「驕らず、怯まず、溌溂と」 桜色の王者は“3種の力”で連勝街道をひた走る

王者たるゆえんを示した。Vリーグ女子で全勝のまま首位をひた走るルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズ。2025年12月6-7日に上田市自然運動公園総合体育館で行われた2位・JAぎふリオレーナとの上位対決で両日とも白星を挙げ、開幕以来の連勝を16に伸ばした。「修正力」「総合力」そして「人間力」という、3つの「力」に焦点を当てて強さの要因を探る。
文:大枝 令
KINGDOM パートナー
「修正力」さえてGAME2は完勝
サーブ&ブロックで上位対決制す
桜色のつむじ風は収まる気配がない。
8連勝中のJAぎふを迎えた今節。GAME1こそ2セットを先取されてフルセットの接戦にもつれ込んだものの、GAME2は会心のストレート勝ちを収めた。
「相手が意図していることに対して先手を打って崩していく。自分たちのやろうとしていたことがしっかりとうまく3セットともハマったかなというのが今日の試合」
成田郁久美監督は納得の表情で振り返った。

セットカウント0-2から逆転での辛勝だったGAME1。薄氷を踏む白星から見事に修正し、GAME2は完勝を引き寄せた。
主に変更したのはサーブ&ブロック。ターゲットを変更した上でブロックも改善。とりわけ“暗数”を重視した。指揮官が明かす。
「ブロックも昨日(GAME1)は23本あったけれど、その分だけ公式記録には出ないブロックのミスが25回あった」
「そこのブロックの修正をメインでやったことで、相手のアタックの数字を下げていこうとみんなで共有した」

相手のアウトサイドヒッター(OH)高澤理子を狙ったサーブで攻撃力を削ぎ、ハイセットにさせて難なくシャット。パスが返った場合も粘り強くついて自由を与えない。
2日間8セットでブロック12本(1セット平均1.50)を決めたミドルブロッカー(MB)山村涼香は「自分の中で割り切ったので、昨日よりはミスが減ったと思う」と振り返る。

MB西村美海も「今日はブロックでワンタッチをしっかりかけて、相手のスパイク決定率を1%でも下げようと思った」。副産物としてセッター(S)横田実穂も3本を記録し、自ら目を丸くした。
こうして、難敵に対して常に先手を取ることに成功。主導権を渡さないまま、1時間28分で試合をクローズした。
KINGDOM パートナー
能力の高い面々がのびのびプレー
「総合力」の高さで白星重ねる
そもそも修正力だけでなく、個々の地力もある。189cmの中国人オポジット王美懿(ワン・メイイ)だけでなく、舛田紗淑と田中瑠奈、目黒愛梨のOH陣は経験・実力ともに十分な面々。昨季のベスト6に選ばれたMB山村はケガで出遅れたものの、現在は出色の働きを示す。

例えば田中はサーブ効果率13.7%でリーグ首位の数字を叩き出しており、この日も3本のエースを含めて25.0%の高水準をマークした。
「自分たちの強みであるサーブやブロックを意識しながら、今日は今日で戦っていこうという意識がチーム内でもあった。それが今日も出だしから出ていたのはとても良かった」

舛田も第3セットに4連続ブレイクの起点となるなど存在感を示し、13.9%とした。サーブだけでなくスパイクでも貢献。「自分の持ち味は2段トスでも打ち切っていくところ」と言う通りハイセットから決め切る力強さが際立ったほか、パスが乱れても巧みに巻き取った。
そうした力をのびのびと引き出すのが、成田監督のマネジメントだ。

「とにかく自分の得意なことをコートで出せる準備をしてほしい――というのはずっとオフシーズンから選手たちには言い続けてきた」
「選手がやりたくない形を無理にさせるのではなく、人を代えたりマッチアップを変えたり、良さが出るための戦略を考えるのがスタッフの仕事。それがここまでは結構うまくいっている」

それが総合力の高さにも表れる。例えばGAME1のMBはブロードなど攻撃が持ち味の温以勤(ウェン・イチン)を起用したが、GAME2では小技の器用さが光る西村美海をスタートから送り出す。

その西村は「力強い選手が多いので、自分がコケたとしても大丈夫。イチンや(石原)果林に助けてもらえると思っている。だからもう思い切りやろうという気持ちで出ている」と話す。
総合力が高いからこそ、後顧の憂いなく戦える。そうして個々が躍動し、コートを鮮やかに彩る。はつらつとした声やハドルも相まって、アリーナには桜色の覇気が充満していく。

謙虚な「人間力」がチームに浸透
次戦の皇后杯で格上に挑戦なるか
これで16連勝。向かうところ敵なしだが、それは謙虚なスタンスがなせるわざでもある。
「ふわふわした気持ちも出てくるところを、一人一人が『向こうは絶対に勝ちたいし連勝を止めたいっていう強い気持ちで来るよ』と毎回自分たちに言い聞かせている。自分たちが相手よりまさるものを出していかないと足元をすくわれる」

田中がそう力を込めると、西村も追随する。
「連勝はしているけど、それぞれに『ここままじゃいけない』という危機感があるのが今のチームの強み。誰も傲慢な態度じゃないっていうのがすごくいいと思っている」

怯まず、驕らず、溌溂と――。
そのスタンスを貫き、連覇に向かって自分たちの道をゆく。
そして、格上に力試しをする千載一遇のチャンスも到来した。12月11日から行われる、皇后杯ファイナルラウンドだ。信州Ariesは初戦で関西大と当たり、勝てば昨季のSVリーグ王者・大阪MVと激突する。

いずれは――と夢見る国内最高峰のリーグ。もちろんまず1回戦に「挑む」ことは大前提だが、問答無用の格上相手にどこまで戦えるか。実現させたい一戦だ。
元全日本の成田監督は「初戦突破が大前提」としつつ、百戦錬磨の経験を基に選手たちに期待を寄せる。

「自分の得意なこととか、自分が『私はこういう選手だ』と思っている部分に対しては絶対に対策をされる」
「対策された中で自分にどれぐらい引き出しがあるのかとか、個人もそうだし、チームとしてできることの幅を見つけてくれればいい。なかなか簡単に点が取れない中でどう取っていくか、しっかりと学んでもらえれば」

Vリーグを独走する信州Aries。 皇后杯で問答無用の「挑戦」を経験し、さらなる成長の機会としたい。
チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484



















