活躍の舞台はB1、そして世界へ 止まらない狩野富成の“ビッグ・フライ”

バスケットボール男子日本代表の日本生命カップ2025(東京大会)直前合宿が2025年6月27日、味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)でメディアに部分公開された。その中には信州ブレイブウォリアーズで腕を磨いた狩野富成も参加。シーズン中の渡邉飛勇とのやり取りを振り返りつつ、目指していた舞台でしのぎを削る“トヨ”の今を追った。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
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憧れの舞台・日本代表に初招集
トム・ホーバスHCも「楽しみ」
日本中の精鋭が集まる舞台でも、狩野の存在は際立っていた。
自身初となる日本代表の舞台。この日の練習で足首を捻ってしまったという狩野は、練習後のシューティングには参加していなかったものの、周囲とのやり取りや表情から充実感がにじんでいた。

6月13日から始まったディベロップメントキャンプにも招集され、そのままA代表の強化合宿にも残り続けている。
シーズン終わりからノンストップ。疲労も気掛かりだが、ここまでの手応えを尋ねると、いつも通りの柔らかな表情で語った。
「楽しい。めっちゃ学べるし、やっぱり成長できるところが一番の経験。経験を得られるということがめちゃめちゃうれしい。信州での成長は実感できているので通用するところもある」

PROFILE
狩野 富成(かの・とよしげ)2001年10月6日生まれ、東京都出身。幼少期を日本で過ごした後はアメリカで育つ。スカイラインカレッジ出身で、2023年にサンロッカーズ渋谷と契約締結。同年にB3の徳島ガンバロウズへ期限付き移籍した。23年12月、公式戦で右前十字靭帯断裂。信州に期限付き移籍した今季、9月17日に練習に完全合流した。高さと機動力が魅力の日本人ビッグマン。「トヨ」の愛称で親しまれ、快活な性格でチームを盛り上げた。25-26シーズンはサンロッカーズ渋谷への復帰が決まっている。206cm、105kg。
昨シーズン中は渡邉飛勇の影響も受けながら、徐々に日本代表への思いを膨らませてきた狩野。
「選ばれた時は、ワクワクや『楽しみ』という気持ち、緊張感も強かった」と明かしつつ、「『いつ(日本代表に)呼ばれたい』とかはなかったけれど、『絶対にどこかのタイミングでは行きたい』という気持ちはあった」と話す。

トム・ホーバス・ヘッドコーチ(HC)に選出した理由を尋ねた。
「彼は面白い。(代表)には日本人のビッグマンが少ない。シーズンを通しても狩野にはプレータイムがあり、アスレティックに走ったり、跳んだりできる選手だから楽しみ」
「思ったよりもできるし、使えそう。飛勇ともすごく似ている」
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“ブラザー”渡邉から出された宿題
代表メンタリティの発見はいかに
まさしく渡邉とは今季、信州のツインタワーとしてインパクトを残してきた。狩野から渡邉へのアシストや、逆に渡邉から狩野へのアリウープパスなどは鮮烈な印象を与えた。
時には良き相棒として、またある時は良きライバルとして。膝に手をつきながらも切磋琢磨を続けてきた。

この2人の話と言えば3月11日、熊本ヴォルターズ戦GAME2後の記者会見が思い出される。
渡邉の会見に参加した狩野が、“狩野新聞”と名乗り、メンタルの成長について真剣な表情で質問した一幕。それに対して渡邉も真剣な表情で「トヨ、代表に行って自分で見つけてください」と短く返答した。

そのやり取りから4カ月弱、渡邉からの課題を胸にNTCの門を叩いた。実際に代表合宿で最高峰の選手たちと汗を流しながら、課題のヒントは見つけられたのだろうか――。
狩野は少し間を開けながら、「学べているんですかね。まだあまり実感はないです」ときっぱり。
とはいえ、既に代表という環境でプレーしているからだろうか。本人はそう回答するものの、内から湧き出る自信が、バスケットボールプレーヤーとしての前進を感じさせた。

実際に合宿初日から怖気付くことなく、持ち味である豪快なダンクを披露。周囲のメンバーを驚かせたという。
同じく豪快なダンクや力強いフィニッシュを得意とし、長年代表活動を続ける馬場雄大も、そのポテンシャルを評価する。

「面白い選手でしかないと思う。あのサイズであそこまでの身体能力があるビッグマンはなかなか出てこなかった。日本の将来を担ってくれるビッグマンになるかなと思う」
狩野も「それしかないので、逆に(笑)。やっぱり印象を残してナンボ。メンバーに残りたいし、印象を残して、それを常にやり続けることをこの合宿では集中している」。初選出だが出遅れていない様子だ。

勝久マイケルの教え子たちが共演
兄弟子“鷹大”ホーキンソンも期待
かつて信州に3年間在籍したサンロッカーズ渋谷のジョシュ・ホーキンソン(日本名・鷹大)との共演も、信州界隈からは大きな注目を集めている。
狩野も来季からはSR渋谷への復帰が決まっている。“勝久マイケルHCの教え子”たちによる共演が、一足先に代表の舞台で実現した。

今や日本のバスケ界をけん引するホーキンソンも狩野と同じく、勝久HCやウェイン・マーシャルから多くを学んだ弟子の一人。
そんな兄弟子のホーキンソンも、狩野についてコメントした。

「一緒に練習するのは今回が初めての機会。マッチアップも多く、本当に可能性を秘めた選手だと思う。昨シーズンと比べてすごく成長しているが、この合宿が彼のゴールではない。なのでここまでの成長を誇りに思うと同時に、彼のこれからの活躍が本当に楽しみ」

狩野も、“兄弟子”ホーキンソンの背中を見つめる。
「ジョシュとは信州へ行く前に一度話したことがあるぐらい。今はまだめっちゃ仲が良いというわけではないけれど、大先輩なのでいろんなことを学んでいきたいと思う」

この日は両者とも取材の時間が重なっており、信州で大きく成長した2人がそれぞれメディアに囲まれて取材を受けていた。信州ブースターにとっては感慨深さがあるかもしれない。
今後はここに渡邉を加えて”信州トリオ”の実現も夢ではない。

渡邉が成長すれば、狩野も大きく飛躍する――。
その成長曲線は代表に身を置くことで何倍にも加速し、自身の中に「経験」という富を成す。

ホワイトリングを沸かせた豪快なダンクとブロック。そして愛嬌――。代表活動を通じて多くを吸収する狩野。B1の舞台も、そして世界すらも、熱狂の渦に巻き込んでくれるだろう。

Bリーグ 選手個人成績 狩野富成
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=42616
Bリーグ チーム紹介ページ
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