皇后杯・大阪MV戦に学んだ信州Aries “徹底する力”浸透させて強靭なチームへ

圧倒的な格上から無上の刺激を得て、Vリーグ連覇に向けてリスタートした。ルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズは2025年12月13日の皇后杯ファイナルラウンド2回戦で、SVリーグの初代王者・大阪MVに0-3で敗れた。その後トーナメントを制して優勝した相手が「ガチンコ」で襲ってきた一戦。そこから見えてきた成長の余地とは――。
文:大枝 令
KINGDOM パートナー
屋根のような高さに対峙した一戦
第2〜3セットの善戦に手応えも
「高いブロック――というレベルじゃない。屋根みたいだった」
アウトサイドヒッター(OH)田中瑠奈は、大阪MVのブロックに舌を巻いた。昨季までSVリーグのNEC川崎に在籍していた27歳にとっても、そのインパクトは絶大だった。
相手は198cmのミドルブロッカー(MB)サマンサ・フランシスなど主力が居並ぶ。成田郁久美監督は「SVリーグを戦うメンバーで(最初の)2セットはスタートしていただいて、大変ありがたかった」と振り返る。

第1セットは9-25という圧倒的な大差で取られる。「1セット目は身構えてしまって、普通だったら取れるボールがどうしても取れない…というのも先入観であったかもしれない」とOH目黒愛梨。ただ、そこからは切り替えた。
第2セットは21-25、第3セットは20-25。20点台まで乗せる粘りは見せた。
結果的にストレートで敗れはしたものの、田中は「2〜3セットはちょっと慣れてきたというか、やり切るしかないという雰囲気が出てきた。できたことを自信にしていけたら」と前を向く。

高い。強い。うまい――。
それらは百も承知。ただ、実際にコートで対峙してこそ皮膚感覚で理解できることも多い。例えば…と、指揮官はいくつかの要素を挙げる。
「ブロックが空いたコースにしっかり強打を打ち込める。ワンコースしか空かない状況になっても、『そこしかない』というところにしっかり打ってくる」
「点を取りに来る――という部分。こちら側の状況がどうとかではなく、有無を言わさず点を取りに行くべきところに言い訳がない」

まずこれらの要素を抽出し、成田監督は「もっと厳しく、自分で逃げ道を作らずにやるべきだと思った」と学びを口にする。
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高い視座からの現在地を再確認
得られた教訓の一つは「徹底力」
ただし自分たちのサイズが急に上がるわけでもなければ、いきなり技術が向上するわけでもない。だからと言って、歩みを止めていい理由にはならない。指揮官は「背が高いからとか能力が高いから…で終わらせてはいけない。どうしたら近付けるのかを感じてほしい」。

その意味で、レベルは違えど意識できる最大の学びが一つある。「徹底力」だ。成田監督が説明する。
「レベルの高いチームであればあるほど、組織としてのルールをすごく徹底している。戦略として『こうしよう』と言ったことを、チーム全員が理解している」
「それをできるだけのスキルを持っていることはもちろんあるけれど、それでも徹底する力は私たちも見習わないといけない部分だと思った」

サーブ&ブロックを例に挙げると、サーブターゲットに対するズレの誤差をさらに小さくする余地が残る。ブロックに関しても指揮官は「やると言ったことはやろうとするべき」と強調。「守・破・離」の「守」をまず浸透させることが、次なるステップへの第一歩となる。
その先に、新たな地平が開ける。
成田監督は「うちのチームは1本こうされたから、すぐ崩れてしまう」と指摘。そこで浮き足立つのではなく、うまくいかなかった理由を考えて次の手を打てるか。それがチームの目指す形になっているか。

「目の前の一本に振り回されるのではなく、チームとしてやろうとしている形になっているかどうか…という視点で物事を見られるようにならないと、自分たちで試合をコントロールするのは難しい」
「うちはSVリーグの選手みたいに全員が全員高いレベルでできるわけではない。苦手なものがあるし、ムラはどうしても出てきてしまう。そうだとしても、チームとして決めたルールはやはり徹底していかないと」
Vリーグ女子では無傷の16連勝。しかし大阪MVに挑んだ一戦は、高い視座からの現在地をあぶり出してくれた。
向上心に火をつけ、いざ北海道へ
成田監督にとっては古巣との一戦
実際、選手たちも刺激を受けたようだ。
例えば目黒。自身は昨季までSVリーグの群馬に所属し、7セットの出場経験を持つ。それでも今回の一戦は、よりシビアな水準への向上心に火をつけた。

「(大阪MVは)チームとしての組織的な動きもあったし、やっぱり選手個人の選択肢がすごく多かった。そこはアリーズも持ち帰れたと思うし、自分ももう一回、上を見て目指していきたいと思った」
そうして再び日々を紡いだ先に、連覇への道がより鮮明に見えてくる。

次戦は12月27-28日、北海道釧路市でアルテミスと対戦。皇后杯で喫した久々の黒星から得た教訓を生かす、年内最後のゲームだ。 そして成田監督にとっては、クラブ創設から3シーズン指揮を執った古巣とのカード。首位独走でなお貪欲に成長を求めるチームを率い、極寒の地を王者のピンクで彩る。
チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484




















