雨ニモマケズ風ニモマケズ―― 守備からじっくり煮込む“石﨑流”チーム構築

石﨑信弘監督の新体制が動き始めて半月が経過した。松本山雅FCはお膝元の信州グリーンフィールドかりがねで連日トレーニングを積んでおり、選手から「今までで一番キツい」との声が聞かれるほど高強度のメニュー。フィジカルの土台を構築するとともに、まずは“石﨑流”の守備をみっちり身体に染み付けさせている。指揮官や選手の声とともに、これまでの進捗などをまとめた。
取材・文:大枝 史、大枝 令
KINGDOM パートナー
「エグい」「キツい」の声が続々
それでも充満する前向きな空気感
雨が降っても、寒風切りつけても――。新指揮官を迎えてリスタートした松本山雅は、高強度のトレーニングを連日のように消化している。
「エグいっす。どのチームより走っている感じがする」。そう苦笑いするのは、チーム最年長タイ・34歳のDF高橋祥平。J1〜J3の6クラブで通算400試合以上を経験してきたベテランにとっても、“未知との遭遇”になっている。

練習時間は1時間40〜50分程度。新任のイチャンヨブ・フィジカルコーチが課すパートが長く厳しい。日によって内容は変わるものの、「腕立て伏せ約200回」などシンプルかつ高負荷だ。
石﨑監督が受け持つセッションも、切れ目が少なくレストの時間が短い。セッション間の移行はピリッと進み、弛緩する暇は与えられない。

そうした中でも鼓舞や指示の声が途切れず、チーム全体として活気がみなぎっている。監督やコーチングスタッフが声を張り上げて熱源となるし、選手たちもFW加藤拓己を筆頭として自発的に声を出す。
こうして、いわゆる「良い雰囲気」が生まれている。石﨑監督も手応えを口にする。

「やるのは選手だからね。やらんかったらやらない人はやらない。だから、『積極的にやりたくなるような空気づくり』をコーチングスタッフも含めて意識していて、ポジティブな雰囲気ができている」
実際、選手たちからも前向きな声が多く聞かれる。例えばDF佐相壱明だ。

「去年やりたかったバチバチ感を練習から出せているので、本当に充実している。キツいけれど、それよりも充実が勝っているから、毎日『やり切ったな…』という感じ」
持ち前の運動量を練習からフルに使い切る日々。「これをやっていたら確実に強くなれる。(石﨑監督のスタイルを)身に付ければまだ全然やれると思うから、うれしい」と両手を挙げて歓迎する。

KINGDOM パートナー
まずは守備をじっくり構築中
「段階的にやっていかないと」
チーム構築の手順としては、まずフィジカルと並行してディフェンスを練り上げている。チーム全体のオーガナイズはいったん脇に置いて、まずは個人戦術とグループ戦術の段階。チャレンジ&カバーをとことん追求する。

「ワシの考え方かもわからんけど、後ろが安定しなければ、いくら点を取っても失点していたら勝てない。だいたいどこでも、上位にいるチームは失点が少ないチーム。やっぱり失点する方が嫌いだし」
そう語る石﨑監督。昨季J2昇格に導いたヴァンラーレ八戸では38試合で23失点(1試合平均0.61)という数値をたたき出した。ただ、自身の皮膚感覚だと「まだまだ減らせる」というから驚きだ。

その進め方は慎重だ。例年より開幕までの期間が短い中で前倒ししているというものの、それでもなおベーシックな要素の練習が続く。1対1から始まって2対2、4対4――と1日ずつ人数が増えたりルールが変わったりし、始動して16日目の2026年1月20日に初めてGKを交えてハーフコートの6対6を行った。

他チームはトレーニングマッチも行っているタイミングだが、「よそはよそ、うちはうち」と言わんばかり。少なくとも鹿児島キャンプが始まるまでは、基本的にはディフェンスにフォーカスした練習が続くことになりそうだ。

「段階的にやっていかなければいけないし、いっぺんに飛ばしてやるとできることもできない。今まで積み上げたものはゼロにはならないと思っているので、それをきっちりとやっていきたい」
指揮官はそう力を込める。
獰猛にボールをハントする守備へ
意識を浸透させる“基礎”みっちり
そうして日々「基礎工事」に励んでいるディフェンスは、アグレッシブさが特徴的。前線からボールホルダーにガツンと寄せる。入れ替わることを恐れず、積極果敢に襲撃する。「練習なんだからミスしてもいい」。指揮官からは、そんな言葉が何度も飛ぶ。

まずはその意識を身体に染み込ませるフェーズ。しかし、見る者が考えるほど簡単ではなさそうだ。新加入のストライカー・加藤が明かす。
「どちらかというと(従来の経験ではコースを)限定する守備が非常に多かったので、やっぱりまだ距離感の詰め方は慣れない部分もすごく多い。自分の今までの持っていた感覚から『いや、もう一個行け』というのは、感覚的に難しい」

それでも、身に付けた先のビジョンがおのずと見える。だからこそポジティブに打ち込める。
「僕が攻撃側だとしたら、逆にあそこまで詰められるとすごくイヤ。そういう意味ですごく理にかなっていると思う。それに正直、あのプレッシャーの中で練習していれば、おのずと試合ではプレッシャーも感じなくなると思う」

前線だけでなく、中盤やサイドも含めて積極的に刈り取りに行く。
その後ろではもちろん、カバーリングを徹底。当たり前の「チャレンジ&カバー」を高水準で突き詰める。練習の中でその意識が光る選手の一人が、DF白井達也。昨季は八戸で石﨑監督のもとでプレーしているだけに、そのスタイルはすでに血肉に溶けている。

「1年間やり続けているので、逆に自分が一番できないとダメなところだと思う。やれて当然だし、やらないといけない。そういう部分では自分がリードして引っ張っていかないといけない」
「イシさんが去年やっていたサッカーがわかる選手は自分しかいない。言っていることがちゃんと浸透するように、周りとの仲介役になって間に入れるよう、自分なりに工夫をしながらコミュニケーションを取っているつもり」

日々をとことんタフにポジティブに、しかし進め方はじっくりと。風雪に耐えながら、大幅にリニューアルした松本山雅の基礎工事が進む。














