桜色の王者は沼津で満開に 信州Ariesが“完全優勝”の2連覇で有終の美を飾る

唯一無二の王者が誕生した。2026年3月29日、静岡県沼津市の香陵アリーナで行われた2025-26年シーズンVリーグ女子プレーオフ(PO)ファイナル。28日のセミファイナルでフォレストリーヴズ熊本にストレート勝ちしたルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズは、JAぎふリオレーナとの最終決戦も3-0(25-19、25-22、25-19)で完勝。目標のVリーグ連覇を達成した。26-27年シーズンからリーグは再編されるため、現行のVリーグ女子で頂点に立った唯一のチームとなった。
文:大枝 史
KINGDOM パートナー
まざまざと見せつけた王者の風格
連日のストレート勝ちで頂点へ
それは千本桜の開花が約束されていたかのような、圧倒的な勝利だった。
プレーオフファイナル、24-19でチャンピオンシップポイントを握った第3セット。オポジット(OP)王美懿(ワン・メイイ)のアタックが決まると、その時を待ちわびていた選手たちが満開の笑顔をコートに咲かせた。

「選手全員が集中力を持ってJAぎふさん以上に粘り強くディフェンスをして、自分たちの強みであるオフェンスに繋げられたのは良かった。これまで29試合積み上げてきた中で、本当に一番のゲームができた」と成田郁久美監督。勝ち続けてもなお満足しなかったチームの成長を称えた。

初代王者に輝いた昨季はレギュラーシーズン(RS)を3位通過。POで“下剋上”を果たしての優勝だった。チームが今季の目標に掲げたのはRSを制した上での完全優勝。開幕から23連勝したRSを27勝1敗で1位突破すると、POではセミファイナル、ファイナルともにストレート勝ちで優勝。一分の隙も見せず最後まで勝ち切った。

昨季に続き、歓喜の瞬間をコートで迎えたアウトサイドヒッター(OH)舛田紗淑は「『ここで負けたら終わり』という緊張感がプレーに良い作用を起こしていた。そのプレッシャーに負けずに自分たちが戦い抜けたのは、このチームの強かったところだと思うし、チームメイト全員が誇っていいところだと思う」と充実感を口にする。

RSを圧倒的な成績で終えたプレッシャーをものともせず、対戦相手の対策すらも跳ね返す。
まさしくそれは、王者の風格にほかならなかった。
KINGDOM パートナー
圧倒的な準備が生んだ栄冠
“全振り”したセミファイナル
28日に行われたセミファイナルのフォレストリーヴズ熊本戦もセットカウント3-0で勝利したが、熊本はRSで唯一の“1敗”を喫した相手だった。RSを4位通過した熊本とのセミファイナルに向けて、チームはPOまでの3週間を使ってみっちりと対策をした。

「セミファイナルにほとんど全振りして対策練習をやってきていた。『このローテに対してはどういうサーブをどこに打つか』という確認や、その後の展開。『こうなったらここに上がってくる』とか、そこまでしっかりとイメージを持った上で試合運びができていた」と指揮官。

例えば、相手のローテーションに合わせてミドルブロッカー(MB)山村涼香のサーブ順ではショートサーブを徹底。一発勝負のPOだからこそ、RSとは違う顔を用意して勝つための準備を積み重ねた。

これには、熊本の中島裕二監督も「ショートサーブから崩される展開の練習もできていなかったし、相手がそうしてくることも想定できなかった」と脱帽するしかなかった。
一方で、対戦相手が直前まで決まらないファイナルに向けての対策は、ほぼしてこなかった。だからこそ、シーズンを通して何を積み重ねてきたのかが問われる一戦だった。

相手はRS2位のAぎふ。25年12月6-7日に対戦した際は、プッシュボールやフェイントなど空いたスペースにボールを落としてくる戦略に苦戦した。フルセットの末に勝ち切ったが、それ以降は信州Ariesのブロックを避ける戦法を取ってくるチームが増えた。
対戦相手が見い出した、小さな弱点。しかし信州Ariesの選手たちはそれを、成長のきっかけに換えた。チームの課題として浮かんだフロントゾーンへのボールに対して、それぞれの選手が役割を考え、それを全うした。

「リーグ戦の後半になるにつれて(フロントゾーンへのボールが)上がるようになってきた。触れるようになってきたところから、次はもう一つ進んで攻撃に繋げていく意識まで。(POまでの)空いた期間にもイメージができていた」
積極的にフロントゾーンへのボールを拾ったのが、POでMVPに輝いたセッター(S)横田実穂だ。横田が飛び込んで1本目を上げても、2本目に精度の高いハイセットが上がり、アタッカーが決め切る。その形を確立させていた。

2本目を上げることが多かった舛田も「人それぞれ決めやすいトスをチーム内で共有して、苦しい場面でもそこに持っていけばスパイカーがしっかり決め切る自信はあったので特に意識してやっていた」と明かす。
武器としているオフェンス力をより生かすために、守備から一つ一つのプレーを丁寧に取り組んできた成果が実った勝利だ。

有終の美を飾った選手たち
最後の戦いで大団円を迎える
キャプテンの高野夏輝をはじめ、3月19日には5選手の引退と退団が発表された。この顔ぶれで戦うのは最後。だからこそ、目に光るものを堪えきれない選手もいた。

PO前には「バレーを楽しみたい」と話していた高野はこの日も笑顔でコート内を駆け回った。
「緊張もしていて思うようにいかない場面も多かったけれど、自分がミスをしてもチームメイトが絶対に助けてくれるという自信はあった。決まったらやっぱり楽しかったし、良いプレーもたくさんあったのですごく楽しい試合だった」

キャプテンとしてチームを引っ張り続けてきた高野。試合後の会見では「率直に安心したな、という気持ち」が第一声だったことからも分かるように、目には見えないプレッシャーとの戦いもあっただろう。
それでも信州Ariesでプレーをした3年間を振り返り、「『毎シーズン、全力で努力してきた』と胸を張って言える3年間だった。自分のバレー人生がそういう終わり方ですごく良かったと思うし、地元の長野県でバレー人生を終えられるのはすごくうれしいことだと思う」と声を詰まらせながら話す。

その中で得た新Vリーグの初代王者、そして最後の王者。唯一の輝きが消えることはない。
「うちの選手は『やる時はしっかりやる』と信頼している。大事な試合に向き合う姿勢や、そこに懸ける思いは、全員が強いものを持っていた」と指揮官。

強いから勝ったのではない。シーズンを通して飽くなき向上心を持って準備を重ねたチーム。まさに、勝つべくして勝ったのだ。
一つ一つの努力と挑戦が成果となって実を結んだシーズン。上田より一足早く、沼津の地で満開の桜が咲き誇った。

チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484















