買い、祈り、おもてなす――試練に直面した松本山雅・サポーターのうねり

「何か自分にできることはないか」。アルウィンの鉄骨部材落下による使用停止に伴い、松本山雅FCの試合日程などが不透明になっていることを受けて、サポーターからは多様なムーブメントが起き始めた。グッズを積極的に購入して売上に貢献しようとしたり、地元店舗がテゲバジャーロ宮崎のサポーターに特別サービスを企画したり――。松本山雅を支える“草の根運動”を取材した。

文:大枝 令

グッズのオンライン販売が急伸
“overhead fes”コラボ内容変更

「微力程度にしかならなくても 山雅のグッズ買いますか」

「誰か利益率高いグッズって何とか分かりますかね?」

次節の中止が発表された10月8日。ほどなく、SNSにそんな投稿が流れ始めた。

株式会社松本山雅のグッズ担当者に取材すると、「8日の夜から動きが出始めた。動き方が普段とは明らかに違う」と明かす。公式オンラインショップでの受注が増えただけでなく、注文1件あたりの個数が多いのだという。

そして新グッズも10日に発表された。

本来であれば中止になった12日の代替試合で売り出す予定だったが、「少しでも早いタイミングでお客さまの元に届けられればと思った」とグッズ担当者。部分的にオンライン先行販売に踏み切った。

グッズ全般は今季、近年にない好調な業績だったという。

スタジアムでサポーターの声を聞きながら商品や展示などに各種の改善を実施。ディスプレイ方法を立体的にしたり、決済方法の選択肢を増やしたり――。こうした工夫に加え、60周年記念グッズが追い風となっていた。

「これからもお客さまの声を聞きながら、喜んでもらえるようにしていきたい」。今後は60周年記念グッズの最終企画を残すほか、今回の使用停止を受けてアルウィンをあしらったグッズも計画段階だという。

中止に伴い、近隣イベントへの関与を強めた。松本山雅が協力に名を連ねる第1回目の「overhead fes.2025」だ。

11-13日に信州スカイパークやまびこドームで行われる音楽フェスの会場で、コラボグッズを販売。従来は試合会場のみでの販売を予定していたが、フェス会場でステッカーと缶バッジ、ガーランドを売り出す。

12日は中止試合のチケット/シーズンパスを提示すれば3,000円で入場可能になる「山雅応援パス」を販売する。従来は試合後のみ適用の「アフターパス」だったのを変更した。

クラブ担当者は「行く場所がなくなった方々も、会場に来てもらえれば山雅を感じられると思う」と来場を呼びかける。

街では“宮崎サポもてなし運動”
「今できることをやる」姿勢で

試合4日前の中止決定を受け、信州松本のホスピタリティも発露した。

宮崎県から想定される交通手段の飛行機は券種によって変更やキャンセルができない場合も。そこで、試合がなくても松本を楽しんでもらおう――と、複数の店舗が特別サービスを企画した。

松本市中央のラーメン店「麺州竹中」では、宮崎サポーターにラーメン1杯無料サービス。SNSで発信したところ多くの反応が寄せられ、店主の根本弥さんは「自分がアウェイサポの立場だったらガッカリする。少しでも『来てよかった』と思ってもらいたい」と話す。

自身は古くからのサポーター。近年の低迷などにもどかしさを募らせるものの、応援したい気持ちは変わらない。

「松本山雅にはやっぱり街を元気にしてもらいたい。この体たらくにムカついてはいるけど、今回は大ピンチ。全サポーター一丸で乗り越えないと」

根本さんの投稿に呼応するようにして、他店舗でも動きが出始めた。

松本市中央の和菓子店「藤むら」は、「くるみそ焼きもなか」3個入りを1人1つずつプレゼント。信州松本の味噌を使った焼き菓子だ。宮崎県在住を証明できるものか、テゲバジャーロ宮崎のグッズなどを提示する。

松本市大手の「大名町のはんこや 木下製印社」では、「信濃の国の御朱印」を宮崎サポーターに贈る。通常時もアウェイサポーター向けに同様のおもてなしを行っており、今回は試合が開催されなくても実施する。

木下匡晃さんは今回の狙いを説明しつつ、山雅への思いも改めて口にする。

「試合はできないけれど、せっかくだから松本観光していこうと来てくださるのならうれしい。信州の思い出の一つにしてくれれば」

「今年は山雅60周年。ある意味厄年なので、いろんなことがあるのは仕方ない。地元のチームは何があっても応援するもの。何があっても辞めることはないし、これからもできる限りのサポートはしていきたい」

松本市寿豊丘のキャンドル工房「kotobukirokets(コトブキロケッツ)」では、蜜蝋キャンドルを宮崎のサポーターにプレゼントする。地産の蜜蝋を使用した一品で、県外の観光客からは人気の商品だという。

このほかSNS上では、「#prayforALWIN」というタグをつけてアルウィンの写真を投稿する動きも活発になっている。

10月10日現在も今後の見通しは立っていない。ただ、そうした困難なシチュエーションでも「できることをやる」を体現。チームの現場も同様のスタンスで、タフな状況を跳ね返せるか――。信州松本の底力が問われている。


新グッズ販売のお知らせ
https://www.yamaga-fc.com/archives/510298
喫茶山雅飯田店限定ボンフィン販売のお知らせ
https://www.yamaga-fc.com/archives/511253
2025 EPSON MONTHLY MVP 9月度受賞記念グッズ 受注販売のお知らせ
https://www.yamaga-fc.com/archives/510885
「プレーヤーズキービジュアルグッズ」受注販売のお知らせ
https://www.yamaga-fc.com/archives/511259
松本山雅FC×「オーバーヘッドフェス2025」 コラボ企画変更のお知らせ
https://www.yamaga-fc.com/archives/511167
オーバーヘッドフェス2025公式サイト
https://overheadfes.com/

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