刺激を与え合うWin-Winの合同練習 AC長野U-18×ボアルース長野U-18

クラブと競技の垣根を越えた活動が行われた。AC長野パルセイロU-18とボアルース長野U-18が、2025年1月29日から合同練習を実施。週に1回の活動を通して、互いに刺激を得られた様子だ。今回はその狙いと効果を両チームに聞く。

文:田中 紘夢

双方に生まれるメリット
冬場の環境確保にも一役を買う

「以前から育成の面で、『冬の期間だけでも交流して盛り上げられないか』という話はあった。本当は去年もやりたかったけど、今年は具体的に提案させてもらった」

そう明かすのは、今年からAC長野U-18を率いる勝又慶典監督。ボアルースの土橋宏由樹ゼネラルマネージャー(GM)との対話の中で、合同練習の案が生まれたという。

今冬は幸いにも雪の影響が少ないが、冬季は積雪などの影響で屋外トレーニングが困難な場合も少なくない。とりわけ夜間は厳しい寒さにも見舞われる。キャプテンの塩入尚悟は「(室内トレーニングは)全然暖かくてありがたい」。

それだけではない。

「フットサルの技術は、サッカーに近しいところもたくさんある。『少しサッカーとは違うかな…』と思っていたけど、想像以上にサッカーの要素が強い。選手たちも考えながらプレーするようになった」

FW出身の勝又監督が例に挙げるのは、ゴール前での崩し。フットサルは基本的にマンツーマンとなるため、数的同数の状況をいかに打破するかが求められる。

技術的なアドバンテージがあるAC長野は、グループ戦術というよりも個人戦術を生かしてゴールへ。狭い局面でもテクニックやアイデアが光った。

ボアルースにとっても、得られるものは大きい。技術で勝る相手に対し、「自分たちはミスから攻められることが多かった。もっとパスを正確に通さないといけない」と諏訪間健輔。グループ戦術では上回れる一方、個人戦術に課題を感じたという。

相手にフットサル特有の規則性がない分、やりづらさもある。「いつもだったら空くところが空かなかったり、逆に空いたり…。より相手を見ながらプレーしないといけない」と小林大晃監督。攻守において臨機応変さが求められた。

AC長野の元10番がボアルースへ
「止める・蹴る」の高い技術を披露

サッカーとフットサルは似て非なる競技。サッカーからフットサルに転身した選手に話を聞いても、「別物」という声は多く聞かれる。

「ルールもそうだし、コートとかボールの大きさもサッカーとは違う。そういうところは難しかった」

そう話すのは、ボアルースU-18の宮本凰世(3年)だ。昨年末にAC長野U-18を離れ、フットサルに転向。サッカーの公式戦が一通り終わった段階で、新たなチャレンジを決意した。

サッカーとフットサルの違いに苦しみながらも、ここ数カ月で徐々に順応。3月2日に行われたセカンドチーム(ヴォルメリオ)の北信越フットサルリーグ1部2部入替戦にも出場し、2ゴールでチームを1部残留に導いた。

「彼が加入してくれたことによって、チームとしてのレベルも上がった」と小林監督。サッカーもフットサルも足でボールを扱う競技であり、足元の技術は必要不可欠と言える。その点に関してはAC長野の選手たちに分があり、宮本についても「県内の中では『止める・蹴る』のレベルが高い」と評した。

AC長野では10番も背負っていた宮本。合同練習という形でかつての戦友たちと再会し、「相手は個人のレベルが高いので、守備強度の面でも良い練習になった」と話す。

今後の目標は「ボアルースのトップチームに選ばれるような選手になること」。トップチームには松本山雅FC U-18出身の中村亮太や丸山裕輝ら、サッカー出身者も数多く名を連ねている。彼らに追い付き、追い越すためにも、「コツコツと頑張りたい」と力を込めた。

クラブと競技の垣根を越えて
新たなシナジーを生み出せるか

全国的にもサッカーチームがフットサルを取り入れる例はある。

隣県の帝京長岡高(新潟)は、冬場に体育館でフットサルを行う。豪雪地帯というデメリットを逆手に取り、室内でテクニックの向上に重きを置く。現在は国内屈指の高校サッカー強豪校に成長した。

それと同様に、AC長野U-18も冬場を有効活用したいところ。ましてや同じ県内にFリーグのクラブがあるのだから、その環境を生かさない手はない。

「ボアルースと一緒に長野を盛り上げていく意味でもそうだし、育成の面で提携できるのはメリットしかない。これからもどんどん携わっていきたい」と勝又監督。クラブ間の繋がりを深めるフックにもなれば本望だという。

ボアルースの小林監督も、「めちゃくちゃ良い練習になった」。大会でいわゆるサッカーチームと戦うことはあるものの、練習をともにできるのは貴重な機会。「自分たちにとってはすごくありがたいし、良い刺激をもらえた」と口にする。

今後も冬場に限らず、継続的なセッションを模索していく予定。今回はゲームのみで混合する形となったが、より幅広いトレーニングで手を組むことができれば、新たなシナジーも生まれてくるだろう。クラブと競技の垣根を越えた活動は、さらなる広がりが期待できそうだ。


AC長野パルセイロクラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
ボアルース長野クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/

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