“絶体絶命の窮地”で殻を破った米村尚也 F1残留の救世主となり集大成の舞台へ

起死回生の一撃だった。ボアルース長野はF1リーグ最終戦でシュライカー大阪に1-1と引き分け、他会場の結果を受けて残留。チームを救う同点弾を決めたのは、在籍5年目の米村尚也だ。開幕早々に左足第5中足骨骨折を負った32歳は、いかにして“救世主”となったのか。劇的な残留劇を経て、2026年3月14日に開幕する全日本フットサル選手権で集大成を迎える。
文:田中 紘夢/編集:大枝 令
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残留もたらす“殻破り”のゴール
米村が3年ぶりF1で見せた進化
負ければ降格、勝てば残留に望みあり――。2026年2月27日、F1リーグ最終戦となる第26節・シュライカー大阪戦。ボアルースは崖っぷちに追い込まれていた。
第2ピリオドの開始11秒で失点。しかし瀬戸際のチームを、32歳の米村尚也がすくい上げた。

失点からわずか2分後。右サイドで走り出した米村のもとに、野口茅斗から絶妙なロングパスが届く。米村は右足のハーフボレーで捉え、ゴール左隅に沈めた。起死回生の一撃で1-1と引き分け、翌日に他会場の結果を受けて残留が決まった。
「自分の得意な1対1が攻略されたときにどう打開するか。監督からも後ろで停滞するんじゃなくて、前にどんどん入ってほしいと言われていた。あの時も今までだったら出し手に回っていたと思うけど、最後の最後に新しい形を見せられた」
米村の強みは左サイドに開いての1対1と、フィクソ(サッカーのセンターバックに相当)としての配球。右サイドで走り出す姿はある意味、彼らしくない。むしろアラ(サイドハーフに相当)の野口茅斗と稲葉柊斗が得意とするところだ。
ただ、F1は強みだけで戦えるほど甘くはない。それは米村自身に限らず、山蔦一弘監督も感じていた。

「ヨネ(米村)はチームとともにF2で2年間戦ってきた中で、悪く言えばぬるま湯につかっていたかもしれない。今シーズンは練習から『変えよう』と努力していたと思うし、今まではあんなに深い位置まで入り込むことはなかった。それをずっと求めてきた中で、最後の最後に勇気を出してくれた」
第21節のフウガドールすみだ戦でも、米村のランニングが勝利を呼んだ。稲葉のピヴォ当て(サッカーのFW相当にパスを当てる形)から今野遼介がボールを落とし、3人目の動きで抜け出した米村がフィニッシュ。チームはこのゴールで1-1と追いつき、最終的に逆転勝利を収めた。

殻を破る2つのゴール。本人も手応えを口にする。
「泥くさく走り込む。ゴール前に絡む。そこが必要だと思わされたシーズンだったし、それを意識してきたからこそ、今までにないシチュエーションでゴールが取れた。選手として新たな形を与えてくれたヤマさん(山蔦監督)だったりマサさん(山本優典コーチ)にはすごく感謝している」
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味方の手も借りて右肩上がりに
「個人的に最後の立役者は…」
シーズンを総じてみれば、決して順風満帆ではなかった。
開幕直前に左足第5中足骨骨折を骨折して全治3カ月。1カ月半後に驚異的なスピードで実戦復帰を遂げたものの、なかなかコンディションが上がらない。「これで戦っていいのか」との思いが胸中をよぎりもしたという。

それでも後半戦から加わったガリンシャの力も借りながら、パフォーマンスは右肩上がりに。リーグ最終戦で貴重な同点弾を決め、チームを残留に導いた。週間MVPにも選ばれる活躍ぶりで、「本当に残留できてよかった」と安堵感に浸る。
手を差し伸べてくれたのは、ガリンシャだけではない。ラスト2試合はコンディション不良によって彼のプレータイムを限定。代わってピヴォに入ったのは、25歳の今野だ。最前線からのハードワークで勝ち点2をもたらした。

「個人的に最後の立役者は(今野)遼介だと思う。ガリ(ガリンシャ)が来て出番が少なくなっても、練習からくさらずにやっていた。もちろんガリとのホットラインもあるけど、遼介も自分が当てたいタイミングを分かってくれる。このチームは誰が出ても戦えると思っていた」
ポイント起用の渡辺大輔と岡本生成も含め、全員の力を集約してつかんだ残留。チームの雰囲気や周囲の反応を見て、在籍5年目の米村は「こんなに価値があることなんだ」と再認識したという。

「自分はこのクラブで残留も降格も経験してきたけれど、やっぱりトップリーグで戦うことには価値がある。それを守っていくためにも、来シーズンに向けてしっかり準備しないといけない」
根本的な課題と向き合いながら
集大成へ「もう一度ひとつに」
最後は他会場の結果を受けて残留。山蔦監督は家族とともに現地で見守り、その瞬間を迎えた。長野に帰っても安心感は絶えない様子だが、胸中には「まだまだ足りないものだらけ」と危機感も抱いている。
最終盤は米村をはじめ、ベテランの活躍が目立った。彼らのクオリティを称えつつ、若手の底上げが物足りなかったのも否めない。

「長野という土地において、そもそも人材の絶対数が少ないというハンデはある。有望な選手を獲るにしても、生活拠点を崩してまで来てもらうことになるので、他クラブよりも労力をかけないといけない。それはボアルース長野というクラブ単体だけじゃなくて、長野県のフットボールにおいてもそう」
一朝一夕にはいかない課題と向き合いながらも、当面の目標は達成できた。残すは3月14日に開幕する全日本フットサル選手権。アマチュアチームも交えた“真の日本一決定戦”だ。

残留への重圧から解放された後の全日本選手権は、プレッシャーが少ない状態で戦えるだろう。この大会をもって、長年クラブを支えてきたGK岡島工と渡辺大輔が引退。彼らに花を持たせるためにも、指揮官は「もう一度ひとつになれたら」と力を込める。
クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/
JFA 第31回全日本フットサル選手権大会
https://www.jfa.jp/match/alljapan_futsal_2026/
















