アリーナを“Dauminate” 大型新戦力マイク・ダウムは「クールなリーダー」を目指す

“Dauminator”ことマイク・ダウムが、満を持して信州にやってきた。NCAA(全米大学体育協会)ディビジョン1で、史上10人目となる通算3,000得点達成の偉業を成し遂げたフォワード兼センターだ。勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)が獲得を熱望し、圧倒的な能力と優れた人間性を併せ持つ“支配者”。初挑戦となるBリーグでどのような活躍を見せるのか。その言葉に耳を傾ける。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
練習から試合のように取り組む
勝久HCが「一目惚れ」した逸材
練習では積極的に声を出し、一つ一つのポゼッションからこだわって丁寧に追求する。そんな姿を見せたかと思えば、練習後はチームメイトとともにハーフコートからのシュート対決で笑顔を見せる。
支配者(Dominator)をもじって“Dauminator”の異名を取るダウム。初めて日本に来て間もないとはいえ、新たな環境に自ら飛び込もうとする姿がそこにはあった。

新しい挑戦に対して充実感を口にする。
「チームとしての一体感がすごく練習から表れている。ファンのみなさんも僕たちがコート上で楽しんでいる様子をきっと楽しんでもらえると思う」

PROFILE
マイク・ダウム(Mike DAUM) 1995年10月30日生まれ、アメリカ合衆国ネブラスカ州キンボール出身。プロバスケットボール選手だった母の影響で競技を始めて高校から専念すると、サウスダコタ州立大学では、サミットリーグ最優秀選手賞を2度受賞。NCAAディビジョン1史上10人目となる通算3000得点を達成。卒業後はヨーロッパを渡り歩き、今季はキャリア初となる日本でのプレーを選択した。圧倒的なスコアリングと、精神的な柱として期待が懸かる。206cm、107kg。
プレースタイルも万能型。フィジカルを生かしたゴール下はもちろん、3ポイントシュートもお手のものだ。
「マイケルバスケ」のお家芸とも言えるピック・アンド・ロールや、ピック・アンド・ポップといった戦術とも相性が良いスタイルで、得点を積み重ねる姿が容易に想像できる。
信州と自身のプレースタイルを重ね、感謝と意気込みを口にする。

「(勝久HCの)オフェンスでは自分がすごく多く関わる形になると感じていて本当にありがたい。今季はプロ選手として初めて大学時代のように自分のプレーを発揮できると思うので、それは自分にとってもチームにとっても大きな強みになると感じている」
勝久HCにとって、ダウムの獲得は長年の思いが叶った瞬間でもあった。

「我々が昔B2にいた頃、彼がルーキーの頃から実は一目惚れして『絶対に来てほしい』と思っていた選手。チャンスがある度にオファーをしていた選手だったが、なかなか難しかった」
「この夏も変わらずアプローチした時に、『チャンスがありそうだな』と感じることができた。本当にスペシャルなプレーヤーで、そんな選手がみなさんの前でプレーできることが本当に楽しみ」

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ダウムの人間性とチームへの思い
「みんなが頼れる存在でありたい」
水原KTソニックブームと対戦した9月13日のプレシーズンゲームで、早速自身の価値を証明した。
スタッツを見ると、30分30秒の出場で25得点8リバウンド6アシストを記録。第3クォーター(Q)には3ポイントシュートを連続で沈め、劣勢を跳ね返した。

その半面、ターンオーバーは6個を記録。特にゴール下ではスマートな判断に欠ける場面も見られたなど、チームへのアジャストや状況判断はこれからさらに磨かれる部分だろう。
試合後、勝久HCもそれについて言及した。

「彼がこのリーグでどうやってアドバンテージを作れるかを彼自身がより深く理解することが大事。多く見られたと思うのが、悪い角度でスクリーンをかけて結局起こるのはポストアップだけでそこで止まってしまうシーン」
「どういうカバレージを相手に、どういう角度で、どういうタイミングで、どういうロールの仕方で…というのを全てうまくやればチームでアドバンテージができる。素晴らしい選手なので良いプレーは絶対にできる」

ダウム自身もまだまだ思い通りにいかないこともあったはず。それでも試合では最後まで表情を曇らせずに、チームメイトとコミュニケーションを取っていた。
その姿勢の裏にはダウムの人間性とチームに寄せる思いが隠れていた。
「僕はずっと楽観的な人間で、それが自分のスタイル。小さい頃から何があってもあまり落ち込んだりせず、前向きなエネルギーをバスケットボールに持ち込んでいる」

「そういうポジティブさが活躍できる理由でもあって、チームメイトやコーチたちと一緒にいるのが本当に楽しいし、この仕事がすごくやりやすくて面白い」
試合だけでなく練習でも常にエネルギーを発する。プレシーズンゲーム前後の姿を比較すると、より中心選手としてチームに溶け込んでいる印象だ。

「リーダーになりたいし、いわゆる『クールガイ』として試合中に何が起こってもみんなが頼れる存在でありたい。みんなを繋ぎとめて、チームが勝つために貢献できる存在になりたいと思っている」
2週間後に迫った開幕に向け、加速度的にアジャストしている。その圧倒的なスキルとリーダーシップで勝利を呼び込み、信州ブースターの心だけでなく、Bリーグ全体も取り込めるか。

英語の“nate”は「〜の状態にする」という意味を持つ接尾辞。“Dauminator”はまさしく、コートを「支配」して「ダウム状態」に変えていく。
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/