールディングやプッシングの反則を受けた選手に対し、「それじゃうまくならないよ」との声も聞かれた。

「とにかく90分間ボールが動いていないと嫌なので、ファウルで止まるのは好きじゃない。ファウルで止めているようだと、それでしか止められなくなる。当たり前のことを伝えている中で、選手たちが少しでも『そうだな』と思ってもらえたら」

あくまで人とボールが動き続けるのがモットー。繰り返しになるが、昨季よりもボール支配率は上がりそうだ。

“産みの苦しみ”を味わいながら
スキルアップを遂げて開幕戦へ

選手たちがうまくなっている実感もある。

例えば2列目の三田尚希や小西陽向は、相手の間でパスを引き出すようなタイプではなかった。それでも中央の密集地帯でボールを受け、前を向いたり、サイドに散らしたりする場面は増えた。

小西は昨季も2シャドーの一角でプレーしていたが、今季は3-3-1-3のトップ下にも挑戦。より中央でプレーすることによって、必然的にボールを引き出す役割も求められる。サイドアタッカーの安藤一哉や田中康介もシャドーに入るなど、個々のプレーエリアは広がりそうだ。

もっとも、ポジションはあくまで“ベース”に過ぎない。状況に応じてシャドーとウイングバックが入れ替わったり、3バックが攻撃参加したりと、昨季以上にバランスを崩す機会は多くある。人とボールが動く中で、パスのテンポも上がっている印象だ。

「一人ひとりの技術は上がっている」とゲーム副キャプテンの忽那喬司が言えば、同キャプテンの大野も「近くだけじゃなくて遠くも見られるようになってきている。去年よりレベルアップしている感覚はある」と話す。

一方、“産みの苦しみ”も味わっている。

1月中に行われた練習試合では、3試合で19失点。その多くが自陣でのミスから始まった。

2月4日のU-20日本代表戦もそうだ。45分を3本戦って1-3と敗れたが、全3失点の起因はボールロスト。中盤で奪われたり、GKの縦パスをさらわれたり――。技術や判断に問題があった。

「奪われないように攻撃するのもそうだし、リスク管理のところもそう。数的不利でもGKと協力しながら守れることはあるので、開幕までの期間で磨いていきたい」

センターバックの大野佑哉が言うように、ボールを奪われないことが大前提。とはいえ、より主体的にボールを動かそうとしている以上、ミスも付きものだろう。奪われた後のリスク管理も含めて徹底していきたい。

戦術以前に技術がなければ成り立たず、それはあくまでシーズンを通して積み重ねるもの。公式戦でもミスからの失点は起こるだろうが、チャレンジしなくなってしまえば元も子もない。指揮官の言葉を借りれば、「プレーし続けること」を止めてはならない。

チームは2月11日、2次キャンプの地である宮崎県綾町に入った。ここから5日間の調整を経て、アウェイでテゲバジャーロ宮崎との開幕戦を迎える。新チームの幕開けにふさわしく、人もボールも動き続けて勝利をつかみたいところだ。


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