0-5の大敗から43日 なぜAC長野はダービーでリベンジできたのか

2026年4月26日、J2・J3百年構想リーグ第12節。AC長野パルセイロは、松本山雅FCの緑に染まった敵地でライバルから白星をもぎ取った。その43日前にホームで臨んだ信州ダービーでは0-5の屈辱的な大敗を喫し、サポーターによる応援自粛や監督交代に発展。再びオレンジの誇りを取り戻すためには、今季2度目の直接対決で雪辱するしかなかった。わずか1カ月半の間にチームの何が変わったのか。1-0で完封勝ちしたダービーの90分間からチームの変化と成長を考察した。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
強みを封じ、隙を突いて1-0
“魔の8分”で示した確かな成長
今季最初の直接対決となった3月14日の第6節。AC長野は松本山雅の強みに屈した。
強度の高いプレスからのカウンターと、精度の高いセットプレー。攻守の脆さにとことんつけ込まれ、歯止めが効かなかった。
前回対戦後に就任した小林伸二監督は「0-5で負けているから(松本山雅は)強い」とライバルの実力を認めるところからスタート。いかに相手の強みを封じ、どう隙を突くかにポイントを置いた。

今回は立ち上がりからロングボールを多用してハイプレスを回避。FW吉澤柊のポストプレーを生かして前進し、カウンターを受けるリスクも最小限に抑えた。
ボールを失った後の切り替えも早く、3月のように松本山雅の走力に置き去りにされることはない。前半は相手陣地に押し込む展開が続き、CKは1本も与えなかった。

勝負の分岐点は後半早々に訪れた。
立ち上がりから押し込まれ、56分から立て続けに5本ものCKを与えた。際どいシーンもあったが、「みんなから『ここだぞ』という声が出ていた」とGK田尻健。11人全員で守勢に耐えた直後の65分、DF田中康介の思い切ったミドルシュートで得たCKからMF長谷川隼が先制点を挙げた。

小林監督が「本当によく乗り切った」と称える8分間に、確かな成長が見て取れた。
松本山雅の5本のCKのうち、ファーストボールでシュートを打たれたのは1本のみ。ニアサイドで172cmのFW進昂平が防波堤となり、ファーサイドに流れたボールは170cmの田中が頭でかき出す。重量級FW加藤拓己をマークした167cmのMF近藤貴司も体を密着させて自由を与えなかった。

「大きい選手に対して、小さい選手でも競れば(相手のバランスは)崩れる」という指揮官の教え。それを流れの中でも体現した田中は練習の成果を強調する。
「あのCKもファーに身長の高いセンターバックがいて、いつもだったら受けに回っていたかもしれない。それでもボールにいけているところでは、毎週チョーさん(長島裕明ヘッドコーチ)にクロス対応の練習もしてもらっていて、そういうものが身に付いていると実感している」
KINGDOM パートナー
スタメン5人変更もなんのその
今季初先発の2人が見せた気概
松本山雅の強みであるカウンターとセットプレーを封じ、1-0のクリーンシートを達成。前回対戦の0-5から変化を見せただけでも価値は高いが、それだけではない値打ちも付いた。

松本山雅戦は、直前のいわきFC戦からスタメンを5人変更。出場停止やアクシデントもあり、キャプテンのMF藤川虎太朗も副キャプテンのDF大野佑哉も欠場した。それでもベストメンバーの松本山雅に勝利し、小林監督は「5人代わっても、こうやってできるのはすごくうれしい」と頬を緩める。
新たに名を連ねた5人のうち2人は今季初先発。MF古賀俊太郎は開始2分でFW加藤にタックルを見舞って宣戦布告した。それをベンチから見ていたMF忽那喬司は「あのワンプレーでチームが活気付いた。いけそうな気配しかなかった」と振り返る。

第4節からケガで欠場が続いた古賀だが、大舞台での先発復帰に懸ける思いは強かった。「前回(のダービー)はピッチに立てなかったので、『自分がいれば大丈夫だ』というのを見せたかった。ファーストパンチを打てるように意識していた」と明かす。
同じく初先発のDF冨田康平も存在価値を示した。昨季はフィールドプレーヤーで最長の出場時間を記録したが、今季はベンチやメンバー外が続いていた。「いつでもパフォーマンスを発揮できるように準備していたからこそ勝利に繋げられた」と胸を張る。

最終ラインの左サイドが主戦場のレフティーだが、この日は右のセンターバックで起用された。練習でもほぼ経験がなく、本人は「不安もあった」と吐露したが、持ち前のスピードを生かして相手の攻撃を零封。小林監督も「初めてのポジションで頑張ってくれた」と感謝した。
「小手先は通用しない」
ダービーから学びを得て5連戦へ
メンバーが大幅に入れ替わろうが、不慣れなポジションを託されようが、選手たちが勇敢な獅子であることは内容と結果で示した。監督交代前の4試合で17失点していたチームが、交代後の4試合ではわずか2失点と好転。“昇格請負人”と評される小林監督の手腕は疑いようがない。

「小手先のサッカーでは通用しないと分かれば、こういうゲームができると思う。選手がすごく戦ってくれたことに感謝している」と指揮官。就任から4週間という短期間で、体の向きや立ち位置などの原理原則から見直し、週1回のペース走で戦える基盤を作ってきた。
「伸二さん(小林監督)が来てから守備が整理されているし、良い方向に進んでいると思う」とチーム最年長の近藤。堅い試合運びからセットプレーでの1点で勝ち切り、「また一つ成長できた」と充実感を漂わせる。

とはいえ、この1勝はあくまで通過点に過ぎない。就任会見の際に小林監督は「ダービーでどうやって伸びるかが大事」と話し、学びに変えることを強調していた。今回の1-0も、前回対戦の0-5から学んだ結果。ダービー翌日のミーティングでも「一生懸命やった君たちが勝ち取った。ちゃんとやればこういうことができるんだ」と継続を促したという。

チームは松本山雅戦を皮切りに、15日間で5試合を戦う過密日程に突入した。「今は誰が出ても勝てる気しかしない。全員が自信を持ってやれている」と忽那。ピッチを駆ける選手たちの表情に、もう“あの日”のような陰りはない。
4/29(水) AC長野パルセイロ vs 福島ユナイテッドFC ホームゲーム情報https://parceiro.co.jp/info/detail/M1pscQfuseRRO6S8kc0QqkpjQ0JXQ2x5OFlVRHNIV1pKLVpNWlFraXVNM2lWcjFva3loZG82YzQ5RUE
















