手応えと危機感と 開幕戦で見えた 「勝ち点30」へのハードル

手応えと危機感が入り交じった船出となった。F1リーグ復帰2季目を迎えたボアルース長野は2026年5月30日に今季開幕戦に臨み、バルドラール浦安に2-4で敗れた。2シーズン前の王者を相手に食らいつきながらも、最後は力負けに終わり黒星スタート。上位リーグに進むための目安と位置付ける勝ち点30の目標に到達することができるのか――。開幕戦の内容やチームの受け止めから、現在地とロードマップを考察した。

文:田中 紘夢

らしさ詰まった第1号
最後まで走り抜くも力負け

敵地で迎えた浦安との開幕戦。今季のゴール第1号は、ボアルースらしい泥くさいプレーから生まれた。

1点を追う8分。上林快人が高い位置でボールを奪ってショートカウンターを仕掛けると、ラストパスを受けた松永翔が右足で直接押し込んで同点に追いついた。

「ずっと練習してきた、前からの守備のところで(上林)快人が高い位置でボールを奪ってくれた。ピッチに出ている全員の守備がはまって取れたので、みんなのゴールだと思う」

チーム最古参となる8年目の34歳は、チームの力で奪ったゴールの価値を強調した。

山蔦一弘監督が就任して4年目。前線からの守備という身上は不変だが、今季は試合を通して高い強度を保てる形を模索してきた。それぞれが特定の選手をマークする「マンツーマン」に受け渡しの要素を加え、その形にチャレンジしながら成果も出始めている。

プレシーズンには上水内郡信濃町の上り坂を走る練習を敢行。戦術を具現化するための走力を向上させる狙いで、この日は第2ピリオドになってもプレー強度は落ちなかった。1-3と再び追う展開となった30分にはロングカウンターから宇野伊織が決めて1点差に。山蔦監督は「最後までよく走ってくれた」と選手たちを称えた。

しかし、追い上げもそこまで。終了間際には決定的な4点目を決められ、終わってみれば2-4での敗戦だった。

「シュートを決めるところだったり、ゴールを守るところだったり。最後のフェーズで相手が上回って、自分たちが下回った」と指揮官は嘆く。2シーズン前の王者にチームとして食らいついた一方、個の力の差を埋めきれなかった。

古巣相手に躍動した宇野伊織
新旧戦力が融合して高まる質

山蔦監督は今季を迎えるにあたって「クオリティ」の向上に重きを置いてきた。

その一翼を担うのは2点目を決めた宇野だ。世代別日本代表歴を持つ22歳は今季、関東1部の栃木シティから加入して3シーズンぶりにFリーグ復帰。浦安はかつて所属した古巣でもあるが、「緊張はなくて、ワクワク感しかなかった」と振り返る。

言葉通りの落ち着きぶりが光った。アラ(サッカーのサイドハーフに相当)の位置から持ち前のテクニックで相手を翻弄。ボールを持てば何かを起こしてくれる期待を感じさせた。

得点シーンは、ガリンシャのラストパスからGKとの1対1を迎えると、右足で狙い澄ましての一撃。「ボールが来たらダイレクトで打とうイメージしていた」と明かし、冷静沈着に決めてみせた。

「チームの攻撃を活性化させることが役割だと思っていた。ゴールで勢い付けられたと思う」と宇野。チームへの合流から2週間ほどで開幕戦を迎えたが、味方とのコミュニケーションにも支障はなかった。

同じセットを組むガリンシャと外林綾吾は浦安時代にも同僚だった。高溝黎磨も前所属の栃木シティと提携関係にあるしながわシティにいたため、ともに練習していた間柄。「知っている選手が多い」ことも手助けとなり、開幕戦からクオリティを発揮した。

手応えを結果につなげてこそ
勝ち点30へ不退転の歩みを

新戦力の躍動もあり、チームの底上げを感じさせる開幕戦となった。

一方、在籍6年目を迎えた米村尚也は「自分が来てからずっと抱えている課題」を指摘する。

「みんなのスイッチが入っている時はチャンスを作れているし、守備もしっかり行けている。でも、ファウルでプレーが切れたり、相手のゴールクリアランス(サッカーのゴールキックに相当)になったりした時にスイッチが切れる瞬間がある」

失点シーンはまさにそうだった。1失点目は相手のゴールクリアランスから受け渡しがスムーズにいかず、2失点目はFKから一気に陣地をひっくり返された形。上位チームは一瞬の隙を見逃してくれない。

「そこをいち早く察知するのも、自分だったり(松永)翔さんだったり、ベテランとしての役目だと思う」と32歳の米村。3失点目のシーンの1対1で振り切られた松永も、「我慢しないといけないところはあった」と悔いを残す。

今季のキャプテンは試合ごとの指名制となっており、開幕戦では米村が腕章を託された。試合前日に山蔦監督から告げられ、「練習からの姿勢や取り組みを評価してもらえた」と明かす。

重役を任されたがゆえに、敗戦という結果も重く受け止めている様子。「まだ始まったばかりだけれど、『次があるよ』と言い続けていたら昨シーズンと同じ結果になってしまう。もっと危機感を持って取り組んでいかないといけない」と引き締める。

最終節で残留を決めた昨季は開幕4連敗スタート。その後も勝ち点を取りこぼし、米村の言葉を借りれば「手応えはあるのに勝てない」試合は多々見られた。昨季の例に当てはめれば、今回の浦安戦も典型的な1試合に数えられるだろう。

今季の目標は勝ち点30。昨季、22試合のレギュラーシーズンを終えてファイナルシーズンの上位リーグに進んだ6位が勝ち点31で、下位リーグに回った7位は同29だった。上位リーグ進出を見据えるボアルースは、勝ち点を積み増していくためにも早く初勝利が欲しい。

開幕戦で得た手応えと危機感を、成長と結果につなげることができるか。ここから“不退転”のシーズンを駆け抜けていく。


クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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