“大反省”から鮮やか復活 小田逸稀がピッチで示した価値と、示したい真価

その価値を、ピッチで証明してみせた。松本山雅FCは2026年2月21日のJ2・J3百年構想リーグ第3節ジュビロ磐田戦で、2-1と今季初白星を飾った。その右サイドで躍動したのは、開幕2試合で苦しんだDF小田逸稀だ。プロ10年目でJ1アビスパ福岡から完全移籍で加入した27歳。前線と連動してのボール奪取に加えて2点目のお膳立て、精度の高いクロス――。攻守に失地回復の好パフォーマンスを披露した。

文:大枝 史/編集:大枝 令

落ち込んだ2試合を乗り越えて
磐田戦でパフォーマンス際立つ

「正直、落ち込んだ」

J2・J3百年構想リーグが2試合を終えた段階で、小田逸稀は失意の中にいた。

開幕スタメンを勝ち取った2月7日のRB大宮アルディージャ戦では、自身の右サイドから2点目を献上。石﨑信弘監督が嫌う、背後を取られての失点だった。「久しぶりにすごく、大反省の試合だったと思う」。試合後のミックスゾーンで、厳しい表情を浮かべていた。

続く14日の第2節・藤枝MYFC戦。ベンチスタートに回り、DF佐相壱明との交代で64分からピッチに送り出された。本来であれば挽回したいシチューエション。しかし75分、冴えわたるMF中村優斗にPKを与えてしまった。

「それでも試合は来る」――。
反省し、切り替え、前を向いた。

そして迎えた2026年2月21日、第3節ジュビロ磐田戦。右ウイングバックで先発すると、攻守に目覚ましいパフォーマンスを披露した。前半は守備が光る。前線からのプレスと連動し、ビルドアップの出口を封鎖した。

「チームの狙い通りの守備。自分のところではめてアタックするシーンや、マイボールにするシーンも結構あったと思うので、そこは良かった」

後半は攻撃でもクオリティを示す。48分は自陣でボールを奪ってパスを回すと、右サイドの小田からFW加藤拓己にピンポイントのフィード。そのまま駆け上がったMF村越凱光に渡り、2点目の起点となった。

「サポーターもアップの時にチャント(応援歌)を歌ってくれて、その期待に応えたい気持ちだった」

再び訪れたチャンスに気持ちを乗せ、一発回答してみせた。

「点で合わせる意識」の教え
練習で磨いたクロスの配球

攻撃の中で、元日本代表DF駒野友一さんの「教え」も生かされていた。

55分のシーンだ。加藤からのボールを受けた小田が、ピンポイントのアーリークロス。MF安永玲央のヘディングがGKに防がれるなどで惜しくも得点には至らなかったが、精度の高さを見せた。

クロスを武器にしている小田だが、「もともとクロスが得意だったわけではない。クロスが武器と言えるぐらい練習したからそうなった」と振り返る。

きっかけは、2024年のシーズンだった。

「元アビスパの駒野さんと会う機会があって、クロスのことを聞いた。もともとは『線で合わせる』と思っていたけれど、『点で合わせる』ワンランク上の意識でやっていた」

「駒野さんは『こっちが上げているんだから決めろよ』というくらいのこだわりも自信もあったと聞いて、そこまで行くには練習かなと思った」

意識が変化して練習の成果が出始め、そのシーズンにクロスで3アシストを記録。得点にはならずとも惜しいシーンをいくつも作り、他チームからも「クロスが武器」と言われるまでに至った。

「だから本当に『武器は作れる』と、胸を張って人にも言えるぐらいにはなったと思う」

磐田戦で入れた55分のクロスは、相手DF2人に挟まれた安永の頭にピタリ。まさしく点で合わせる鮮やかな軌道だった。

ヘディングも小田の大きな武器
両ウイングバックからの攻撃を

「あとは僕やヒグ(DF樋口大輝)にクロスを上げさせるようなボールの動かし方、そこに至るまでが課題だと思う」

供給だけでなく、逆サイドのクロスに入っていくプレーも持ち味とする小田。ヘディングは最大の武器だ。まだ本領発揮とは言えず、「クロスに入っていくところや点を取るところも得意なので、同じぐらい欲しい」と話す。

左サイドで出場を続ける樋口も「左からも(クロスの供給は)頑張りたい。守備は意識しつつ、次は攻撃のところで自分がアシストでも得点でも仕掛けていきたい」と意気込む。

実際に兆しは見え始めている。磐田戦の78分。MF松村厳とFW田中想来で高い位置でボールを奪い、樋口が左サイドを駆け上がるシーンも。惜しくもパスは通らなかったが、「ああいう形を前半からもっと作っていきたい」。

樋口も小田と同様、ヘディングを得意とする。両ウイングバックにヘディングを強みとする選手がいれば、どちらからのクロスも相手にとっては脅威になるはずだ。

その試金石となるのが2月28日の次節・ヴァンフォーレ甲府戦。インテンシティの高さが際立つ相手で、激しいやり合いも予想される。「僕たちも負けないぐらい、切り替えの早さや強度を出したい」と小田。マッチアップが予想されるDF荒木翔を、守備で封じ込めながら前に出られるか。

1月27日に始まった長丁場のキャンプも、いよいよ最終盤。次節までのアウェイ4連戦を終えると、次は約5カ月ぶりのサンプロ アルウィン。待望の一戦を気持ち良く迎えるためにも、鍛造してきた日々の成果を甲府の地で見せつける。


たくさんの方に
「いいね」されている記事です!
クリックでいいねを送れます

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく

人気記事

RANKING

週間アクセス数

月間アクセス数