「水を得た魚」のように躍動 3年目のエリエット・ドンリーが示す“SHINKA”

コート全体を駆け回ることで、真価を発揮する。信州ブレイブウォリアーズのエリエット・ドンリー。加入して今年で3季目。1年ずつ着実に実力を伸ばしているドンリーが、今季はさらなるブレイクの予感を漂わせている。その背景にあるものは何か――。チームスタイルの細かな変化に加え、内発的な“SHINKA”について掘り下げる。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
加入3年目で存在感をじわり発揮
構想通りのスタイルでブレイクへ
「(ケガは)段々良くなってきて、今はもう良い感じ」
2025年11月5日。取材に対して、エリエット・ドンリーはコンディションを笑顔で明かした。
在籍2年目だった昨季はプレーオフ(PO)クォーターファイナルの鹿児島レブナイズ戦で、ふくらはぎにけがを負った。回復傾向にあった中で、今季当初に再度同じ部位を痛め、プレシーズンと開幕戦の出場を見送った。

復帰したのは第2節のアウェイ・熊本ヴォルターズ戦。限られたプレータイムの中でも得点を重ねて存在感を発揮した姿からは、3年目の頼もしさがにじみ出ていた。
今季のドンリーは、昨季よりも積極的にゴールへ向かっていくシーンが多く見られる。それはチームとして役割に変化があったのか、自信の表れか――。

開幕前。勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)はドンリーの活用方法について言及していた。
「3年前、当時のマック(アンソニー・マクヘンリー)、ジョシュ(ホーキンソン)、ウェイン(マーシャル)時代の我々のスペーシングとバスケットを彼にイメージさせて誘った」
「この2年間でも成長した部分はたくさんあるけれど、ケガ人の多さから彼にとっては良いスペーシングではなかった。今年やっと本来使いたい状況の中でプレーができると思うので、それはとても楽しみ」

長身を生かしつつ、コート全体を駆け回る。流れの中での力強いドライブやゴール下での得点、そして外角のシュートも得意とする。ディフェンスも前線から当たれる脚力を併せ持ち、時にはブロックも記録する。
それがドンリーの特徴だ。実際、昨季の中盤戦から進化の予兆はあった。自らも、本来のスタイルでプレーできることについて手応えをつかんでいる。

「マイケルさんのバスケの良いところは、みんながボールを触って、お互いがプレーして、そこから判断することができるところ。そういう点では僕にはもっと向いているかなと思っている」
「コーナーからのシュートばかりではなく、動きから判断したり、カッティングをしたり。僕自身もチームに来た最初よりもちゃんとできていると思う」

今季は攻撃のテンポも速まってパッシングが増加したことで、よりドンリーが得意とするプレーとも親和性が見られる。
「システムも少し変わった。その中でやっぱり僕の武器はドライブだと思うので、そこから正しい判断、もっと良い判断をしてターンオーバーも減らしていけるようにしたい」
KINGDOM パートナー
頼れるエリートバイリンガル
キャリア6年目の責任も胸に
3年目ともなると、勝久HCが求めるバスケットに対する理解も進む。プレーの安定性が高まるだけでなく、リーダーシップを発揮してチームを引っ張る姿も見られてきた。

「チームに長くいる、いないに関係なく、『ここは良くなかったよ』『もっとやろうよ』みたいにみんなが話せるようなチームを作りたいと最初から思っていた」
「特に僕は日本語と英語が話せるから、通訳ではないけれど両方の言葉でちゃんと伝えられることが大きいと思う」

ドンリーが言うように、特定の選手が意見を言うのではなく、さまざまな選手が意見を出してプレーを改善していく。その姿勢が今季、とりわけ多く見られている。
バスケットボールに限らず、コミュニケーションは重要。言いづらいことも指摘できるか、不満を共有できるか――で、組織のクオリティは大幅に変化するとも言える。

「去年はベテラン選手もいたので、みんなが話さなければいけないという立場ではなかった。でも今年は、みんなの歳もそんなに離れていないからこそ、はっきり言い合えるチームになってきたと思う」
「今年は結構みんな仲良くご飯とかに行く。『若手のエネルギー』という言葉をよく使っているけど、みんな気を遣わないで話せる。もっと仲良くなっていけば、チームももっと強くなる」

28歳。ドンリー自身も今季でプロキャリア6年目を迎える。
「まだまだ若いという気持ちはあるけれど」と笑いつつ、「ベテランではないけれど、責任感を持っていきたい」。そう語る面持ちは、心なしか精悍さを感じさせる。
そんなドンリーはここからのシーズンを、どう過ごしていきたいのか。

「やはり毎日を大事にして、日々の練習でステップバックしないようにしていきたい。シュートが入るかどうかじゃなくて、『成長できた』という気持ちで毎日行けば、最後のPOで一番良いバスケができると思う」
「ここからもっとうまくなれる。良い練習をしてうまくなって、もっと結果を残したい」

表情も、話し方も――。3年目を迎えて自信が内からあふれ、大きく成長したような回答が詰まっていた。
15-16日は東地区首位の福島ファイヤーボンズをホームに迎える。チーム状況が厳しい中、ドンリーがけん引役の一人となるのは間違いないだろう。そして激戦の中で、さらなる進化を起こすはずだ。

ホームゲーム情報(11月15-16日、福島ファイヤーボンズ戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20251115_20251116/
Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/club_detail/?TeamID=716&tab=1
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/


















