“運命の背番号19”を背負って 高卒4年目の田中想来が「捲土重来」を期す

自身にとって特別な「19」を背負い、心機一転のシーズンを迎えた。松本山雅FCのFW田中想来。昨季はチームトップの9得点を挙げるなどで脚光を浴びたものの、リーグ後半戦はゴールから遠ざかって尻すぼみした。高卒4年目、アカデミー育ちのストライカー。新指揮官・石﨑信弘監督のもとで充実の日々を送りながら、捲土重来を期す。
取材:大枝 史/文:大枝 令
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小松蓮だけではない「19」の意味
アカデミー時代に憧れた人物とは
「今年から背番号19に変えて戦う田中想来です。偉大な先輩と同じ番号をつけて、勝利にゴールで貢献できるように頑張ります」
2026年1月12日、松本山雅の新体制発表会。壇上に立った田中は、約2,000人のサポーターに向けて力強く宣言した。

「偉大な先輩」とは、J1ヴィッセル神戸のFW小松蓮だ。タイプこそ違うものの、同じ県内出身のストライカー。2018年にアカデミー出身のトップチーム選手第1号となり、23年には19得点を挙げてJ3得点王に輝いた。そして25年夏、J2ブラウブリッツ秋田から神戸に電撃移籍した。

田中も、その背中を見てきた。23年に小松が日々の取り組みを一変させてストイックになったのを、高卒ルーキーとして目の当たりにしていた。「筋トレとか、生活面でやることを変えなかったからこその活躍。知っている範囲で、頑張って(小松の)やり方を真似している」。昨年の段階で、田中はそうコメントしていた。

その先輩と同じ番号を、自らが背負う。
「背番号を変えたのは自分の中で覚悟の表れ。去年は9点取ったけれど、今年取れなかったら『運が良かったね』と言われるだけになってしまう。今年に懸ける思いは多分、ほかの選手の中でも個人的にはすごく強いと思っている」

ただし、田中にとっての「19」は、それだけではなかった。そのルーツは、中学3年生の時。当時ジュニアユースの選手だった田中の目に、ユースで19をつけていた高校2年生のあるストライカーが眩しく見えた。
「センターフォワードで一番うまかったし、本当に何でもできる選手だった。カッコ良かったし、『この人みたいになりたい』と思った」

その選手の名前は、松村厳といった。現在はトップチームでともに戦う仲間。今でこそボランチやセンターバックを務めるが、当時は最前線で輝きを放っていたのだという。その姿に憧れていた。
だから、ユース昇格の際も密かに「19」を希望していた。そして思いが通じたのか、初めて配られたユニフォームの背番号は19。「そういうこともあって、個人的には19番には強い思い入れがあった」と振り返る。その後に小松蓮の存在が、田中にとって運命的な番号に引き上げた。
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石﨑監督のもとで「鍛造」の日々
「毎日、全身が筋肉痛」と手応え
自身にとっての「特別」が凝縮された番号を背負い、新たに迎えるシーズン。苦い終わり方をした昨季と同じ轍を踏むつもりはない。
昨季はリーグ前半戦でゴールを量産。前半戦だけで9点を挙げて得点ランキングの上位を争い、4〜6月には3カ月連続の月間ヤングプレーヤー賞に選ばれるなど脚光を浴びた。

しかし、前半戦ラストゲームの第19節・ザスパ群馬戦を境にゴールから遠ざかる。
第23節FC琉球戦ではラストプレーの絶好機でシュートが枠外に飛び、第36節FC大阪戦では最終盤に得たPKを止められた。スタメンの座も奪われ、途中出場ばかり。そしてチームもJ3で15位と不甲斐ない成績に終わった。

「『戦えていない』と言われてしまうシーズンの終わり方をしてしまったのがすごく悔しいし、その中でピッチにも立てていなかった自分がいた」
だから、今年こそ――と鼻息は荒い。
「最高の監督も来てくれたし、自分が先頭に立って戦う姿勢を見せられるシーズンにしたい」

百戦錬磨の石﨑信弘監督が就任しただけでなく、新加入選手も15人と大きくモデルチェンジした新シーズン。田中は昨季まで個人で筋トレに取り組んでいたものの、今年は全体練習のメニューをこなすだけで精いっぱいの疲労感だという。「毎日、全身が筋肉痛。本当に鍛えられていると思う」と明かす。
石﨑監督の代名詞とも言える「フィジテク」の洗礼も早々に受けた。立ち上げ2日目の1月6日。DF二ノ宮慈洋やMF渋谷諒太とともにメディカルチェックを受けて練習に不在だった日、埋め合わせとして指揮官直々のフィジテクを消化した。
「めちゃくちゃキツいけれど、すごくいい練習だと思う。身体の操作とか、無理な体勢でボールを扱う技術とか…シンプルなように見えてすごく考え込まれている」
音を上げつつ感想を口にする田中。ただ、最後に「でも、やりたくはないです」と苦笑交じりに付け加えるのを忘れなかった。

鍛造の日々を積み重ね、まずは個の力を蓄える。「個々が強いチームが強いと思うし、土台がしっかりする。それで誰が出ても走り負けない、抜かれないチームになれば絶対に強くなれると思う」。そう語る口ぶりは、確信にも似た力強さを感じさせる。
ただ、FW陣の競争は熾烈だ。1トップか2トップかはまだ不透明だが、加藤拓己、井上愛簾、藤枝康佑とタイプの異なるストライカーが新たに加入。渡邊乃斗ら既存組も心機一転の日々を送る。

「いろんな色のFWがいる。チームが一つになってそれぞれの色をかみ合わせる中で、僕なら裏抜けやゴールに向かう動きを強みとして出していけば、絶対にチャンスは来る。自分の強みをしっかり監督にアピールして、試合に出られるようにしたい」
運命の「19」を背負って駆け出した新シーズン。進化と真価を示すべく、全身をいじめ抜く日々を送る。













