“練習は嘘をつかない”が“一朝一夕にはいかない” 今季初の練習試合が照らした道程

千里の道も一歩から――。百戦錬磨のベテラン指揮官・石﨑信弘監督を新たに迎えた松本山雅FC。2026年1月25日、J2栃木シティFCと初の対外試合を栃木市内で行った。重点的に取り組んできたアグレッシブな守備の手法をある程度は発揮。ただ第一歩を踏み出したばかりで、指揮官は引き続き守備の浸透にプライオリティを置く方針でいる。J2・J3百年構想リーグの開幕まで2週間に迫ったものの、焦らず足場を固めることになりそうだ。
文:大枝 令
KINGDOM パートナー
「トレーニングの方がキツい」
実戦で体感できた練習の効果
練習は嘘をつかない。
そんな格言が四肢に染みわたる、貴重な時間だった。大卒から在籍6年目のDF宮部大己が、納得の表情で振り返る。
「トレーニングの方が遥かにキツいから、初回の練習試合にしては疲労感が少なかった。(高強度の)トレーニングをしている意味がわかった」

この試合は離脱中の2人を除く27人が出場した。1人当たりの出場時間は30〜45分と短めではあったが、それも差し引いての皮膚感覚。石﨑監督の代名詞とも言える「フィジテク」をはじめとするトレーニングの効果が、早速実戦でも表れた。
2本目にゴールを決めたFW渡邊乃斗も同調する。
「間違いなく思うのは、試合形式をほとんどやっていないのに身体が動けている――ということ。気付いたら強くなっている感覚になった」

初のトレーニングマッチで実感できた効果が、またトレーニングに打ち込むためのモチベーションとなる。渡邊が続ける。
「練習はやっぱり間違いじゃなかった。そこに自信を持って、もっともっとやらなきゃ…と思えた」
最古参7年目となるMF村越凱光も同様。「思っていたよりキツくなかった。日々の練習の成果で、切り替えの早さとか球際のところはできたと思う」と声を弾ませた。

石﨑監督が要求するのは高い位置から奪いに行くアグレッシブなディフェンス。それを体現するには走力の強化が不可欠で、立ち上げ以降は守備の落とし込みと並行して日々ハイインテンシティなトレーニングを積んできた。
KINGDOM パートナー
獰猛な守備に挑戦して一定の成果
「前への矢印」強める余地は多々
この日の陣形は3-1-4-2。メンバーは完全にシャッフルで、「主力」や「控え」などの色分けは皆無のフラットなゲームとした。
2トップが積極的にボールホルダーを置い、中盤3人も前に出てハントを試みる。

1本目はFW加藤拓己とFW井上愛簾のプレスからミスを誘発し、ショートカウンターを狙った場面も。3バック左右の縦スライドで栃木シティのFW田中パウロ淳一に裏を取られた場面もあったが、この段階でチャレンジしてのミスは許容範囲だった。
実際にこの日の指揮官は、「チャレンジすること」の重要性を強調して選手を送り出していた。「せっかくの練習試合なのでミスを恐れず、消極的なミスは少なくして、チャレンジしてのミスは全然OKということだった」とMF澤崎凌大。その意味ではまず一歩目を踏み出せたと言える。

石﨑監督は「まず前に行く意識はある程度改善できた。下がるんじゃなくて前に出た時に、穴ができる。そこを次の人がケアしてスライドする。その部分はずいぶん意識できている」と一定の評価。その一方、道のりが簡単ではないことも改めて浮き彫りとなった。
ハーフタイムに立ち位置の修正を加える前の1本目、左右のウイングバックが自然と最終ラインに吸収されて5バックを形成していた――と指揮官は指摘。実際、相手のサイドバックにプレッシャーをかけられていないシーンが散見された。
攻撃はほぼ未着手。ただ石﨑監督は、バックパスの頻度についても苦言を呈した。
「わざわざプレッシャーを受けるようなバックパスをしてピンチになっている。前半もそうだし、後半も失点したシーンがバックパスから始まっている。前に選択肢がないわけじゃない。そこの判断、まず前を選択する意識は改善点」

“石﨑スタイル”を体現するにあたり、「前へのベクトル」を攻守にわたって伸ばしていく作業が必要となる。守備はある程度のアグレッシブさを出せたものの、チーム全体としてベクトルをそろえることが不可欠。日々の積み重ねから意識、精度、タイミングなどを高めていくしか道はない。
「トレーニングでどれだけ意識して改善できるか。(選手たちは)けっこう素直そうじゃけど、中には頭が固い選手がいるかもしれない」と指揮官。一朝一夕にはクリアできない難題と言えそうだ。
引き続き守備を重点的に強化
目先に囚われず積み上げる日々
1月5日の始動から、基本的に松本市内でのトレーニングはフィジカルと守備がほとんどとなっている。「今は守備に全振りしている」と村越。2月7日に迫ったJ2・J3百年構想リーグの開幕から逆算すると、チーム構築の進捗状況はかなり“じっくり”と言える。

しかし、石﨑監督はあくまで土台作りの重要性を強調。鹿児島キャンプでも引き続き守備に優先順位を置くことを明かした。
「試合が近いのに攻撃しないのか?と言われるかもわからんけど、結局『ディフェンスも攻撃も』では中途半端になる。まずはディフェンスのベース。特に失点が多かったチームだし、そこを改善できればなと思っている。ちょっと厳しいけど」

とりわけ今季はハーフシーズンの特別大会で、J2勢とも対戦する。実際に2月7日の開幕戦も、昨季J1昇格プレーオフに進んだRB大宮アルディージャが相手。なみいる格上に伍していくためにも、まずは足元を見つめて着実に積み上げていく。
それも結局は、毎日のトレーニングが全て。この日の45分×2本で得られた収穫と課題を入念にフィードバックしつつ、温暖な鹿児島に場所を移して鍛錬の日々を送る。練習は嘘をつかない――。それを実感できたからこそ、練習にもさらに身が入るはずだ。
【練習レポート】今季初の対外試合 新スタイルの浸透度は(ヤマガプレミアム)
https://yamaga-premium.com/archives/366136
トレーニングマッチの結果【vs栃木シティ】
https://www.yamaga-fc.com/archives/523014
1次キャンプ トップチームスケジュールについて
https://www.yamaga-fc.com/archives/521766














