「左サイドが全く機能していない」 厳しい指摘に奮起した24歳・樋口大輝の躍動

厳しい言葉に奮い立ち、殻を破ってみせた。J3松本山雅FCのDF樋口大輝だ。2026年3月21日のJ2・J3百年構想リーグ第7節FC岐阜戦。試合後の記者会見で、石﨑信弘監督は「左サイドが全く機能していない」と厳しい言葉を発した。それは、開幕から左ウイングバックで先発出場を続ける樋口を名指しした言葉に等しい。「自分の耳にも入っていた」。しかしJ2RB大宮アルディージャをサンプロ アルウィンに迎えた4月12日の第10節。悔しさをエネルギーに換え、左サイドで躍動した。
編集:大枝 令
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「今日は結果を出す」と決意
強気なプレーでアシストを記録
同点に追いつかれた直後の前半42分。敵陣で得たFKを素早くリスタートすると、MF澤崎凌大を経たボールが左サイドの樋口に渡った。対峙した大宮のDF関口凱心はスピードが武器。そのスピードを前半の早い時間帯に対峙した場面で体感していた樋口は、単純な仕掛けではマークを振り切れない――と考えていた。
石﨑監督による左サイドへの指摘は、岐阜戦後の一度で終わらなかった。メディアの取材に対してコメントすることもあれば、練習で樋口に直接「もっと仕掛けろ」と言うこともあった。

「特にこの1週間…というか2、3日前から強く言われていた」と樋口。「だから、今日は結果を出したい思いで試合に入った」と明かす。
寄せる関口に対して、一度ボールを右足に置いて相手にさらした。それは「相手に向かっていく感じのフェイント」。右足に食いついてきた関口を絶妙のタイミングで外すと、ボールを左足に持ち替えて縦に突破。間髪入れずに左足で送ったクロスをMF安永玲央が頭でねじ込み、相手に傾きかけた流れを再び引き寄せる貴重な勝ち越し点を奪った。

「あの空間にボールを蹴るというイメージ通り。良い形で相手(関口)をはがして、蹴った瞬間に良いボールがいったと思った。玲央くんに感謝したい」と樋口。試合後の取材エリアで白い歯を見せながら饒舌に語った。
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好調を支える右サイド小田逸稀
樋口の奮起で雷鳥の両翼を武器に
石﨑監督が左サイドをやり玉に挙げたのは、右サイドで躍動する小田逸稀の存在も理由の一つだろう。
鹿島と福岡でJ1経験も豊富な27歳の小田。正確なクロスでチャンスを演出するだけでなく、高い打点とゴールへの執念も際立つ。第7節からの2試合で計3ゴールをマークし、3月のEPSON月間MVPにも選出された。

ボールを落ち着かせ、攻撃の起点になっているのも大半が右サイド。3月以降の好成績は“右手一本”でつかみ取ってきたと言っても過言でない。
「GKからのキックも逸稀くんを狙うことが多くて、そこで競り勝ったりこぼれたりしたボールから右が攻撃の起点になる。自分のサイドで良い形ができていないことは分かっていた」

ピッチで起きている現象を真正面から受け止めた樋口。「でも…」と言って顔を上げ、言葉を続ける。
「自分に仕掛けるチャンスがなかったわけじゃない。(シーズン)最初の頃は(チャンスメイクが)できていたけれど、最近は停滞している。もっとがむしゃらに。試したり、相手を見て変えたり。良い選択ができるようにやっていきたい」
決意を新たにしたからといって、技術やスピードが短期間で爆発的に伸びることはない。それでも、意識を変え、考えを巡らせ、目の前の課題と向き合えば変えられる何かがある。

それを結果が示したのが大宮戦のアシストだった。
松本山雅に正式加入した1年目の24年は6得点をマークした。身長173cmの体格は小田と同じ。それでいて自分より高い相手に競り負けない空中戦の強さも、小田と同じように自分自身の武器だという自覚がある。
だからこそ、今季10試合目にして初めてマークした「アシスト1」という数字で満足していいはずがない。

樋口のアシストついて、安永は「信じて中に入っていった。アシストがついたことが自信になって、どんどん良いプレーが増えてくると思う」とニヤリ。石﨑監督は「本当に素晴らしいゴール。これで自信を持って今後もチャレンジできるのではないか」と、してやったりの表情を浮かべる。

そんな2人のコメントを知ってか知らずか、顔に自信がみなぎる樋口は力を込める。
「左もできることは今日の結果で示すことができた。もっともっと左から自分が絡んでゴール、アシストをマークしていきたい」
両翼がはばたけば、雷鳥はさらに高く飛べるはずだ。















